皆様、あけましておめでとうございます!
12月は月間PVが約1万を突破しまして、たくさんの方々にご覧いただけていることに非常に感激しております。感謝感激で、吐血しそうなほどですよ(笑)
今年もおススメの作品を、私の妄想8割で楽しく紹介していきますので、何卒よろしくお願い申し上げます!
さて、新年のあいさつも早々に、映画の話をしましょうか~~
先日、『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観てきました。いやぁ、予想通りの素晴らしい完成度の作品でしたよ。あまりにも、取り上げたいところが多すぎて、このブログでどうまとめればよいのか、4日間ほど悩んでしまいました。
本当は、12月30日に観に行ってきたので、新年のカウントダウンと同時くらいに、華々しくアップする予定だったのですが、いざ映画を観終わってみると、「こいつは大変だ……」と放心状態になってしまったわけです。
それほど、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の作りこみは凄まじかったのです。それは世界観設定においてはもちろん、シナリオにおいても言える話で、細部にわたって作り手の魂を感じるものでした。
ちょうど、はてなブログでも「シュガー・ラッシュ:オンラインの感想を書こう!」的な企画が始まっていたので、ここに私の感想を書き記そうと思います。
「ディズニープリンセスが大集合!」
いやいや、それだけじゃない!
「シュガー・ラッシュ:オンライン」の様々な魅力をお伝えできればと思います。
あ、先に言っておきますが、今回は最初からネタバレ全開ですので、まだ観ていない方はすぐさま劇場へ向かいましょう!肌寒い季節ですが、この映画を観れば、きっと皆さんの心は温まるはずです!
映画「シュガー・ラッシュ:オンライン」の感想 #シュガラお題
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あの……余談なんですけど、というか、このブログは9割9分が余談なんですけどね。
この『シュガー・ラッシュ:オンライン』のポスター素晴らしいですよね?
今作の主役2人の個性が存分に出ているポスターだと、私は思います。
ヴァネロペは好奇心旺盛で新しい世界へのあこがれを持っている。いつでも前向きで行動的なヴァネロペ。その前のめりな性格が、ちょっと出っ歯な前歯に表現されていて、ドンピシャなキャラクターデザインだと思います。その性格を反映するように、ポスターの中でヴァネロペは手を広げて、楽しそうに笑っていますよね。
けれど、ラルフのほうはその真逆。ラルフは元のゲームセンターに戻りたい気持ちが強いし、新しいことに対して少し後ろ向きな性格なので、見たことないもので溢れているネットの世界に困惑を隠せないといった表情。
ラルフとヴァネロペの相反する性格が、見事に表現されているポスターと言えるでしょう。
さて、前口上はこんなところにして、本題に移りましょう!
↓幻冬舎より私の小説『自殺が存在しない国』が発売されました!ぜひご覧ください!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』のあらすじを紹介!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力① 緻密な世界観設定!ネット世界の可視化が見事すぎた……
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力② 感動的なシーンで際立つキャラの質感!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力③ 自然な説明台詞で観客を飽きさせない!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力④ ディズニープリンセスにパーカーを着させてしまうヴァネロペ!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力⑤ 心の弱さがウイルスの餌食になる。ウイルスの設定がドラマを加速させた!
- 『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力⑥ ペンダントの使い方があまりにも上手すぎる!泣くよそりゃ……
『シュガー・ラッシュ:オンライン』のあらすじを紹介!
まずは、おさらいとして、『シュガー・ラッシュ:オンライン』のあらすじを簡単に紹介します。
「あらすじはいいよ~」という方は、次の見出しまで飛んでしまってOKです!
では、さっそくクライマックスまでの大まかなあらすじを見ていきましょう。
とあるゲームセンターのゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の悪役ラルフ、レースゲーム「シュガー・ラッシュ」の不具合キャラのヴァネロペ、親友2人はいつも通り仕事をしては、朝まで遊んでの毎日を繰り返していた。
そんなとき、「いつも同じコースで退屈」と愚痴を漏らすヴァネロペを喜ばせようと、ラルフはシュガー・ラッシュのコースを1つ増やした。だが、ラルフのこの気遣いが災いして、ゲーム機のハンドルが壊れてしまう惨事に――。
ハンドルを買い替えるだけの費用がないため、ゲームセンターの店長リトワクさんはシュガー・ラッシュの処分を決めてしまう。自分のゲームを失ってしまったヴァネロペは、「レーサーじゃない私って何なの?」と、不安定な精神状態に。
ラルフはなんとかヴァネロペを励ますために、ネット世界に出てハンドルをゲットしようと考える。こうしてヴァネロペとラルフは、ハンドルを探しにネットの世界へダイブすることになった。
広大なネット世界。2人はオークションサイト「eBay」でシュガー・ラッシュのハンドルを発見し落札。しかし、2人はハンドルを買うためのお金を持っていなかった。ラルフとヴァネロペは、お金を集めるために、JPスパムリーとゴードからお金を稼ぐ方法を紹介してもらう。
JPスパムリーとゴードが紹介してくれたのは、危険なレースゲーム「スローター・レース」の最強レーサー、シャンクの車を盗むミッションだった。途中までは、ヴァネロペの並外れた運転技術で、シャンクを巻くことに成功するが、最終的にはシャンクに追いつかれて失敗。
だが、困っている2人を見てシャンクは動画サイトを運営するアルゴリズムのイエスを紹介してくれる。イエスの管理するバズチューブで、ラルフはバズチューバーデビューを果たす。ラルフは動画の人気を得ることで、大金が稼げることを知り、必死になって動画をアップし続ける。
ラルフが動画をアップしている間、ヴァネロペはラルフの動画を宣伝するために、「オーマイディズニー・ドットコム」というウェブサイトに訪れる。ひょんなことから、ヴァネロペはディズニープリンセスのアバターが集まっている控室に入ってしまう。
一時はプリンセスたちから警戒されるものの、自分もシュガー・ラッシュのプリンセスであることを説明し、なんとか納得してもらうことに成功する。ヴァネロペはプリンセスたちと話すなかで、自分の心の声に正直になろうと考え始める。そして、「スローター・レースで活躍したい」という気持ちが強くなり、ヴァネロペはシャンクのもとへ。
そんなヴァネロペの心境の変化など露知らず、ラルフは目標金額までお金を稼ぐことに成功し、「これで元のゲームセンターに帰れる」と喜ぶ。しかし、ヴァネロペがすでにスローター・レースの虜になっていることを、ラルフは知ることになる。なんとか、ヴァネロペの気持ちを元に戻したいと考えたラルフは、ダブル・ダンからウイルスをもらい、スローター・レースのゲーム内にそのウイルスを放ってしまう。
ラルフに自分の決断を受け入れられるか不安なヴァネロペの弱さを発見したウイルスは、その弱点をスローター・レース全体に拡散させ、システムをダウンさせる。
ウイルス拡散の原因がラルフだったと知ったヴァネロペは激怒。ラルフとの決別を宣言して、どこかへ行ってしまう。失意のどん底に落ちたラルフの弱点を検知したウイルスは、その弱さをコピーしネット中に拡散。ウイルスが拡散したことで、ネット中が大パニックに……。
はい、というのが、クライマックスまでの私が覚えている限りのあらすじです。
全体的には、いわゆるヒーローズジャーニーのプロットになっています。日常から非日常へ飛び出し、目的を達成するための助言者が現れ、その助言にしたがってクエストを1つずつクリアしていき、最終目標を達成して元の世界に戻る。
基本的にはこういった流れで話が進んでいきます。ただし、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の面白いところは、必ずしも元の世界に戻るわけではない点です。元のゲームセンターに帰るのはラルフだけで、ヴァネロペはスローター・レースに残ります。
このように、お互いの最終目的地が異なる点が、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の面白いところだと、私は思います。互いの目指す道が違っていても、たとえ一緒にいられなくても、認め合うことで親友でいられる。そのメッセージを、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の構成からも感じとることができます。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力① 緻密な世界観設定!ネット世界の可視化が見事すぎた……
普段私たちが何気なく利用しているネット世界を、壮大に、そしてコミカルに視覚化したのが『シュガー・ラッシュ:オンライン』の凄さです。この点は皆さんも、同意していただけるポイントではないでしょうか?ディズニーの有能クリエイターたちが、作り上げたあまりにも完成度の高いネット世界の姿に息をのんだ人も少なくないはず!
まず、ラルフとヴァネロペの2人がネット世界へ飛び立つシーンからすごかったですよねぇ。最初に、店長のリトワクさんのアバターがカプセルみたいなのに包まれて、飛んでいく。それに続いて、ヴァネロペ、ラルフの順にカプセルに包まれ、ネット世界へダイブ!
狭いトンネルのような場所から一気に広大なネット世界が目の前に広がる。突如現れる広大な世界に、圧倒されますよね。狭い場所から広い空間へ出たことで、ネット世界がより広大なものに感じられました。見事な演出だと思います。
実は、この狭い場所から広い場所へ出ていく演出は、『ズートピア』でも使われていました。主人公が、列車に乗って故郷を離れるシーン。トンネルを抜けると、主人公の目の前には、広大な世界が――。こういう場面ってありましたよね。この演出は、『シュガー・ラッシュ:オンライン』でしっかり引き継がれていました。
また、上記の演出以外にも、例えば、『ズートピア』では、主人公とは関係のないキャラクターが背景で大量に動き回っていたと思います。これは『シュガー・ラッシュ:オンライン』でも同じで、主人公たちとは関係のない、大量のアカウントが背景で動き回っていましたよね。背景で無数のキャラクターが動いていることによるリアリティは、両作に共通している点だと思います。
このように『シュガー・ラッシュ:オンライン』と『ズートピア』は、意外と似たような演出をしているんですよね。それもそのはず、今作の監督リッチ・ムーアとフィル・ジョンストンの2人は『ズートピア』でも一緒に仕事をしていたのですから。
『ズートピア』のときは、リッチ・ムーアが監督を務めて、フィル・ジョンストンは原案と脚本を担当していました。『ズートピア』で、アカデミー賞を受賞するなど、2人とも凄腕のクリエイターです。この2人によって、『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、『ズートピア』で得た知見が、フル活用されているような気がします。
さて、有能クリエイターが作り上げた『シュガー・ラッシュ:オンライン』のネット世界ですが、ほかにも様々な注目ポイントがあります。
まず、実際に存在するウェブサイトを見事に視覚化していましたよね。例えば、キューブが積み重なったようなGoogleのデザインにはインデックスのイメージを感じますし、青い鳥が囁くと小さなつぶやきが表示されるTwitterのイメージにもリアリティとコミカルさの両方を感じることができました。
検索エンジンの擬人化も笑いました。言葉を入力欄に入れときの、候補をどんどん読み上げていく感じとか、まさかそこをギャグとして取り上げるとは……(笑)検索をかけたときに、棚がピカピカ光り、ノーズモアがブルブル震えるところも、楽しく見られました!
ラルフとヴァネロペがJPスパムリーに初めて出会うシーンもよかった。押し売りのように、みんなに広告を見せてまわる辺りに、現実のポップアップ広告の鬱陶しさがうまく表現されているなぁ、と妙に感動しました。世界観のなかに、現実に対するちょっとした皮肉を入れている点がたまらなくイイですねぇ。
こうした世界観における作りこみの徹底ぶりが、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力の1つとなっています!
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力② 感動的なシーンで際立つキャラの質感!
別に、感動的なシーンだけに限った話ではないのですが、やはりピクサー作品ももちろんそうですが、最近はディズニー作品もキャラクターの質感がリアルですよね。柔らかくて、ついつい触りたくなるような質感は、とくに感動的なシーンで際立っていたような印象があります。
いやぁ、『シュガー・ラッシュ:オンライン』が面白かったのでパンフレット買っちゃったんですけどね、この表紙最高じゃないですか?
フワッとしていて、ものすごく可愛らしいですよね。ヴァネロペの肌の柔らかさはもちろん、よく見ると、パーカーの小さな毛玉まで細かく描きこまれており、肌触りがすごくよさそうです。
一番感動的なシーンで、これだけ柔らかい質感が表現されると、画面全体の温かさが増して、余計に感動してしまいます。感動的なシーンで際立つキャラクターの質感に、ひどく感心しました!
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力③ 自然な説明台詞で観客を飽きさせない!
どんな映画にも説明台詞は存在します。世界観の説明や、人間関係の説明や、ミッションに関する説明など、話を理解するうえで知っておくべき情報ってありますよね。ただし、たいていのお客さんにとって、こういった説明台詞のシーンは退屈です。場合によっては、寝てしまうこともしばしばあります。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観終わって驚いたのが、「あれ? 説明台詞ってあった?」と首を傾げたくなるほど、何かを説明された印象がなかったことです。しかし、間違いなく説明台詞は存在します。説明されているのに、説明台詞と感じさせない工夫がされているんですよ。ディズニーやピクサーは、さりげなく説明台詞を入れるのが達人級にうまいのです。
例えば、『シュガー・ラッシュ:オンライン』で、ラルフとヴァネロペがお金を稼ぐために、JPスパムリーとゴードからゲームを紹介してもらうシーンがあったと思います。あのシーンでは、JPスパムリーがお金稼ぎのシステムに関する説明や、ゲームの内容に関する説明をしています。しかし、ちっとも退屈じゃない。
退屈どころか、JPスパムリーが「ゴード!」と、何回も呼ぶところは笑えましたよね。ラルフとヴァネロペの後ろにいつの間にか、ゴードがいるみたいな……。説明台詞のシーンなのにお笑いになっていました。
つまり、本来は退屈になりがちな説明台詞でも、このようにJPスパムリーやゴードのキャラクター性を出したり、ギャグを取り入れたりすることにより、観客が飽きないようにしているわけです。
しかも、ピクサー映画や最近のディズニー映画の特長として、常に動いている点も説明台詞を飽きさせないために重要です。ラルフもヴァネロペもJPスパムリーもゴードも常に動いています。
何かしらのアクションとリアクションが、画面のなかで常に繰り広げられているので、飽きずに説明を聞くことができます。アクションやリアクション、ギャグやキャラクター性を説明台詞に混ぜることで、観客は楽しみながら物語において大切な情報を入手することができるのです。匠の技としか言いようがありません。
実はこの手法、『ズートピア』でも使われています。映画の冒頭、『ズートピア』の世界観を子供たちの舞台劇のなかで説明しているシーンがあったと思います。動きのなかで世界観の説明をされるので、まったく飽きずに聞くことができましたよね。しかも、主人公のキャラクター性もあの舞台劇にはしっかり表現されていました。こういう点も、今作の『シュガー・ラッシュ:オンライン』で十分に生かされていたと思います!
普通のアニメなら、予算や時間の都合もあって、こういう説明台詞に関しては、風景を映しながらナレーションで済ませたりするわけですが、ディズニー映画やピクサー映画は徹底的に動くことにこだわっていますよね。これぞ、アニメ!って感じで、キャラクターたちの目まぐるしい動きを楽しめるのも、『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力と言えるでしょう。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力④ ディズニープリンセスにパーカーを着させてしまうヴァネロペ!
さて、CMでも話題になった14人のプリンセスが大集結するシーン。皆さんはどのように観ましたか?私は結構、メタ的なツッコミが見えたり、プリンセスの苦労みたいなものを感じたりして、いろんな意味で楽しめましたよ。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の監督であるリッチ・ムーアは、もともと『シンプソンズ』の監督も務めていました。それもあってか、『シュガー・ラッシュ:オンライン』には、ディズニー映画に対するシニカルでメタ的なギャグが入っていましたよね。その点は、プリンセス大集結のシーンに顕著に出ていたと思います。
ヴァネロペが「オーマイディズニー・ドットコム」のウェブサイトでプリンセスの控室に迷い込んだあと、「私もプリンセスよ」と主張するヴァネロペに対して、プリンセスたちが質問を重ねていく。そこで、ラプンツェルの放った言葉とヴァネロペの返答が印象的でした。
「じゃあ一番大事な質問。男の人がいなければなーんにもできない女の子だと、みんなに思われてる?」
これに対して、ヴァネロペは、「そう! それってムカつくよね?」と返す。
それを聞いたプリンセスたちは「本物のプリンセス!」と大喜びする。
あからさまではありますが、これはかつてのディズニー映画に対するメタ的なツッコミですよね。「お姫様を素敵な王子様が助ける」というプロットがディズニー映画の基本だったわけですが、観客としては「もうそういうお話はいいよ~」となっている部分がある。まぁ、そういうお話は時代に合わなくなってきているとも言えますけどね。
それをディズニー自身も自覚していて、ディズニー自身が映画のなかで、「もう、そういうのって古いよね~」と自虐ネタを入れているわけです。こういう自虐ネタは紙一重ですが、私は楽しめましたよ。
それと、プリンセスたちがパーカーやシャツを着るシーンも斬新でした。ヴァネロペの服装に感化されて、プリンセスたちがカジュアルな服装に衣替えするわけですが、あれってファンに対するサービスとして見ることもできますけど、他にもいろいろ深読みできそうなシーンですよね。
ヴァネロペは、不具合キャラとしてシュガー・ラッシュのなかでも浮いていたわけですが、それはプリンセスのなかでも同じです。歴代のプリンセスたちは、みんな綺麗なドレスを着ています。しかし、ヴァネロペは普通のパーカーを着ています。この時点でかなり浮いていますよね。
ですが、面白かったのは、プリンセスたちが、そのパーカーを気に入ったところなんですよね。みんなでパーカーやシャツを着て、だらだらしているところを観たりすると、「ああ、プリンセスたちも、たまにはドレスを脱いでくつろぎたいときもあるんだなぁ」とか思うんですよ。ヴァネロペのことを「くつろぎの女王様」と言って褒めてるシーンは特に象徴的でした。
「ドレスを脱ぐ」ということは、「プリンセスの証を脱ぐ」ことでもあります。転じて、プリンセスたちがパーカーやシャツを着るということは、ドレスを脱ぐことであり、プリンセスの証を脱ぐことでもあると言えます。
そして、プリンセスたちは喜んで、ドレスを脱いでパーカーやシャツに着替えたわけですから、プリンセスたちはプリンセス像からの解放をどこかで望んでいたのかなとか思うわけです。
事実、カジュアルな姿のときは、みんなすごくリラックスしていましたよね。しかも、途中でC-3POが「イベントが始まるのでプリンセスの皆様準備を~」みたいなことを言いにきたとき、プリンセスのみんなは、ちょっとけだるそうに返事して「またドレスに着替えないと~」みたいなことを言うわけです。
ああ、プリンセスでい続けるのも大変なんだなぁと、しんみりしちゃいましたよ(笑)
ヴァネロペは、プリンセスのみんなを一時的にプリンセス像から解放したわけです。バグキャラらしい、いい意味でのバグをプリンセスたちに発生させていたのです。不具合って悪い意味で使われがちですが、ヴァネロペの場合はむしろ魅力となって機能しています。歴代プリンセスを巻き込んでしまうような、強烈な魅力がヴァネロペにはあるのです。
さらに、このシーンはちゃんと物語上の分岐点にもなっています。プリンセスに出会い、ヴァネロペは自分の心の声に気づく。そして、スローター・レースでのミュージカルシーンにつながっていくわけです。
単に宣伝目的でプリンセスを登場させたわけではなく、メタ的で自虐的なツッコミを入れながら、きちんと物語における機能も果たしている、盛沢山でありながら、整理されているすごいシーンとなっていました!
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力⑤ 心の弱さがウイルスの餌食になる。ウイルスの設定がドラマを加速させた!
『シュガー・ラッシュ:オンライン』で驚いたのが、ウイルスの使い方です。システムの弱点を見つけて拡散するのがウイルスですが、この作品では、ラルフやヴァネロペの心の弱さをウイルスが利用して大パニックを引き起こしていました。
スローター・レースに残ることを決めたヴァネロペは、ラルフが納得してくれるかどうか不安を抱えているシーン。ラルフがダブル・ダンからもらったウイルスが、スローター・レース内に放たれる。ウイルスは、ヴァネロペの弱点を見つけてゲーム内にその弱点を拡散していく。
もともとヴァネロペはデータに不具合があったりしましたが、それに加えて精神的に不安定だったため、その弱さをウイルスにつかれてしまったのです。心の弱さが餌食になるという点では、ラルフも共通しています。
一連のウイルス騒動がラルフの仕業だったと知ったヴァネロペは激怒して、どこかへ行ってしまう。ラルフは精神が極限まで不安定になり、その弱点をウイルスに発見され、ネット中に拡散されてしまう。そして大パニックに――。
キャラクターの心の弱さが、危機を作り出しているのです。そのため、「危機を乗り越えること=自分の弱さを乗り越えること」になるわけです。弱点を拡散するというウイルスの設定があったおかげで、単に危機を乗り越えるだけではなく、自分自身の弱さを見つめて克服するという物語上の重要なポイントを作り出すことに成功しています。
内的葛藤(心の弱さ)が外的支障(危機)を生み、外的支障をクリアすることで内的葛藤も乗り越えられるわけです。
ラルフは自分の自滅的で依存的な姿を相対化して見ることによって、自分は友達として失格だったことを理解し、友を認めることの大切さを知るわけです。弱い自分に向き合うことで、友との絆が強くなったのです。
こうした相手に対する依存心は、友人関係だけでなく、夫婦関係や恋人関係でも同じように言えることです。『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、とても普遍的なテーマを扱っています。
ネットによって誰でもつながる世の中になった今の時代、相手とつながっていたい思いが強すぎて、監視や依存に近い状態になってしまうこともあります。そんな現代人の病をネット世界を舞台にすることで描き出しているのが『シュガー・ラッシュ:オンライン』の面白いところです。
しかも、単にネット批判をするのではなく、最後のシーンではラルフとヴァネロペがスマホみたいなので会話したりしており、離れていてもつながれるというネットのよさも表現しています。ネットのよい面と悪い面の両方をバランスよく描写しているのです。『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、バランス感覚の優れている作品なのです!
『シュガー・ラッシュ:オンライン』の魅力⑥ ペンダントの使い方があまりにも上手すぎる!泣くよそりゃ……
やっぱり『シュガー・ラッシュ:オンライン』を話す際に、ペンダントは欠かせないですよね。ラルフがヴァネロペからもらった「私のヒーロー」と書いてあるペンダント。あの小道具があったおかげで、別れのシーンが2倍も3倍も切なくなりましたよね。
キングコング姿のラルフが消え去って、平穏を取り戻したネット世界。ラルフはヴァネロペの夢を認めて仲直りをする。しかし、ヴァネロペはスローター・レースのレースに参加するために、もう行かなければならない。
別れを惜しむラルフとヴァネロペ。ヴァネロペは割れてしまったペンダントを見て「ごめんね」と謝る。けれど、ラルフは割れた片方のペンダントをヴァネロペに渡す。
割れたからこそ、2人分に分け合えるという非常に感動的なシーンです。単にペンダントというモノを分け合っただけではなく、ここには気持ちを分け合うという意味も含まれていますよね。
では、2人はどんな気持ちを分け合ったのでしょうか?おそらくそれは「寂しさ」なんじゃないかなと、私は考えています。片割れ(相棒)が隣にいないことの寂しさが、欠けているハートに表現されているのではないでしょうか。いやぁ、泣ける。しかも、その寂しさは一方通行ではなく、お互いが持っているのです。
それまでラルフの一方通行だった気持ちが、相手を認めることによって互いに思い合う関係にシフトしたのです。
もともとは、ヴァネロペによって投げ捨てられ割れてしまったペンダント。ペンダントが割れたシーンでは、ラルフとヴァネロペの関係が決裂してしまったこと表すネガティブなものでした。
しかし、それが最後のシーンでは、気持ちを分け合えるというポジティブな意味合いに変化しています。ネガティブからポジティブの振れ幅が大きいため、それだけ観客の私の心も大きく揺さぶられ、泣いてしまったわけです。
しかも、別れ際に抱き合う場面では、割れたハートがくっついて1つになるじゃないですか!ちゃんと2人の絆は戻ったよというサインだと思いますけど、こんなの泣くに決まってますよね。お見事すぎる……
離れ離れになった2人は、お互いに別々の道を歩んでいく。ヴァネロペだけでなく、ラルフも生活を変化させていきます。ザンギエフの読書会に参加したりパーティに参加したり、あれだけ変化を恐れていたラルフが自ら新たな一歩を踏み出したのです。
人は誰しも、変化したいという気持ちと、現状を維持したい気持ちのせめぎ合いの中で生きています。その葛藤をラルフはヴァネロペと一緒に見事に乗り越えていきました。
ヴァネロペとの電話で「次いつ会える?」みたいな話を終えてから、穏やかに朝日を眺めるラルフ。このラルフの姿を見ながら「いやぁ、ラルフよ、お前も寂しさを味わえるくらいに成長したのだなぁ」と、私はしみじみと感動してしまいましたよ~~いやぁ、よかった!
友情にも恋愛にも寂しさって大切なのかもなぁと感じた『シュガー・ラッシュ:オンライン』でした。
はい!ということで、今回のレビューはここまで~~
今回私は1人で『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観に行きました。
上の席にカップル、下の席にカップル、両隣の席にカップルという完全なる四面楚歌、完全なるアウェイ状態での観戦ならぬ鑑賞だったのですが、そんなのは関係なしに泣けましたよ……
ま、もちろん、カップルの方々はぜひ見て欲しいし、孤軍奮闘の皆さんもぜひ劇場へ足を運んでほしい。『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、現代の問題を明るく楽しく切なく描いた素晴らしい作品ですので!
それでは、次のレビューでまたお会いしましょう!さようなら~~(^^)
↓幻冬舎より私の小説『自殺が存在しない国』が発売されました!ぜひご覧ください!