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『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の感想!征陸智己&須郷徹平が<フットスタンプ>作戦の裏側に隠された真相に迫る!

最初に明言しておきましょう。『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』が傑作だということを!

先月1月25日(金)から劇場版3部作として、全国の劇場にて『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』の公開がスタートしました。個人的に『case.1 罪と罰』はあらゆる面で優れていた反面、正直言って物足りない部分も少しありました。

しかし、今回のPSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は文句のつけどころが見つからないくらい完璧な作品に仕上がっていました

アニメーション制作のProduction I.Gの実力はさることながら、脚本家の深見真の力をまざまざと見せつけられた作品でした。『case.1 罪と罰』も60分という短い尺の中で、過不足なく謎や伏線、感情移入するポイントやキャラごとの成長などが描かれている非常にレベルの高い脚本だったのですが、深見真の脚本はそれをさらに超えてきた印象があります。

kirimachannel.hateblo.jp

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私は去る2月16日(土)に『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』を観てきました。2月15日(金)に公開ということもあってか、非常に多くの観客が劇場に押し寄せていました。

前回は宜野座執行官を愛でる目的の女性客が多かったのですが、今回は宜野座の父、征陸智己と須郷徹平が活躍するお話でしたので、観客も男性が多かった印象です。

というか、case.1で息子の宜野座が活躍し、case.2でその父の征陸が活躍するというのも、なんだか因果な話ですよね。息子から父親へバトンを渡している感じがして、それだけでもなかなかに感動できるところがあります。

今回の劇場版3部作では、テレビシリーズではわき役orナンバー2にいた人物に焦点を当てることが1つのコンセプトとなっています。それぞれの人間性を掘っていくことで、公安局刑事課一係をより立体的に描き出そうという狙いがあるのかもしれません。

前作では宜野座と霜月、そして今作では、征陸と須郷徹平。それから、青柳璃彩監視官の活躍も描かれていました。公安局の面々がお互いにどんな関係性で、どんな過去を持っていたのか、こうした点を垣間見えるところが劇場版3部作の見所の1つとなっていると言えるでしょう。

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』のパンフレットの写真

※『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』のパンフレット

では、個人的に最高だった『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力をネタバレありで、一気に書いていこうと思います!

テレビシリーズとのつながりを考えると、今作は非常にセンチメンタルな部分もあり、心打たれるシーンがたくさん用意されていました。そして、それらは緻密に組み立てられた脚本や演出によって成立していました。その辺りのことも含めて、私の感想を紹介していこうと思います!

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の基本情報


『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian』スポット

☆スタッフ

☆キャスト

(C)サイコパス製作委員会

(HPより抜粋:公式サイトhttp://psycho-pass.com/staffcast/case2.php)

☆配給会社

(引用元:https://www.toho.co.jp/movie/ods/ppss02.html

☆あらすじ

常守朱が公安局刑事課一係に配属される前の2112年夏、沖縄。国防軍第15統合任務部隊に所属する須郷徹平は、優秀なパイロットとして軍事作戦に参加していた。三ヶ月後、無人武装ドローンが東京・国防省を攻撃する事件が発生する。事件調査のため、国防軍基地を訪れた刑事課一係執行官・征陸智己は、須郷とともに事件の真相に迫る。(HPより抜粋:公式サイトhttps://psycho-pass.com/story/

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力① 第1期テレビシリーズも担当した深見真の圧倒的な脚本力に脱帽!

まず、冒頭でも紹介しましたが、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は、脚本のレベルが非常に高いです。今作の脚本を担当されたのは、サイコパス』の第1期テレビシリーズで脚本を務めていた深見真

なんと、この方、サイコパスがデビュー作なんです。恐ろしいですよね。最近では、自身が漫画原作としてかかわった『魔法少女特殊戦あすか』でシリーズ構成を担当するなど、クリエイターとして幅広く活躍されています。

サイコパスというと、どうしても虚淵玄の存在が前に出てきてしまいますが、第1期テレビシリーズの成功には深見真という脚本家の存在が不可欠であったと私は考えています。

以前、爆笑問題のラジオに虚淵玄が出演したことがありまして、その際に「劇中に出てくる哲学書の引用などは共同脚本の深見さんからもらっていた」という趣旨の発言をしていました。まさに虚淵玄深見真の2人がいたからこそ、エンターテインメント性と哲学性がマッチした『サイコパス』という名作アニメを世に出すことができたということですね。

さて、そんな深見真が今回はどんな脚本を書いたのか、個人的に「すごい!」と思った部分を1つずつ紹介していこうと思います。

全体的な構成は「サンドウィッチ回想法」で組み立てられている

まず、今作は須郷徹平を主人公にして、彼の過去を紹介する話になっていました。これはいわゆる「サンドウィッチ回想法」という物語の手法を使っています。

2116年10月花城フレデリカが外務省より監視官補佐として公安局に出向してくるところから物語は始まります。須郷徹平はフレデリカから「準軍事的活動を想定した部隊に参加しないか?」という誘いを受け、須郷は酒を片手に国防軍時代の写真を見ながら過去に想いを馳せる。

凛として時雨の素晴らしいオープニングがかかり、オープニング明けから、2112年の須郷の姿が描かれることになります。もろもろの事件が収束したのち、もう一度2116年に舞台が戻り、須郷がフレデリカの誘いを断るところで物語は幕を閉じます。

現在(2116年)→過去(2112年)→現在(2116年)という形で、現在が過去をサンドしていますよね。これが「サンドウィッチ回想法」です。例えば『タイタニック』は、まさにサンドウィッチ回想法を使っていましたよね。老女が過去の淡い思い出を振り返るお話ですからね。

タイタニック (字幕版)

タイタニック (字幕版)

 

小道具を用いて回想へいざなう見事な導入

さて、全体の構成としてはこのサンドウィッチ回想法を用いながら、ほかにも冒頭から巧妙な仕掛けを組み込んでいます。

先ほども紹介した、フレデリカからスカウトされた須郷が休憩室でひとり酒を飲みながら国防軍時代の写真を眺めているシーン。このシーンのポイントは酒を飲んでいるところです。

須郷が尊敬していた大友逸樹は、酒(ブランデー)を飲むのが好きな男でした。しかも、事件の真相につながるモリーチップを隠していたのもブランデーのなかでした。つまり、須郷にとって酒を飲むという行為は過去を振り返るトリガーとして機能するのです。うまいですね。非常にセンチメンタルでありながら、説明台詞を使わない上品な場面に仕上がっていました。ハードボイルド的な演出と言えるかもしれませんね。

 ミステリー構造とドラマ構造の両方をバランスよく取り込んでいる

凛として時雨のオープニングが終わると、直後に戦闘シーンが始まります。国防軍のエースパイロットとしての須郷の活躍ぶりを知ることができる場面です。だらだらした説明台詞などなく、動きから入る勢いの良さが非常に気持ちよかったですし、いきなり弾丸が飛び交う場面に放り込まれたわけですから、観客としては目が離せなくなります。

しかも、須郷の操縦するドローンの姿が映ったと思ったら、次は地上でスナイパーライフルを構える大友の姿、そしてドローンを操る須郷の姿といった感じで、3つの視点を行ったり来たりさせながら、テンポの良い画作りになっていました

ついでに、演習の様子を眺める国防陸軍第15旅団団長の港屋門斗国防軍統合参謀本部の高江洲嘉人の姿を映すことで、何かよからぬことが起こりそうな雰囲気まで作り出しています。ワンシーンにテンポよく様々な要素を組み込んでいるのです。

激しい演習が終わったあとは、夕焼けに照らされながら食事しているシーンに移ります。ここでは、大友と燐の仲睦まじい様子を知ることができます。「妻は中身も外も美しい」と大友が言って、燐は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

こうした二人のほほえましい夫婦仲を前半部分に描いておくことで、このあと訪れる悲劇がより悲劇的に見えるようになります。燐が復讐に染まってしまう気持ちに感情移入できるように、前半で感情移入のきっかけを用意していたというわけですね。

ゆったりとした気分でいたら今度は、大友と須郷のスパーリングが始まります。須郷は大友に首を極められてギブアップ。大友はスパーリングが終わったあと、スパーリングロボットに自分のライフログをコピーする。

これはしっかり伏線になっていましたよね。このスパーリングロボのせいで、後半は大変なことになりますからね。ちなみに、米軍が極秘に建設していた潜水艦ドッグで、大友の姿をしたスパーリングロボと須郷は闘っていたと思うのですが、最後に須郷はスパーリングロボの首を極めてなんとか勝利していましたよね。

これは、前半で描かれていた須郷と大友のスパーリングの試合展開をちょうど反転させたものとなっていました。須郷の成長を表現する要素としても、スパーリングロボの存在は機能していたと言えるでしょう。

スパーリングのシーンが終わると、東南アジア連合・シーアンでの極秘作戦<フットスタンプ>作戦のブリーフィングの場面に移る。その作戦で、須郷は緊急用補給物資に偽装された「ガスタンクポッド」を投下し、シーアンに対抗する軍閥組織はもちろん、大友ら隊員たちも同時に殺してしまう悲惨な事態を招く。

ここでは、作戦の途中で通信を切られたことにより、その後の大友の様子がわからなくなり、事件の真相を須郷からも観客からも見えなくした点が見事でした。気づかないうちに犯した罪ほど、後から知ると苦しみは倍増しますしね。

ここで1つ気づくのが、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は、静かなシーンとアクションシーンを交互に配置しているという点です。しかも、アクションシーンには物語上の伏線を配置し、静かなシーンでは感情移入するための伏線を配置しているというのがミソです。こうした絶妙な情報の配置によって、ミステリー構造とドラマ構造が矛盾なく綺麗にまとまっているのです。これは、私も見習おうと思います。

なぜ、ミスリードされてしまったのか?

さて、物語は進み、謎の武装ドローンにより国防省ビルへの襲撃事件が発生する。そして、その容疑者として行方不明となっていた大友逸樹が浮上。同時に、ドローン事件に共犯した疑いで須郷徹平が公安局から目を付けられることになる。

ここからは、須郷、征陸、青柳の3人が探偵役となり事情聴取をしたり、潜入調査をしたりしながら話が進んでいくことになります。捜査の中で大友の妻である燐と接触する3人。

今回の復讐劇の犯人は燐だったわけですが、観客の私としてはこの時点で燐が犯行にかかわっていると確信することはできませんでした。まぁ、見事にミスリードされてしまったわけですね。では、どうしてミスリードされてしまったのでしょうか?

理由はいくつかありますが、1つ言えるのはフットスタンプ作戦を指揮した高江洲や港屋や吹田などほかに怪しい人物を設けていたこと、そして、その怪しい人物たちの考えたフットスタンプ作戦の全貌が見えなかったこと、これが彼らの怪しさを助長し、燐への疑いを逸らす効果を生んでいたと考えられます。

しかも、いかにも「俺たち悪だくみしてるぜ」みたいな3人で会話するシーンもありましたしね。もっと言うなら、キャスティング面でのミスリードもありましたよね。例えば、高江洲の声を担当したのは土師孝也ですが、土師孝也の声を聞いた時点で怪しげなキャラという印象をどうしても持ってしまいます。ハリーポッターのスネイプ先生がいい例です。

ブロマイド写真★『ハリー・ポッター』スネイプ(アラン・リックマン)/お菓子

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こうした諸々の要因があって、燐への疑いを持つことなく、話は進んでいきます。

選択肢を制限することによるミスリード

須郷が尋問されて目をつぶされたあと、3人で潜水艦の隠された地下施設に行きます。と同時に、東京で大友の消息を掴んでいた宜野座たちも大友を発見し、あとを追うことになる。

ここで前半で登場していたスパーリングロボとライフログという設定が効いていましたよね。

地下施設にいる大友と、東京にいる大友のどちらが本物なんだと、考えていたらまさかの燐が犯人だったという展開になっていくわけですが、この点も巧妙でしたね。不思議なもので、人間というのは、2択を提示されるとどちらかに正解があると思い込んでしまうようなのです。このシーンはそういう人間の心理を利用しています。観る者の選択肢を意図的に制限することで、本当の解答から意識を逸らすことができるわけです。

それ以外にも、バトルの展開も見ごたえがあってよかったですよね。サイコパスのテーマソングが流れ、大友との激しいバトルシーンが始まる。青柳vs大友征陸vs大友青柳&征陸vs大友、そして最後に、須郷vs大友。このように、徐々に盛り上がる対戦になっているのです。いやぁ、痺れますねぇ。

すべての事件が解決し、須郷は征陸の正義に対する考えを聞くことになる。征陸の正義感や信念に心打たれた須郷はのちに執行官となる。そして、舞台は2116年現在に戻り、須郷はフレデリカと向き合う。

須郷は「自分はこの仕事に正義と信念を感じています」と言い、フレデリカの誘いを断るのです。昔、征陸と出会い「正義」や「信念」を学び立派な執行官になった須郷の姿がそこにあったわけです。素晴らしい回想からの戻り方ですよね。

しかも、最後にはフレデリカの意味深なセリフで物語は幕を閉じ、case.3へ続くわけです。

なにこの脚本、完璧すぎるでしょ?60分でこれだけの密度の濃い内容ができるなんて、やはり深見真の構成力は凄まじいです。

 

今回私が学んだことをまとめると、

  1. 小道具(今回は酒)を用いたスムーズな回想シーンへの移行
  2. 視点を複数切り替えることによるテンポの良いアクションシーン
  3. 「アクション→静寂→アクション」を繰り返し行い、アクションの中にミステリーの伏線を、静寂の中に感情移入の伏線を入れ込むことで、ミステリー構造とドラマ構造を同時に成立させることができる
  4. 2択を提示することで観客の中の選択肢を制限しミスリードをさそう
  5. 弱から強の順番に対戦相手をチェンジし、バトルのインフレ効果をもたらす

以上のことは、私も脚本や小説を書く際にまねさせて頂こうと思います。いやぁ、プロの実力をこれでもかというくらいに思い知らされましたね。私も努力せねば!

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力② 『劇場版パトレイバー2』を思い起こさせる話の構成!

今回も構成について語りすぎてしまいましたね……すみません。

では、話題をかえて、今度は『劇場版パトレイバー2』との関連について語っていこうと思います。 これは完全なる私の憶測になってしまうのですけど、今作『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の構成は、若干ではありますが『劇場版パトレイバー2』に似ているような気がしてならないのです。

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 『劇場版パトレイバー2』と言えば、押井守監督の代表作の1つとして有名ですよね。昨今の政治状況を予見したかのようなストーリーや、その中に込められた強いメッセージ性に衝撃を受けた人も多いでしょう。

『劇場版パトレイバー2』は、カンボジアPKO隊員として派遣された柘植行人が日本に対してテロを起こすという話でした。現地カンボジア武装組織に襲撃されながらも防衛庁本部から発砲の許可を得ることができず、柘植以外の隊員が全員死亡するというショッキングな出来事から、柘植は国に対して復讐を画策する。

上層部に対して復讐するという構図は、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』にも見られました。大友逸樹は国防省の勝手な策略により命を落とした兵士です。その大友が国防省のビルにドローンで襲撃をかけたり、原子力潜水艦でテロを画策したり、国や国防省に対して復讐を図るというのが今作の大まかな流れです。

パトレイバー2では上層部が防衛庁で、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』では国防省が上層部です。防衛庁国防省は実質同じ役割を果たす機関だと言えます。

このような共通点から、深見真はおそらく、パトレイバー2を意図的に引用したのだと考えられます。しかも、深見真は単に引用するだけでなく、パトレイバー2のプロットをさらにひっくり返す造りにしていました。

パトレイバー2を知っている人間からすれば、「ああ、これは大友が国へ復讐する話なんだな」という見当がつきます。しかし、今作はパトレイバー2をベースに話を進めながらも、実は復讐劇を演じていた大友はすでに死んでいて、裏で燐が操っていたというオチを持ってきている。

これはパトレイバー2を知っている私のような人間を、いい意味で騙す素晴らしい方法だと思います。パトレイバー2のプロットをミスリードとして応用しているわけです。うまい引用だなと、心から感心しましたよ。

ちなみに、上層部vs現場という図式は、パトレイバー2以降、本広克行監督の『踊る大捜査線』で引き継がれました。

そして、その本広監督は『サイコパス』でも総監督を務めています。そこで一緒に仕事をしていたのが、今回の劇場版3部作の監督を務める塩谷監督や脚本を担当した脚本家の深見真です。

もしかしたら、上層部vs現場という図式は、押井監督→本広監督→塩谷監督&深見真という流れでバトンのように引き継がれてきたのかもしれませんね。だから、今回の大友夫妻による国防省へのテロという構図の話が生まれたのかもしれません。

まぁ、邪推ですけどね。というか、SFを作っていてパトレイバー2を知らない人なんていませんから、みんな何かしら影響は受けているとは思います。ただ、今作はその影響が割と濃く出ていたと思いましたので、少しだけ言及させていただいた次第です。

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力③ 征陸智己という男の過去と深みのあるセリフ!

私はもともとテレビシリーズのときから、征陸智己という人物が結構好きなのですよ。一挙手一投足に大人の色気があり、一言一句に深い洞察や人生観が滲む、なるほどカッコよさとはこういうことかと思わせる魅力的なオジサンだなと思うのです。

その征陸が主演で活躍するのですから、これは面白くならないはずがない。事実、征陸の出てくるシーンはどれも深みや情があり、心に沁みる場面だらけでした。

そもそも征陸は、かなり特殊で複雑な状況の中にいます。潜在犯認定された執行官として仕事をしているだけでなく、上司の宜野座伸元は自分の息子で公安局のエリート監視官。しかも、征陸の妻は「ユーストレス欠乏症」という病気にかかり、介護ロボなしでは生活できない状態になっています。

潜在犯であることを理由に息子からは嫌悪され、執行官は行動が制限されるため病気の妻を傍で支えてやることもできない。心中はかなり複雑な思いを抱えているはずです。なのに、征陸は常に同僚に優しく、事件には刑事として真剣に向き合う。自分が辛い状況にいることを、少しも感じさせない。カッコいいですねぇ。

青柳の計らいで、沖縄の実家に戻ったときも、介護ロボに「どなたですか?」と質問され、征陸は苦笑しながら自分のことを「公安局の刑事」と名乗っています。このシーンって実はすごく切ないんですよね。

というのも、征陸は自分に家に帰ってきただけなんですよ?妻に会いに来ただけなんですよ?にもかかわらず、征陸は「刑事」と名乗るしかないんですよ、潜在犯だから。自宅へ帰ることの後ろめたさだとか、様々な複雑な感情や状況によって、征陸は自分の家に入るときにも「刑事」を名乗る必要があるわけです。難儀な話ですよ。

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ユーストレス欠乏症で反応がほとんどない妻に向かって、征陸は自分にとって大切なことが何かを語り始める。「自分の残りの人生は、伸元のために使いたい……」みたいなことを言うわけです。「ただ伸元が幸せでありますように」とか言うわけです。西日が征陸の穏やかな横顔を照らすわけです。刑事ではなく、父親としての温かさを感じる、とても情感のあるいいシーンですよね。

このシーンのセリフを、第1期テレビシリーズの征陸が殉職したシーンと重ねるとかなり心に沁みるところがあります。というのも、征陸は本当に自分の命を息子のために投げ出したのですから。PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』で言っていたセリフは、そのまま行動に反映されていたわけです。いやぁ、切ないですね。

高江洲に脅されたシーンでも、征陸は父親として家族を護ろうとしていました。自分の家族のことになると、いつもは温厚な征陸も声を荒げる。あれだけ息子に嫌われながらも、徹底して父親であり続ける姿に、ただただ感動するばかりです。ベラベラ能書きを垂れるのではなく、態度で示す、行動で示す、人としての熱さと温かさを兼ね備えた本当の意味でカッコいい男だと改めて思いました!

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力④ 須郷徹平のあまりに繊細で実直な性格!

 『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は須郷徹平が兵士を辞めて、刑事になるまでの過程を知ることのできる話になっていました。

そして、その過程で須郷徹平という人物の実直さ繊細さが強調して描かれていたように思います。須郷はとにかく、人間らしい男なのですよ。

例えば、征陸、青柳、須郷の3人が燐の自宅を訪れて、燐から話を聞くシーンでは、征陸が燐のことを容疑者として疑っている様子を見て、須郷は必死で燐を庇います。征陸はそんな須郷を見て、「とりあえず、あんたが犯人でないことはわかった。他人のためにあんなに必死になれるような人間が犯人だとは思えない」と粋なことを言っていました。

須郷のよさはまさに、この部分。嘘を付けない、感情が正直に表に出てしまう、要するに不器用な男なのです。しかし、不器用だからこそ、自分の信念を曲げない強さも持っている。だからこそ、征陸は須郷に向かって「お前ならきっといい刑事になる」と告げるのです。

と同時に、燐からは「須郷くんも軍を辞めたほうが良い」と勧められていました。この言葉の意味は結構深いと私は考えています。なぜなら、燐はこの時点で、すでに軍関係者が夫を死なせたことを知っており、復讐のために動き始めていたからです。

高江洲や港屋は、人の命などなんとも思っていません。フットスタンプ作戦自体が人命を軽視する作戦だったのですから。燐にとって軍人というのは、人の命を奪っても平気でいられる連中なのです。そして、須郷がそんな人物ではないことを燐は分かっていたのです。

もっと言えば、生前に大友は「俺たちは人を殺してもサイコパスが不安定にならないタイプの人間で構成されている。だが、それは本当に正常なことなのか?」みたいな問いかけを須郷にしています。

軍隊に身を置き、感覚がすり減ってくると高江洲や港屋のように、人の命を軽視するようになってしまう。大友は、こうした人間性の欠如を危惧して、あの問いかけをしていたのです。

では、須郷は人命をなんとも思わない人間でしょうか?答えは、否です。むしろ、須郷は繊細で優しい人物です。例えば、大友が亡くなったあと、訓練中に精神状態が不安定になったりしていましたよね。須郷はナイーブな性格なのです。

そして、おそらく燐もその点は同じなんです。もともと燐は一時的にサイコパスの色相が悪化して、異動になった身です。燐もまた繊細な人物だったのです。この作品では、サイコパスが濁るというのは必ずしも悪い意味ではなく、人間味を表現している部分でもあります。

燐は須郷が自分と同じ繊細な人間だということが分かっていたのかもしれません。だから、自分のように壊れてしまう前に、軍隊から去るべきだと忠告したのでしょう。「仲間のために感情的になれるような人物は、軍人には向いていない、向いているのは港屋や高江洲のような血も涙もない奴だ」そういう認識のもと、燐は須郷に軍を辞めるよう言ったのかもしれませんね。

須郷は燐から「軍隊を辞めろ」と勧められ、征陸から「きっといい刑事になる」と刑事になることを勧められたわけです。

須郷は燐のことをどう思っていたのか?

それと、これも私の邪推ですけど、須郷はたぶん燐のことを好きだったような気がしてならないのです。須郷の口からはっきりとそんなセリフが出てきたわけではないですが、須郷のちょっとしたセリフや態度に燐への想いが隠されているように思えるのです。

燐を庇うという行為もそうですし、例えば、フットスタンプ作戦の前日、大友と須郷が二人で会話するシーンがあったと思います。そこで、大友は「お前ら(須郷と燐)、たしか同期だったよな?」と須郷に質問し、須郷は「はい、それだけです」と返す。

会話はそこでいったん途切れますが、この会話は少し引っかかりますよね。大友はおそらく、須郷が燐に対して好意を持っているのではないか?というちょっとした疑念を持っていたのかもしれませんね。だからこそ、こういう質問が出てきたのではないでしょうか。そして、その疑念は少なからず当たっていると思われます。

復讐が失敗し、息を引き取った燐を須郷は抱きしめて、消え入りそうな声で「燐……」と名前を呟いていました。名前を呼ぶんですよね、最期に。ここには、須郷の燐への気持ちが乗っかていたような気がしてならないのです。

そう考えると、須郷は想像以上につらい精神状態だったのだろうと思うのです。尊敬する先輩と、敬愛する女性の両方を失ってしまったのですから。自分が落としたガスタンクが原因になっていたことを考えるともっとつらいですよね。

須郷は期せずして罪を負ってしまい、敬愛する二人を失うという罰を受けたのです。『case.1 罪と罰』のテーマ性は、どうやらこちらにも引き継がれていたようですね。

このように『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』には、須郷徹平の繊細な感情と真面目で不器用な性格が見事に表現されていました。失意のどん底に落ちても、征陸の励ましを受けて、自分の中の「正義」と「信念」に目覚める辺りも非常に感動的だったと思います。

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』の魅力⑤ 細かな描写でも光るProduction I.Gの職人技! 

攻殻機動隊黒子のバスケなど、様々な名作を生み出してきたProduction I.G。リファレンスムービーを用いたリアルで重厚感のある戦闘シーンはもちろん、ドローンの操作や爆撃の迫力など、目が離せないクオリティの高いアクションシーンが今作でも見事に表現していました。

しかし、同時に、こうした派手なシーンだけでなく、細かな部分にもProduction I.Gの技術レベルの高さを感じる部分があります。

大友がフットスタンプ作戦で命を落とし、数日後、須郷は燐からビンタされます。ビンタされた須郷はまず目を見開いてビックリした表情になります。

ビンタの衝撃で徐々に顔が後ろに動くと同時に、須郷の顔が少しずつ苦々しい表情になっていきます。眉をひそめて、目じりの付近にしわが寄り、苦虫を噛み潰したような顔になっていたのです。ほんの数秒のシーンにも、人物の感情の微妙な変化が表現されているのです。職人技を感じる素晴らしいシーンだと思います。

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.3 恩讐の彼方に』はどんな話になるのか? 

今回のブログも前回以上に長くなってしまいましたね。

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は、全体的に説明台詞が少なく、ハードボイルドな作風に仕上がっていました。

征陸や須郷の気持ちの揺れ、葛藤をセリフではなく、表情や小道具で間接的に表現することで、哀愁や言葉にできない渋みのようなものまで画面上に表現することに成功しています。アクションシーンに注目しがちですが、こうした画面上の演技を徹底して追及することで、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.2 First Guardian』は、味わい深い作品になっているのです。

 

さて、来月はついに3部作のラスト、『case.3 恩讐の彼方に』が公開されます。脚本はcase.2と同じ深見真が担当していますから、ある程度、つながりのある話になっているものと推測されます。PVを観る感じでは、花城フレデリカが狡噛をリクルートしているように見えます。

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case.2では須郷に「準軍事的活動を想定した部隊に参加しないか?」と勧誘していましたが、今度はどうやら狡噛を勧誘しに出向いているようです。

準軍事的活動を想定した部隊というと、まさしく攻殻機動隊のような実力派の精鋭がそろった部隊なのでしょうか?狡噛や須郷など、精鋭をそろえて海外での活動するみたいな感じになるのでしょうか?そうなると、また続編が作れそうな気もしますしね。ちょっと今後の展開が楽しみですね。

case.2で登場したガスタンクの技術はどうなったのか?シーアンへの軍事介入がcase.3ではどう影響してくるのか?省庁間の権力闘争は海外にどう影響を与えているのか?このあたりについての言及はあるかもしれません。case.2を見る限り、省庁間で海外の覇権を争っている印象もありましたからね。省庁間の植民地拡大紛争みたいな、とんでもない状況になりつつありましたからね。

フットスタンプ作戦では外務省の人間がかかわっていましたし、花城フレデリカは外務省の人間ということを考えると、外務省内での覇権争いや様々な思惑が蠢いている感じもします。

とにもかくにも、3月8日(金)の公開日が待ち遠しいですね!

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はい、ということで、今回のレビューはここまで!

菊池寛の『恩讐の彼方に』という小説があるようなので、そちらを読んで予習してから私は劇場へ行こうと思います。いやはや、ついに狡噛登場ですからね!楽しみです!

それでは、また次回のレビューでお会いしましょう。さようなら~(^^)