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【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の感想&考察!比企谷と雪乃に共通するボーダーとは?マックスコーヒーの意味とは?

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の画像
©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。完

「総武高校プロムサイコウプロジェクト」

プロム企画の名前も決まり、比企谷が本格的に動き始めましたね。それにしても、この材木座先生が命名した名前……比企谷も言っていましたが、なかなかにいい感じですね。「最高」と「再興」と「再考」を掛けている感じが、中二的で素晴らしいし、企画の意図から考えてもドンピシャだなと思いました。

比企谷が躊躇なく材木座の案を採用したところも、ちょっと面白いポイントでしたね。第2期の序盤までは、自分の立てた計画について、誰にも何も話さず、すべて自分で遂行していた比企谷。しかし、雪乃から「あなたのやり方は好きじゃない」と言われ、葉山からの指摘もあり、比企谷は自己完結するのではなく、他者の意見を取り入れる方向へ、第2期の中盤から舵を切ることになりました。

第3期はその延長線上にあるため、比企谷は材木座の案をあっさりと採用したのでしょう。特に、第6話から、比企谷は他人に話を聞いて、ヒントを集めていくタームに入った感じがしますね。

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実際に、小町との会話で出てきた卒業イベントの話を、比企谷は携帯にメモしていましたよね。材木座の意見を採用したように、あのときメモした言葉もどこかで企画に活かされるものと考えられます。言うなれば、坂本龍馬の船中八策的な方法ですね。他者の意見を繋ぎ合わせることで、一つの何かを作り出す試みと言えば良いのでしょうか。

とはいえ、そのアイディアの使い方に、比企谷の個性が光るところが興味深いですね。他人の意見を活かすことと、他人の意見に流されることの違いを、比企谷は表現しているようにも見えます。自分を持ったうえで他人の意見を使うなら、それは〝活かしている〟と言えますが、自分を持たないまま他人の言いなりになるのは、〝思考停止〟であり〝依存〟であると言えるでしょう。

比企谷の態度を見ていると、雪乃が悩んでいる「頼る」ことと「依存する」ことの違いを、比企谷はきちんと理解していることが分かります。ゆえに、雪乃は比企谷に憧れるのかもしれませんね。

さて、今回も、そんな『俺ガイル 完』第7話の感想&考察をネタバレ全開で書いていきます。特に、比企谷や雪乃の考え方について、マックスコーヒーなどの小道具、あるいは構図、あるいは仕草などの演出意図について深堀していきます。

お暇な方は、ぜひご覧ください。

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【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話のあらすじ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」オープニング映像

雪乃との対立を決意した比企谷は、材木座に紹介された遊戯部の秦野相摸を新たに巻き込み、当て馬企画を周知するための活動を開始する。だが、なかなか進まない比企谷のプロム企画。打開策の一つとして、比企谷は他校との合同企画を思いつく。

比企谷は結衣とともに、以前合同イベントを実施した海浜総合高校の生徒会長・玉縄のもとに向かい、自分たちの企画を提案する。しかし、「君の企画はダメだ」と比企谷の企画は突き返されてしまう……。

 【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の感想&考察① 比企谷と雪乃に共通するボーダーとは?〝共感〟より〝本物〟がほしい不器用な生き方について

比企谷と雪乃は、自分の気持ちを伝えることが苦手な〝不器用〟な人物です。この不器用さが彼らの共通点であり、共感するポイントだと考えられます。

では、なぜ彼らはこんなにも不器用な生き方を選択しているのでしょうか?おそらく彼らは、「共感」よりも「本物」を大事にするところがあり、それを追求するあまり、簡単な解決策に飛びつくことができないのでしょう。

ここでは、本物を重視するとはどういうことなのか、うまく伝えられる自信はありませんが、なんとか説明してみようと思います。

相変わらず、俺たちは伝えるのが下手すぎる。本当はもっと簡単な伝え方があることを俺も彼女も知っている。けれど、それが正しいと思えないから、だから、せめて間違えないように、祈るような気持ちで、俺は二人を見つめていた。

第7話の比企谷のモノローグですが、これを分解しながら、語られていることの意味を探っていきます。

まず、ここで言う「俺たち」とは誰のことでしょうか?答えは簡単で、比企谷と雪乃の二人のことだと思われます。「俺も彼女も」と言っており、「彼女たち」と複数形にしていないため、結衣はここに含まれていないと考えるのが妥当です。

そして、気持ちを伝えるのが下手なところが、比企谷と雪乃の共通点であることは、ここまで話を観てきた人なら誰もが了解していることでしょう。これを理解したうえで、次に、比企谷が設定しているボーダーについて話したいと思います。

このセリフのなかで、比企谷は「俺たち」とそれ以外の人たちの間に、はっきりと線(ボーダー)を引いていることが分かると思います。俺たち=比企谷と雪乃は、簡単な伝え方があることを知りながらも、そこに正しさがあると思えないから(本物だと思えないから)、簡単な伝え方を選ばないと考えているようです。つまり、簡単な伝え方には「正しさ=本物」がないと思っているわけです。

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しかし、簡単な伝え方を選択し「偽物」のままで良いと考えている人は世の中にたくさんいます。むしろ、偽物のほうが多数なんじゃないかと思うくらいに。けれども、比企谷ははっきりと、俺たちは偽物に甘んじるのではなく、辛くても、苦しくても、下手くそでも、本物がほしいと主張しています。

このように、比企谷は「俺たち」という言い方で、そのほかの人物と、比企谷&雪乃を分けている節があります。そこで、さらに理解を深めるために、「俺たち」とそれ以外の人たちの違いとは何か簡単に分解してみました。

【俺たち(比企谷&雪乃)】

  • 気持ちを伝えるのが下手
  • 本物を求めている
  • 自分の言葉(自分語)で話そうとしている
  • 納得感を求めている

【そのほかの人たち】

  • 気持ちを伝えるのが上手
  • 偽物で問題ない
  • 一般的な言葉(一般語・共通語)で話している
  • 共感を求めている

上記で重要なのが、言葉の使い方です。これは私の造語なのですが、自分なりの理屈で考えて練り出している言葉は「自分語」。対して、自分の理屈や考えを排除した、みんなが使うような既存の言葉を「一般語」とか「共通語」とか呼んでいます。

比企谷は明らかに「一般語」の使用を避けていますよね。遊戯部の二人に協力を頼むときも、普通なら避けた方が良いような言い方をわざわざ選択しています。共感できるような言い回しならうまくいきますが、あくまでも比企谷は自分なりのひねくれた言い回しを選択しています。雪乃との会話でも、マックスコーヒーを奢るか奢らないかで、やたらとひねくれた言い回しをしていましたよね。

常識的に考えれば、その場の空気や、世の中の常識に委ねて、自分で考えずに一般語を使うほうが、軋轢も生まれず、上手にその場を乗り切ることができます。一般語なら、何となく誰もが理解できる言葉なので、その場の「共感」を得ることもできます。

ですが、他人の考えた言葉で会話をしているうちは、仮面同志の会話でしかなく、そこに個人は存在しません。個人が存在しない会話に、本物などあるはずがないのです。そして、この仮面同志(偽物同士)の会話を比企谷はひどく嫌うところがあります。

比企谷は一般語に頼る関係性を「偽物」だと切り捨て、常に自分なりの自分語を探しています。ゆえに、共感を得ることが難しく、感情がうまく伝わらないのです。

誰もが共感できる一般語でなんとなくやり過ごすのではなく、自分の言葉を吟味して紡ぎだすことにより、「仮面対仮面」という嘘の関係(偽物)ではなく、「個人対個人」という真の関係(本物)が生まれる、そう比企谷は考えているのかもしれません。

非常に不器用な生き方ですが、ちゃんと個人として他者や現実と向き合うこの生き方は、とても魅力的だなと私は思います。

私も含め多くの人は、無意識のうちに、一般的な言葉を使ってしまいがちです。しかし、一般語が出そうなときでも、比企谷や雪乃はそれを一瞬飲み込んで、自分の言葉に変換して出しています。この反芻のような言語表現を毎回行っていると考えると、どれだけ大変なのかよく分かります。しかし、その足掻きこそが、彼らを一人の個人として成立させている要因なのかもしれません。

今回の話を観て、改めて自分語で話すことの大切さを思い知りました。一般語でテキトーにやり過ごそうとしているとき、自分語に変換でいないか、私もちゃんと意識してみようと思います。

 【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の感想&考察② 二人でマックスコーヒーを飲む意味とは?小道具や微妙な構図に隠された演出意図

当ブログでも何度か取り上げていますが、コーヒーという小道具は「大人」の記号として使われています。比企谷が常にコーヒーを飲んでいるのは、同級生に比べて精神的に大人だからと考えられるわけです。あるいは、自分が同級生に比べて少しお兄ちゃんであるという自意識を反映しているとも言えます。

確かに、いろはや陽乃から指摘されていたように、これまで比企谷は「お兄ちゃん」として振舞っていたところがあります。例えば、第1話の冒頭、葛西臨海公園で雪乃と結衣に飲み物を渡すシーンでは、比企谷はコーヒーを取り、雪乃と結衣にはカフェオレ的なものを渡していました。

コーヒーは大人の記号で、甘いものは子供の記号として解釈できるため、このシーンでは、比企谷がまだ〝お兄ちゃん〟として彼女たちを〝妹〟扱いしていたことが分かります。「苦いもの=大人の飲み物」を自分が飲み、「甘いもの=子供の飲み物」を彼女たちに配るという行為で、兄妹関係にあることを暗示していたわけです。

ほかの場面でも、例えば、第6話、いろはと二人きりで話すシーン。比企谷は、いろはに「おしるこ」と「コーヒー」を差し出し、いろはは「おしるこ」を選びます。比企谷のほうが苦いものを飲み、後輩であるいろはは甘いものを飲んでいるわけです。ここでも、苦さの違いにより、比企谷のほうが大人であることを暗に示しています。

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では、今回はどうでしょうか?そうなんです、実は今回、比企谷は雪乃に自分と同じマックスコーヒーを渡しているのです。第1話では、甘いカフェオレを渡していたのに、今回は同じ苦い飲み物を渡しているのです。

これはつまり、「俺とお前は対等だ」という意思表示として解釈することができます。これまで雪乃を妹扱いしていた比企谷が、雪乃を一人の対等な個人として扱っていることが、カフェオレからマックスコーヒーへの変化によって表現されているのです。

いやぁ、すごいですよね。渡す飲み物の変化で、人物の関係性の変化を表現するなんて。なかなか、斬新な表現だと思います。

その反面、いろはは甘いものを選ばされているわけだから、まだ対等な関係ではない、あくまでも先輩・後輩の関係から抜け出せてはいないのかもしれませんね。そのうえで、「妹扱いされて嬉しい女の子はいない」という、いろはの気持ちを考えると、ちょっと切ないですね。

それと、今回は人物の構図も見どころの一つでした。中庭みたいなところで、奉仕部の三人が久しぶりに集まる場面。結衣の登場をきっかけに、その場を後にしようとする雪乃だが、それを結衣が引き留めます。このときの人物の立ち位置に注目してみてください。雪乃と比企谷の間に、結衣が立っていることが分かると思います。

この人物の構図から、私は二つの意味を読み取りました。

一つが、結衣の奉仕部における立ち位置です。結衣は、比企谷と雪乃の間に立って、奉仕部の関係を維持するバランサーとして振舞ってきたところがあります。写真を撮るときも、結衣が真ん中にいて、比企谷と雪乃を引っ張るような構図になっていましたよね。ゆえに、奉仕部の席の配置も、結衣が真ん中に座り、比企谷と雪乃が向かい合う形になっているわけです。

もう一つは、結衣の置かれている精神的状態です。結衣は現在、比企谷への恋心と、雪乃への友情の間で板挟みになっています。バランサーであるがゆえに、どちらの感情も優先できなくなっている状況です。どちらも大事だから、どちらも壊したくない。こうした葛藤のなかに結衣は置かれています。

比企谷と雪乃の間に立っている構図には、比企谷(恋心)と雪乃(友情)との狭間で、苦しんでいる結衣の精神状態が反映されているものと推察されます。

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奉仕部の席の配置、人物の役割としての立ち位置、精神状態を表す構図が、一直線につながった素晴らしいシーンだと思います。一つのシーンに複数の意味を重ねるという非常に高度な技が使われていましたね。

ちなみに、演出面の話で、もう一つしておきたいのが、意識高い系でお馴染みの玉縄のことについてです。比企谷も驚いていましたが、なぜか玉縄が横文字を使わずに話していましたね。この変化には、たぶん一緒にいた折本かおりが関わっているものと推察されます。玉縄が折本を食事に誘っていた場面から分かるように、玉縄は折本に好意を抱いているようです。玉縄が普通に喋るようになった原因はここにある気がします。

確かに、横文字発言はカッコつけとしては機能しますが、普通に女の子と楽しく話をするときに役立つとは思えません。コミュニケーションを楽しむためには、互いが分かる言葉を選ぶ必要があります。つまり、玉縄が普通に話すようになったのは、折本とコミュニケーションをとるためだったのではないかと考えられるわけです。一生懸命、言葉遣いを相手に合わせようと頑張っているわけですね。

しかし、食事の誘いを断られたあと、玉縄の喋り方が元に戻っていましたよね。あれは、おそらく断られたことによる精神的ショックで、つい、いつもの言葉遣いに戻ってしまったのだと考えられます。意識高い系の喋り方が、玉縄にとっては精神安定剤的な役割を果たすのでしょう。

このように、はっきり明示はしないものの、人物の中で起きた変化を、仕草やセリフによって暗に示してくるあたりが、『俺ガイル』の憎いところなんですよねぇ。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の感想&考察のまとめ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」エンディング映像

そういえば、葉山と比企谷の映し方って、綺麗に対照的になっていて面白いですよね。比企谷が一人でいる状態を映したあとに、葉山がみんなに囲まれている様子を映すとか……今回で言えば、比企谷が中庭から葉山を見る場面。比企谷は暗い日陰にいるのに、葉山は夕日の当たる明るい日向に立っている……人物の違いを置かれている状況や情景の違いで表現するという、なかなか憎い演出をしているなぁと思いましたね。

さて、それでは、最後に『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第7話の感想&考察をまとめておこうと思います。

  • 比企谷は「俺たち」とそれ以外の人たちの間に、はっきりと線(ボーダー)を引いている
  • 比企谷は、簡単な伝え方には「正しさ=本物」がないと思っている
  • 比企谷は「一般語」に頼るのではなく、常に自分なりの「自分語」を探している
  • 誰もが共感できる一般語でやり過ごすのではなく、自分の言葉を吟味して紡ぎだすことにより、「仮面対仮面」という嘘の関係(偽物)ではなく、「個人対個人」という真の関係(本物)が生まれる
  • 「苦いもの=大人の飲み物」を自分が飲み、「甘いもの=子供の飲み物」を彼女たちに配るという行為で、ある種の差別化を図っていた
  • これまで雪乃を妹扱いしていた比企谷が、雪乃を一人の対等な個人として扱っていることが、カフェオレからマックスコーヒーへの変化によって表現されている
  • 奉仕部の三人が集まっている構図から二つの意味を読み取ることができる
  • 一つが、奉仕部の関係を維持するバランサーとしての結衣の役割の反映
  • もう一つが、比企谷(恋心)と雪乃(友情)との狭間で、苦しむ結衣の精神状態の反映
  • 玉縄が普通に話すようになったのは、折本かおりとコミュニケーションをとるためだったのではないか?

はい。第7話の感想&考察は以上になります。

以前の記事で「5,000字くらいでまとめるようにします」とか、言ってたくせに、結局今回も7,000字を超えてしまいました。いやぁ、『俺ガイル』を観ていると、いろんな発見とか、刺激があって、ボリュームがどうしても増えちゃうんですよね。

まぁ、減らせるときは減らすくらいの感じで、今後は書いていこうと思います。

第8話を観終わったらレビューを書きますので、そのときにまたお会いしましょう。

さようなら~。

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