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『プロメア』の感想・ネタバレ考察!今石洋之×中島かずき×異色のアニメションスタジオTRIGGERが映像的快楽の最大値に挑む!3D歌舞伎アニメここに誕生!

『プロメア』の画像
©TRIGGER・中島かずき/XFLAG

promare-movie.com

 

「俺の火消し魂に火がつくぜ!」

 

ついに観てきたぜ!『プロメア』を!お前たちは観たか?魂は震えたか?心の炎は燃え盛ってるか?俺はメラメラ燃え盛ってるぜ!!

 

おっと、すみません。ついつい、ガロの口調になってしまいました。あれだけ凄まじい勢いの映画をみせられて、冷静さを保っていられるほうがどうかしてます。頭からお尻まで、息をつく暇がほとんどない

「緩急がどうこう」と批判する向きもあるようですが、そういう小手先の技術では語れない魅力が『プロメア』にはあるわけで、頭で考えて観るタイプの作品ではなく、魂で感じるタイプのアニメなのだから、「うおー!!」と言っていれば、それでOKなのです。

冷静になるな!考えるな!燃え上ればそれでいい!これは‟魂コンテンツ”なのだから。

天元突破グレンラガン』、『キルラキル』の監督・今石洋之、脚本・中島かずきによる初のオリジナル長編アニメーションが『プロメア』。この2人がタッグを組んでいるわけですから、魂コンテンツになることは初めから確定していたと言っていいでしょう。

そもそも、劇場に足を運ぶ人のほとんどは、この両名の名前に「おいおい、また熱いアニメが観れるのかよ!」と期待を寄せていたはずです。そして、その期待は見事すぎるほどに叶えられ、いやむしろ、期待以上の出来を提示し、観客の度肝を抜いた。少なくとも私は、心臓を射抜かれ、鼻血が出る手前で興奮をなんとか押しとどめたくらい感動しました。

両名以外にも、作品を盛り上げるスタッフ陣の豪華さには目を見張るものがあります。アニメーション制作を担当したのは『SSSS.GRIDMAN』をはじめ、迫力のあるアクションシーンで評価を集めているTRIGGERの異才を放つクリエイターたち。

音楽は『進撃の巨人』で大ブレイクを果たし、その後も『機動戦士ガンダム UC』、『甲鉄城のカバネリ』、『Re:CREATORS』といった数々の名作で名曲を提供し続けている澤野弘之が担当。主題歌には抜群の歌唱力で各世代から人気を獲得しているSuperflyを起用。

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さらに出演陣も豪華絢爛。主人公のガロ・ティモス役には俳優の松山ケンイチ、バーニッシュの親玉であるリオ・フォーティア役には、劇団☆新感線で活躍する俳優の早乙女太一、プロメポリスの司政官クレイ・フォーサイト役には堺雅人、そのほか豪華声優陣が主人公たちの熱い物語を支えています。

話が大きくなり、敵が巨大になり、主人公たちも呼応して強くなる。典型的なインフレアニメである『プロメア』。この『プロメア』という作品の性質を反映したかのような豪華スタッフ、豪華キャスト。スタッフ陣やキャスト陣を眺めているだけで、インフレ効果で心が高ぶっていくのが分かります。これだけの布陣で制作された作品が面白くないなどあり得ない。

私が劇場で観ていた時も、両隣の観客が前のめりになっていました。実は私も私でいつの前にか、座席から背中を浮かしていました。スクリーンに吸い寄せられるように、食い入っていたのです。こんな作品、めったにありません。

先ほどは「うおー!!」と叫んでいればいいなんて言いましたけど、とはいえ、どうしてここまで面白いのかは、どうしても気になってしまうもの。そこで今回、私なりになぜこんなに面白いのか考えてみました

「面白いことを友達に伝えたいけど、どう伝えればいいか分からない」なんてときは、もしかすると、これから書く内容が役立つかもしれません。ただし、以下に書き記すことはあくまでも、映画を観た私の妄想解説です。正確な解説ではありません。変なこともいろいろ言いますので、そう思って楽しんでください。では、さっそく、この『プロメア』の魅力をネタバレ全開で考察していきましょう!

 

『プロメア』のあらすじ


映画『プロメア』第二弾PV 制作:TRIGGER(5月全国公開)

突然変異により炎を操る能力を手に入れたバーニッシュ。バーニッシュによって世界の半分が炎に飲まれた世界大炎上から30年後――。ほとんどのバーニッシュが逮捕されるなか、度々世間を騒がせている攻撃的な一団「マッドバーニッシュ」により、自治共和国プロメポリスは火災の被害にあっていた。各地で引き起こされるバーニッシュ火災に対応するために、司政官のクレイ・フォーサイトは高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」を創設。ガロ・ティモスはバーニングレスキューに所属する新人隊員。その日も、バーニッシュによる火災警報を受け、出動するバーニングレスキューの一員たち。救助活動を進めるなか、マッドバーニッシュの一団に遭遇したガロは、消防戦闘強化服マトイテッカ―で戦闘を開始。マッドバーニッシュのボスであるリオ・フォーティアとの激しい闘いの結果、ガロはバーニングレスキューの面々と力を合わせ、リオを拘束することに成功する。しかし、マッドバーニッシュ逮捕後に、ガロは尊敬するクレイ・フォーサイトの抱える暗部を知ることになる。何が正義なのか悩みながらもガロは、真の敵を見据え、新たな敵に立ち向かっていく――。

 

『プロメア』のスタッフ

  • 原作:TRIGGER・中島かずき
  • 監督:今石洋之
  • 脚本:中島かずき
  • キャラクターデザイン:コヤマシゲト
  • 美術:でほぎゃらりー
  • 美術監督:久保友孝
  • 色彩設計:垣田由紀子
  • 3DCG制作:サンジゲン
  • 3Dディレクター:石川真平
  • 撮影監督:池田新助
  • 編集:植松淳一
  • 音楽:澤野弘之
  • 音響監督:えびなやすのり
  • タイトルロゴデザイン:市古斉史
  • 主題歌:Superfly
  • クリエイティブディレクター:若林広海
  • アニメーションプロデューサー:舛本和也
  • アニメーション制作:TRIGGER
  • 配給:東宝映像事業部

(HPより抜粋:公式サイトhttps://promare-movie.com/cast_staff/)

『プロメア』のキャスト

  • ガロ・ティモス:松山ケンイチ
  • リオ・フォーティア:早乙女太一
  • クレイ・フォーサイト:堺雅人
  • ビニー:ケンドーコバヤシ
  • デウス・プロメス博士:古田新太
  • アイナ・アルデビット:佐倉綾音
  • レミー・プグーナ:吉野裕行
  • バリス・トラス:稲田徹
  • ルチア・フェックス:新谷真弓
  • イグニス・エクス:小山力也
  • エリス・アルデビット:小清水亜美
  • ヴァルカン・ヘイストス:楠大典
  • ゲーラ:檜山修之
  • メイス:小西克幸
  • ビアル・コロッサス:柚木涼香

(HPより抜粋:公式サイトhttps://promare-movie.com/cast_staff/)

 

『プロメア』の感想① 徹底的に統一された「□」「△」「○」のデザイン!

予告の時点で、ある程度、作品の雰囲気を知ることはできましたが、それでも、あのポリゴン風のアニメーションには驚きました。ビルや戦闘服、炎やレンズゴーストに至るまで、ポリゴン風のデザインに統一されていました。

このシステマチックに見える世界観だからこそ、その舞台で活躍する人物たちが、より生き生きとした姿で描けているように思います。世界観を創造するとき、リアル路線で組み立てる作品は多いと思いますが、『プロメア』はリアルに寄せる気がほとんど見られません。このリアルを断捨離し、徹底的にアニメ内での現実感をポリゴン風の背景によって構築している点に、私は革新性を感じました

とくに今回面白かったのは、「□」、「△」、「○」の使い分けです。まず、オープニングの時点で、△記号は象徴的に使われていましたよね。スタッフ陣の名前を紹介しながら、幾何学模様がチカチカ光り、世界中で目覚めるバーニッシュと、世界中が炎に飲み込まれていく様子が、怒涛のように映像として流れていきます。

この映像内で、△は何回も出てきました。あの象徴的な幾何学模様は、別次元からプロメアが地球にアクセスしていることを表現していた考えられます

その後の描写でもバーニッシュの出すフレアはすべて△で表されており、プロメアの形もまた△で描かれていました。すなわち、△はバーニッシュを象徴する記号と言えるわけです。

もう少し言うと、△はおそらく火山をイメージしているのでしょう。事実、リオは中盤、火山でエネルギーを蓄えていました。だからこそ、オープニングに富士山がチラッと映ったのかもしれません。△には火山のイメージがあり、同時に炎を操るバーニッシュの象徴ともなっています

反対に、□はバーニッシュに対抗する体制側の記号として出てきます。世界大炎上から30年後、プロメポリスの俯瞰映像に切り替わる場面。ビルの屋上には、無数の□マークが点在し、ビル自体も□で統一されています。

メガマックスのレスキューギアの射出口も□になっていますし、ハンドガンで瞬間凍結弾を発射したときも□の弾丸が放たれています。フォーサイト財団ビルのクレイの部屋も□のパーツで組み合わされていますし、フォーサイト財団ビル自体が□のブロックを組み合わせたような形です

このように、体制側は□の記号で統一されています。ただし、フォーサイト財団ビルの形は若干例外的な感じもします。ブロックの形自体は□なのですが、フォーサイト財団ビル全体を見てみると、△のイメージも入っていることが分かります。

これはクレイ・フォーサイトが実はバーニッシュであるということを暗喩していると推測されます。体制側でありながら、実はバーニッシュでもある、クレイの持つ矛盾がビル全体のデザインに反映されているのではないでしょうか

ちなみに、アイナとガロが凍った湖のうえでいい感じになるシーンでも□は描かれています。レンズゴーストの形が□で表現されています。BDを買ったら、時間のあるときに、チェックしてみてくださいね(笑)

さて、△と□については、すでに解説しましたが、○についてはまだ取り扱っていません。○はガロとリオが共闘する段階で発生する記号となります。

デウス博士が開発したデウス・X・マキナにガロとリオは乗り込みます。この時点で、ガロとリオは真の敵であるクレイを止めることを決意しています。

共闘することが確定した場面ですよね。だからこそ、その共闘の証であるデウス・X・マキナのフォルムは全体的に○で表現されているのです

□と△が合わさり、角が取れて一つの円になったわけです。最終形態のガロデリオンにも○の記号が盛り込まれており、テーマ性と相まって興味深いデザインとなっていました。

水と油、陰と陽、氷と炎、対極にあるものが1つの円になってつながる。この法則性のあるデザインは、太極図を思い起こさせます。プロメアには根底にこうした相反するものが融合する陰陽論的な思想があるように思います。

『プロメア』の感想② 「気持ちいい~~!!」と感じさせる自在で過剰なカメラワーク!

気持ちいい~~!!

『プロメア』を観ながら、その爽快感に酔いしれた人は大勢いるはず!

では、なぜ気持ちいいのか?

それは映像的快楽の最大値が実現されているから。と、私ならこう答えます。

では、どうのようにして、映像的快楽の最大値が実現されているのか?

さまざまな要因が考えられます。ここでは、私が気づいた点について、その回答をいくつか提示しようと思います。

滑らかさよりも、鋭さが際立つ!3D歌舞伎アニメとしての『プロメア』

3DCGと言えば、ハリウッド映画も含めて写実的なものが主流ですが、そのなかで上記でお話したような『プロメア』のポリゴン風の世界観は、非常に新鮮な印象を多くの観客に与えたと思います。

しかも、じゃあアニメ風のCGかと言えば、必ずしもそうではなく、いわゆるディズニーやピクサーで観られるような、絵の滑らかさを意図的に『プロメア』は抑えており、だからこそ、キレのある動作を描くことに成功しています。

この切れ味抜群の3Dと2Dの融合が気持ちよさを生んでいる要因の1つだと思います。滑らかというより、逆にカクカクさせることで、動きにスピード感が生まれている感じがします。

通常の滑らかな3DCGの場合、AからBへ動作が移るとき、AからBまでの動きを完全にトレースして描いています。だからこそ、途切れなく常に滑らかな動きを表現することができるわけです。

しかし、『プロメア』では、AからBへ動作が移るとき、その間の動きをすべてトレースするのではなく、あえて間の動きを省略し、一瞬にして動作から動作に移行しているように見せています。

あえての簡素化により、思いもよらない鋭さが生まれているのです

さらに、一瞬だけ人物の動きを止めて、止め絵を作っているのも切れ味を表現するのに一役買っています。ガロが見得を切るところは、その典型例でしょう。

「ガロ・ティモス様だ!」と見得を切ったとき、少しの間、絵が止まります。ほかの見得を切るシーンも同様です。決め台詞や決めポーズで絵を止めると、その絵に力強さが宿るのだと考えられます。

これは歌舞伎の大見得を切るのと似た手法で、止めることで生まれる迫力が『プロメア』にはあります。3Dと2Dを組み合わせて、こんなにも切れ味鋭い表現ができるとは、思ってもみませんでした。

まさに3D歌舞伎アニメと言えるでしょう。滑らかさより、鋭さが際立つアニメ、それが『プロメア』なのです。

映画をアトラクションにした『プロメア』のカメラワーク!

自在なカメラワークも、映像的な快楽の最大化に大きく影響しています。みなさんも、冒頭のガロとリオの闘いから、奔放なカメラワークに驚かされたのではないでしょうか。

人物への極端な寄り、と極端な引きの連続。つばぜり合いなどの白熱した近距離戦では、カメラを一気に寄せて緊迫感を出し、ビルから落ちそうなシーンではカメラを一気に引いてビルの高さを観客に理解させる。

ビルの間を飛び回るシーンでは、極端な寄りと引きだけでなく、画面全体を回転させながら、一種のアトラクションに乗っているような感覚を観客に提供する

画面を回してから、人物の表情に寄せることで、人物の表情の凄味を強調したり、ロボ同士の戦闘シーンで下からあおるように映し、巨大さや強力さを表現したり、とにかく自由奔放なカメラワーク。とくに下からのあおりは多い印象でしたね。


映画『プロメア』冒頭アクションシーン 制作:TRIGGER  5月24日〈金〉全国公開

それと、『キルラキル』でも多用されていましたが、線遠近法のような表現は何度も使われていました。手前に映る顔や拳を大きく描き、奥のものを極端に小さく描くと、手前のものが強調されます

この線遠近法の多様によって、あらゆる動きが画面からこちらに迫ってくるような迫力を持っていました。まるで3Dメガネをかけているような臨場感があったのは、この線遠近法が影響していると思われます。こうした演出は、今石監督の特徴なのかもしれませんね。

また、ガロの登場シーンで、縦の動きを使っている点も興味深かったです。射出されたガロは一気にビルを飛び越えて、しばらくしてから落ちてきます。横の動きや平面の動きは、ほかのアニメでもよく使われますが、これに縦の動きが入ったことで、縦横無尽に動き回る作品になった印象があります。

飛び過ぎてしまう演出は、ガロの無鉄砲さも表現しており、映像としての面白さと、キャラとしての面白さの両方を同時に表現することに成功しています

語の後半、ドリルの装甲でガロがリオを救出しに向かう描写がありましたが、あのシーンも縦の動きでした。物語の序盤と終盤で上下に縦の動きを入れて、動きの幅を拡張させているわけです。ドリルという発想がなんとも『天元突破グレンラガン』ぽいのは笑えますけどね(笑)

同じカットの連続やカットの切り替えが画面の熱量を上げていた!

『プロメア』では、同じカットを連続させて、画面の熱量を上げる方法が用いられています。リオが怒りをあらわにし、龍の姿になってプロメポリスを襲撃する場面を思い出してください。

リオを止めようと、ガロが炎の龍に攻撃を仕掛けます。「全然、熱くねー!」と言ってガロがしがみつき、「俺の方が何倍も熱いんだよ!」と言いながら炎の龍を凍らせます。このとき、ガロの横顔が4回くらい連続して映されていました。同じカットを繰り返すことで、気持ちの熱さを表現していると考えられます。

その後、ガロとリオがアイナの操縦する高速消防垂直離着陸機に放りこまれ、コンテナのなかで殴り合います。このときは、闘っている2人の絵と、それぞれの表情が交互に映されていました。

戦闘描写と表情のカットバックによって、単に闘っているだけでなく、互いの感情を画面上に表すことができており、激しい感情のぶつかり合いがここに表現されています

驚いたのが、シーンが移り変わるときの、フラッシュみたいな演出です。中盤以降、シーンがAからBへ移行するとき、AとBのシーンをチカチカ交互に映しながら、少しずつBのシーンへ移っていく演出が増えました。

フラッシュバックは、よく見かける手法ですが、次のシーンをフラッシュとして用いるのは興味深かったですね。事実、あのフラッシュがあったおかげで、シーンをまたぐときも、観客のテンションを継続させることができていました。

ほかにも立体的な字幕や、中途半端な色を使わない極彩色の色彩など、さまざまな要素があいまって、『プロメア』では映像的快楽の最大値が実現されています。

これまで今石監督が培ってきた技術の総決算でありながら、革新性に満ちた映像だったこともあり、『プロメア』はどこまでも観ていて気持ちのいい作品になっていました。

『プロメア』の感想③ 3つの情報を使い分けて、王道のプロットを機能させる!中島かずきの脚本術!

『プロメア』のシナリオは、かなり王道。そこまで新奇性のある展開はありません。しかしながら、中島かずきの様々な技術や、斬新なアイディアが、その王道を機能させていることも事実です。ここでは、構成やアイディアの面で優れている点を紹介しようと思います。『プロメア』は、主に3種類の情報を駆使して、構成が組まれています。

1つめが「緊急性を生む情報」、2つめが「同情を生む情報」、3つめが「秘密の情報」。これら3つを中島かずきは意識的に使っていると考えられます。どういうことなのでしょうか? 1つずつ見ていきましょう。

1.「タイムリミット」が短くなり、緊迫感が増した!

1つめの「緊急性を生む情報」ですが、これはある程度、検討がつくと思います。物語に緊迫感とスピード感を生むためには、何か緊急性のある情報を設ける必要があります。

その代表例としては「まもなく地球のマグマが爆発し、人類が滅亡する」という時間的な緊急性があげられます。マグマが爆発する前に、ワープエンジンを開発し、地球を脱出する必要がある。つまり、時間的な猶予が残されていないわけです。

しかも、物語が進行するほど、プロメアの活動が激しくなり、地球の爆発まで時間が無くなってきます。元からあった時間がどんどん少なくなっているのです。時間が少なくなればなるほど、緊迫感は増していきます。

「時間がない」ことにより、クレイの行動はどんどん強行的になっていき、ガロやリオとの対立が先鋭化していくわけです。時間制限によって人物は焦り始め、焦りによって対立も生まれやすくなります。

重要なのは元のタイムリミットが、どんどん短くなっていく点です。時間が短ければ、それだけ緊迫感は増しますよね。「タイムリミット」の設定と、「タイムリミットの短縮」による緊迫感の演出がポイントになります

また、同じ制限されているもので言えば、パルナッソス号に乗れる「乗員数」にもリミットがありました。あれが、もし「人類全員が乗れる舟」だったら、ガロやリオがクレイと対立することはなかったはずです。全員が救われるのですから。

しかし、救われる数が限られていることによって、彼らの間にイデオロギー対立が発生し、バトルに発展します。クレイは、選ばれた人間だけが生き残れるという「選民思想」の持ち主で、ガロは「すべての人間を助ける」というヒロイズムを持っています。

そんな彼らを対立させるには、救える数に制限を設けるのが妥当な方法です。「タイムリミット」と「救える人数の制限」によって、対立を生み、話を加速させ、緊迫感を持たせることができるということですね。

ちなみに、パルナッソス号はノアの箱舟をイメージしていますよね。しかも、ノアの箱舟は陸上が大洪水に飲まれてしまう話ですが、『プロメア』はその逆。炎に飲まれてしまうから逃れようとするのが『プロメア』です。このノアの箱舟を丁度ひっくり返したような発想も面白かったですね。

2.味方に敵を、敵に同情を!

2つめに物語を動かしているのが「同情を生む情報」です。もし、ガロがバーニッシュの人体実験を知らないままだったら、話はどうなっていたでしょうか?おそらく、ガロはクレイと対立することもなかったはずです。

では、なぜクレイとガロは対立することになったのか?それは、ガロがリオたちバーニッシュの現状を知り同情したからだと考えられます。話の転換点は、ガロがバーニッシュの置かれている現状を知るところにあります。


映画『プロメア』本予告 制作:TRIGGER  5月24日〈金〉全国公開

アイナといい感じになる湖のシーンのあと、ガロはバーニッシュの光を追って、とある洞窟に訪れます。ガロはそこで初めて、バーニッシュが悲惨な状況にあることを知ります。

この出来事によって、ガロとクレイの対立は決定的なものとなります。また、ガロは知りませんが、バーニッシュ収容施設での過酷な現状を観客は目の当たりにしており、ガロ以上に観客はバーニッシュに対する同情を抱くようになっています。

反対に、フリーズフォースをはじめとする体制側の人間については非道な面を中心に描いていくことで、味方に対して「反感」を持ち、敵に対して「同情」を感じるようになります

これによって、観客の心を体制側からバーニッシュ側に寄せながら、同時にキャラの協力関係や対立関係をシフトすることに成功しています

人間関係を変化させようとするとき、「同情を生む情報」は重要です。同情は協力を発生させます。同時に「同情」できる情報のなかに、味方への不信感を生む情報を入れておくと、話が急展開していきます。『プロメア』はこの両方の情報を詰め込むことに成功しているわけですね。

3.段階的な秘密の提示により、物語の引力を強めていた!

3つめが「秘密の情報」です。秘密や謎があると、観客はそれが気になって仕方がなくなります。秘密の力は、『プロメア』でも存分に発揮されていました。しかも、その秘密が1つや2つではなく、たくさん用意されており、段階的に明かされていく辺りが見事でした。

「バーニッシュの人体実験」、「パルナッソス計画」、「プロメアが宇宙生命体だったこと」、「クレイがガロを助けたのは成り行きだったこと」、「クレイがバーニッシュだったこと」、「プロメアは燃え足りない状態だということ」。

こうした複数の秘密を、1つずつ話の転換点に設置することにより、定期的に観客は「そうだったのか!」と驚かされます。

最後に大きな秘密が明かされるタイプの作品は多いですが、『プロメア』は20分~30分おきに1回、秘密が明かされますので、観客が最後まで飽きずに観ることができます

私も創作者の端くれとして、「最後にデカい秘密を明かしてビックリさせよう……」とか考えたりしますけど、ここまで複数の秘密を提示し、定期的に驚かせる発想は持っていませんでした。

大事なのはそれらの「秘密」が彼らの行動の変化を生むきっかけになっていることです。とくに、ガロにとってクレイの隠していた秘密は、これまでの考えや行動を変化させるものでした。

また、プロメアの正体を知ることにより、ガロとリオは共闘することを決めます。つまり、秘密の開示によって、何かしらの変化が生まれているのです

その秘密が人物や人間関係にどう変化を与えるのか?

この視点が、秘密を作るときに重要だということが分かります。誰にとって驚きの事実なのかをしっかり把握し、その情報がどんな変化を生み出すのか理解することが大切なのです。

 

ちなみに、アイナとの湖のシーンは、上記の情報を組み合わせている重層的な場面です。「アイナはアイナだ」と言われ、アイナが頬を赤らめる。アイナとガロの関係性が分かるほほえましい場面ですよね。

プロメア アイナ・アルデビット アクリルジオラマ

プロメア アイナ・アルデビット アクリルジオラマ

 

ここには「同情を生む情報」が含まれています。このシーンがないと、物語の中盤、アイナがガロを探して財団のビルに乗り込むシーンに説得力が出てきません。アイナのガロに対する特別な感情が提示されているからこそ、アイナのガロを想う気持ちに同情できるようになるのです

同時に、あの湖にはデウス博士の研究所が隠されていました。これにより、あの湖は感傷的な場面としての機能以外に、物語の重要な秘密が知れる場所にもなりました。「秘密の情報」も、あの湖にはあったわけです。

同じ場所に2つ情報を設けているのは、面白い発想だと思いました。感傷的な場面として見せられたら、ミスリードされて、それ以外の意味があるなんて普通は考えませんからね。感傷で秘密を隠す実にうまいやり方だと思いました

『プロメア』の感想④ 常にインフレ効果を使って、話を盛り上げている!

何度か申し上げているとおり『プロメア』はインフレ効果を用いている作品です。王道のやり方なのですが、あまりにも徹底されているため、その効果も異常なものとなっています。

話全体の流れとしては、リオとの闘い、炎の龍と化したリオとの闘い、クレイザーXに乗ったクレイとの闘い、バーニッシュになったクレイとの闘い、地球のコアに住み着いたプロメアを一気に燃え上がらせ、エンディング。

上記を見れば分かるように、少しずつ闘う相手が強くなっています。これが、インフレ効果を生んで、観客も徐々に興奮していくわけです。

日常から始まり、少しずつ話が大きくなっていく展開は、『天元突破グレンラガン』ぽい感じもしますし、あらゆるアニメのマナーでもあります。

ドラゴンボール』はその典型例ですし、『魔法少女まどか☆マギカ』も基本的には同じ構造です。話が少しずつ宇宙規模になっていくという一種のプロットみたいなものがあるわけです

「魔法少女まどか☆マギカ」 Ultimate Best(期間生産限定盤)

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『プロメア』は、さらに人物の登場にも、インフレ効果を使っています。バーニングレスキューが駆けつけたときに、ルチア、バリス、レミー、イグニス、アイナ、ガロと、1人ずつ字幕付きで名前が紹介されていきます。

それぞれ魅力的なキャラとして紹介されますが、最後のトリとしてガロを派手に登場させ、ほかのキャラ以上の印象を与えることに成功しています。キャラ紹介もまた徐々に盛り上げるインフレ効果を使っているわけです。

プロットレベルと、細部の両方で、段階的な盛り上げ方を取り入れていることから、作品全体の盛り上がりが異常なものとなっていると考えられます

 

ちなみに、プロメアのプロットは、別々に進んでいる話を途中で合流させる造りになっています。ガロのプロットと、リオのプロットが別々に動いていき、中盤で1つのプロットとして合流する形ですね。

簡単にまとめると、以下のようなプロットになっています。()の部分は、それぞれのシーンが持つ機能みたいなものとお考え下さい。

 

【ガロのプロット】

  1. バーニングレスキューとしてリオと闘う(日常の提示)
  2. クレイから表彰される(クレイへの信頼)
  3. 洞窟でリオと遭遇し、バーニッシュの人体実験を知る(秘密の提示にともなう変化)
  4. クレイからパルナッソス計画を聞かされる(秘密の提示にともなうクレイへの失望と落胆)
  5. 炎の龍になったリオと闘う(再起)

【リオのプロット】

  1. ガロと闘い敗北(日常の提示)
  2. バーニッシュ収容施設を脱出(同情を生む情報の提示)
  3. 洞窟でガロと再会する(同情を生む情報の提示)
  4. フリーズフォースに隠れ家を襲撃される(怒りの原因)
  5. 炎の龍になってプロメポリスを襲撃(主張の変化)

【合流後のプロット】

  1. デウス博士によってプロメアの正体とクレイの狙いを知る(秘密の提示と目的の一致)
  2. ガロとリオは協力してクレイと闘う(友情の形成)
  3. リオがクレイに捕まる(友情を作るための危機)
  4. ガロがリオを救出(さらなる友情の形成)
  5. ガロとリオが地球からプロメアを消失させる(友情の完成)

だいたいこんな感じ。

2つの立場から話を作る際は、このように、2つプロットを立てて、交互にシーンを展開しつつ、あとで目的の一致をはかり合流させると、うまくまとまるように思います

『プロメア』の感想⑤ 本能に訴えかける説明台詞が絶妙!

これは細かな話になりますが、『プロメア』は説明台詞がうまかったですね。どうしても、こういったファンタジー寄りの物語だと、その世界の説明を入れる必要があるのですが、『プロメア』はあまり説明を受けている感じがしませんでした。

基本的に、説明台詞は何かの情報と混ぜたほうが聞いてもらえます。『プロメア』はアクションシーンと混ぜたり、感傷的なシーンと混ぜたりして、説明台詞を説明ぽく見せない方法をとっています。

それと、個人的にうまいと思ったのは、ピザを食べる場面ですね。バーニングレスキューのみんなでマルゲリータピザを食べているなか、プロメポリスがどのような都市なのか、クレイがどんな活躍してきたのか、ガロがクレイをどう思っているのか、さまざまな重要事項が説明されていました。

しかし、だらだら説明されている印象は一切受けませんでした。それは、喋るキャラをタイミングよく変えたり、直後にフリーズフォースの襲撃があったり、さまざまな要因があるわけですが、一番重要なのは食事をしていることだと私は考えています

面白い映画に共通することですが、必ずと言っていいほど、食事のシーンが出てきます。ハリーポッターであれ、千と千尋の神隠しであれ、食事のシーンは描かれています。

千と千尋の神隠し (徳間アニメ絵本)

千と千尋の神隠し (徳間アニメ絵本)

 

なぜなら、食事は人間の本能的な行動だからです。欲望を刺激されたとき、人はその対象に興味を持つようになります。『プロメア』に限らず、食事中に重要な設定を話したりする作品は多いです

その背景には、本能ないし欲望を刺激するという機能があり、だからこそ、自然と説明台詞も聞くことができると考えられます。

これは食欲の話ですが、『物語シリーズ』では、性欲を刺激することによって説明台詞を聞かせています。物語シリーズってやたらとお風呂のシーンが多いじゃないですか。

お色気としての機能もありますけど、同時に説明台詞を聞いてもらうための工夫として、セクシーな描写を入れているとも言えます。「重要な説明は本能とともに」と覚えておくといいかもしれません。

『プロメア』の感想⑥ 物語を動かす弁証法と梵我一如!『プロメア』は、東西の思想がミックスされた稀有なアニメーションである!

この記事の初めに「プロメアは陰陽論かもしれない」という話はしましたが、別のとらえ方として、『プロメア』は弁証法梵我一如を使っているようにも見えます。 

弁証法とは、ご存じのとおり、ヘーゲル先生の開発した思考法みたいなもので、異なる考えのよい部分を融合させ新しい考えを作るというものです。テーゼとアンチテーゼから、それぞれ長所を抽出し、ジンテーゼという新たなアイディアないし考えを作るわけです。

 『プロメア』の話の構造は基本的に、この弁証法でできていますよねガロ(テーゼ)とリオ(アンチテーゼ)が協力し、ガロデリオン(ジンテーゼ)になって世界を救う話ですから

ヘーゲル 生きてゆく力としての弁証法 (シリーズ・哲学のエッセンス)

ヘーゲル 生きてゆく力としての弁証法 (シリーズ・哲学のエッセンス)

 

最後にガロとリオ自身が言ってましたが、「ガロの救済精神」と「リオの破壊衝動」を融合させることで、プロメアを一気に燃え上がらせ、地球のコアからプロメアを消失させることに彼らは成功しました。まさに弁証法的な解決ですよね。

と同時に、梵我一如の思想も『プロメア』には含まれているように感じました。梵我一如は、もとはバラモン教の思想で、のちにヒンドゥー教に引き継がれます。梵我一如とは、ブラフマンとアートマンが一致することを言います。

ブラフマンとは宇宙の根本原理、あるいは全ての根源のこと。そして、アートマンとは、自我のことを指します。つまり、簡単に説明すると、根源と自分が究極的につながっていることを梵我一如と言うわけです。近代のヒンドゥー教の思想家であるラーマクリシュナは、「万物同根」という表現をしており、あらゆるものはブラフマンから生まれたもので、あらゆるものはそのブラフマンとつながっており、根っこは皆同じであると説いています。

これ、プロメアとバーニッシュの関係に似ている気がしませんか?プロメアは地球のコアに住み着き、バーニッシュの精神状態とつながっています。バーニッシュが苦しめば、コアにいるプロメアも反応する。

プロメアはいわゆるバーニッシュとっての力の源ですよね。バーニッシュというアートマンが、プロメアという力の根源(ブラフマン的なもの)とつながっているわけです。自我と根源がつながる梵我一如と発想が被るんですよね。

弁証法で物語の構造を造りながら、同時に梵我一如の発想でプロメアとバーニッシュを定義づけている点も、私にとってはなかなか興味深いところでした。

『プロメア』の感想・ネタバレ考察のまとめ

疲れた……。『プロメア』の感想を書くのに、まるまる2日もかかってしまいました。けれど、それでも私が言いたいことは書ききれていません。とはいえ、いい加減に書き終えないと、キリがなくなってしまうので、このあたりで切り上げようと思います。

最後に、私が『プロメア』で感銘を受けた部分を以下にまとめておきます。

  • 「△」はバーニッシュ、「□」は体制側、「○」は協力を象徴するもので、こうした記号を背景や事物に盛り込むデザイン性に圧倒された
  • 滑らかさより鋭さにこだわった3Dと2Dの融合した表現に、3D歌舞伎アニメとしての凄さを感じた
  • 自由奔放なカメラワークによって、映画がアトラクションになった
  • フラッシュを多用して、物語のテンションを維持していた
  • 「緊急性を生む情報」、「同情を生む情報」、「秘密の情報」の3つを利用して、物語の面白さが増した
  • 物語全体の構成でインフレ効果を発生させながら、同時に人物の登場場面でもインフレ効果を使い、物語全体を盛り上げている
  • ピザを食べるなど、本能に訴えかける描写と説明台詞を混ぜることで、観客を飽きさせないで説明を聞かせることに成功している
  • ガロとリオという相反する2人を弁証法で進化させている
  • 梵我一如を使ってプロメアとバーニッシュの関係性を作っている

以上が『プロメア』を観て私が感じたことです。

『プロメア』のパンフレットの画像

『プロメア』のパンフレット

ちなみに、個人的には、プロメアを通じて、世の中に溜まっているイライラを表現している点も興味深かったです

世界大炎上の場面、満員電車でイライラしていたり、渋滞でイライラしていたりする人に、プロメアが宿っていく様子が描かれています。プロメアと人間の怒りは親和性が高いことが分かります。

その怒りの象徴たるプロメアをガロとリオが徹底的に燃え上がらせることで、消えていきました。「プロメアは燃え足りない状態」ということをリオは説明していました。

それは、私たち観客にも向けられた言葉なのかもしれません。モヤモヤした怒りなのか情熱なのか分からない感情を抱えているけれど、発散する手立てがない、だから消化不良みたくイライラが募っていく。

けれども、『プロメア』という作品を観ることによって、私たちの怒りの心は消化不良にはならず、プロメアたちと同じようにしっかり燃え切った状態になりました

リオは最後、笑っているプロメアの姿を見ていましたが、あれは、『プロメア』という映画を観ていた私たちの姿と重なります。

ガロとリオは、私たちの心のモヤモヤを晴らしてくれたのではないでしょうか。作品の世界だけでなく、鑑賞している観客まで救おうとする、そのヒロイズムに私は感動しました。

確実にBlu-rayは買うと思います。そこで、またガロやリオに会えるのが楽しみで仕方がないです!

長文でしたが、ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。って、そんな人いるのか?たぶんいない(笑)

今回のレビューはここまで!

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それでは、次回のレビューまで、さようなら~~(^^)/