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【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察!時間は解決してくれない

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の画像
©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。完

「やっぱ、真心ですかね」

フルーツタルトを作るくだりで出てきた比企谷のセリフ。ガハママに隠し味について聞かれて放った言葉ですが、ストレートに「愛情」という言葉を使わないあたりが比企谷らしくてとてもよい。空腹」→「人のおごりで食べる飯」→「真心」と、真心を言うまでに2回も迂回しており、中心を避けて言葉を選ぶ比企谷の性格がよく出ているシーンだと思います。

おそらく、比企谷は愛の告白をするときも、「好きだ」とか「愛している」とか言わないんでしょうね。何かしら別の言葉に言い換えながら、慎重に自分の感情を紡ぎ出していくのでしょう。彼は既存の言葉に頼らない人間ですからね。最終的に比企谷がどんな言葉を紡ぎ出すのか、楽しみです。

さて、そんな『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話。今回は構成面の話と、小道具や構図について語っていこうと思います。そこまで大きな発見はなかったので、今回はさらっと終わると思います。お暇な方はぜひご覧ください。

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自殺が存在しない国

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  • 作者:木島 祥尭
  • 発売日: 2020/09/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

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【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話のあらすじ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」オープニング映像

雪乃から「結衣の願いを叶えてほしい」と頼まれた比企谷は、結衣から願いを聞き出そうとする。「ヒッキーのお願いを叶えることかな」と言われ、困惑する比企谷。

後日、結衣から提案を受け、比企谷は由比ヶ浜家にて、小町の合格祝いのケーキを一緒に作ることになった。結衣の願いを一つずつかなえていきながら日々を繋いでいくことができたらと……想像する比企谷。時間は過ぎ、ついに卒業証書授与式が始まる……。

 【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察① やはり『俺ガイル』は三層構造で成り立っている

当ブログでは、何度か「俺ガイルの基本プロットは三層構造である」という話をしてきましたが、第9話を観て、やはり俺ガイルは 三層構造だなと思いました。

「二者択一から第三の選択肢の発見」というのが、俺ガイルの基本的なプロットであると私は考えています。また、『俺ガイル完』は、「プロム企画」「人間関係(三角関係)」の二つの話で構成されています。そして面白いのが、どちらも上記のような三層構造で展開している点です。

人間関係で言えば、「①雪乃を助けるか」「②雪乃を助けないか」の二つの選択肢を提示したあとに、「③雪乃と対立する」という第三の選択肢を見出しています。

プロム企画で言えば、「①雪乃の修正案が通る」「②比企谷のダミー企画が通る」かという二つの選択肢を示したあとに、「③雪乃の母を使って反対者を説得させる」という第三の選択肢を比企谷が見出していました。

いずれの場合も、三段階で話が構成されていることが分かると思います。

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前回のブログでも記載しているとおり、雪乃との関係も、プロム企画についても、いずれも三段階で話が展開しています。

そして、奉仕部の「願い」も三層構造になっています。第9話、公園で結衣が比企谷に「ヒッキーのお願いを叶えることかな」と告げ、比企谷が困惑する場面。

ここでふと思ったのが、そういえば……奉仕部の願い自体が3つ存在するということ。①雪乃の願いから始まり、②第9話では結衣の願いを叶えるタームに入り、③おそらく最後のオチとして比企谷の願いが提示されるはずです。3段階で話が組まれていることが分かります。やはり俺ガイルは三層構造で成り立っているようですね。

それがどうしたん?と思われるかもしれませんが……小説や脚本を書いている人間からすると、結構いい発見なんですよ。①と②をフリ(又はミスリード)にして、③で驚かすという基本プロットを物語全体に使うことで、かなりコントローラブルに観客を驚かすことができるわけですから。この構造は、私もマネしたいところです(笑)

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察② ブランコに乗らない比企谷

当ブログでは、コーヒーについて「大人の記号である」と説明してきました。今回も比企谷と結衣の二人が公園で話す場面にて、コーヒーが出てきましたね。

比企谷がブラックコーヒーを飲み、結衣は紅茶花伝を飲んでいました。比企谷のほうが苦い飲み物を飲んでいることから、この場面では、比企谷のほうがお兄ちゃんであると読み取ることができます。「苦いもの=大人の飲み物」と、「甘いもの=子供の飲み物」と考えると分かりやすいかもしれません。

さて、ここで重要なのが、では雪乃と中庭で話す場面で、比企谷と雪乃が何を飲んでいたのか?という点です。

第7話、比企谷は雪乃にマックスコーヒーを渡しており、比企谷も同じものを手にしていました。「同じ苦さの飲み物=対等である」という記号として読み取れます。けれど、結衣には自分のとは違う紅茶花伝を渡してしまうわけです。ここに比企谷の雪乃に対する感情と、結衣に対する感情の違いが表れています。対等なのか、お兄ちゃんと妹の関係なのかの違いですね。

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また、二人きりで話すときの座る位置からも、比企谷のスタンスの違いが分かります。まず、雪乃と中庭で話すシーンでは、比企谷は雪乃の隣に座っていました。ですが、結衣と公園で話すシーンでは、結衣がブランコに座っているとき、隣に来るよう誘われていながら、比企谷は結衣の隣ではなく、周囲の鉄柵に腰かけていました。これはブランコを楽しむ娘を見守る保護者の位置ですよね。

このように、雪乃に対して比企谷は徹底して対等な振る舞いをするものの、結衣に対してはお兄ちゃんであろうとしていることが分かります。結衣の気持ちを考えると切ないですが、結衣は比企谷から対等な存在として見られていないようですね。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察③ 時間は解決してくれない

第9話は、比企谷と結衣の現実逃避の時間だったような感じがします。

本心を言わずに何となく過ぎていく時間。あやふやな関係のまま進んでいく時間。そんな時間に、解決を一任しようとするけれど、それはまやかし。「時間が解決してくれる」などと言われることはよくあるが、奉仕部の関係について、時間は無力です。本物がないまま、偽物の関係を長引かせるくらいしか、時間にできることはないわけです。

今回の件については、比企谷が決心して、ちゃんと区切りをつける必要があります。結衣を振る形なのか、雪乃に告白する形なのか、あるいは両方なのか、いずれにしても、何かの決断が必要です。

しかし、これまで築いてきた奉仕部の関係を切ることに、比企谷も結衣も躊躇しており、その結果、第9話は偽物であることを知りながら、何とか関係を長引かせようともがいているように見えました。

時間が解決できない事柄もあるのだと、『俺ガイル』は教えてくれているようにも思えました。時間に頼るのではなく、ちゃんと意思決定しろと。

肝心なことは何も言わずにいつも通りを装って、わざと核心に触れないまま……だが、そうすることを自分に許してしまうのは、俺自身への裏切りだ」と比企谷自身が語っていましたが、比企谷もこの関係のままでいいとは考えていません。けれど同時にこの関係がどれだけ尊いものかも理解しています。「彼女の願いを一つひとつ叶えながら日々を繋いでいくことができたなら……そんなあり得ない想像をした」とも言っており、〝結衣との関係を切るべきだが切りたくない〟という比企谷の葛藤が表現されています。

1話の中で2つのシーンに分けて、比企谷の「この関係を切るべき」という感情と、「まだ切りたくない」という感情の相克を描いているわけです。

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比企谷が結衣にプレゼントしたシーンもなかなかに切ないですね。比企谷は前にもらったクッキーのお返しとして、今回作ったお菓子を渡したわけですが、ここには貸し借りの返済(清算)という意味合いが含まれているような気がします。

これから結衣との関係を切るときに、「お返しをしていなかった」という残滓、あるいは後悔を残さないために、比企谷は律儀にお菓子を渡したのだと考えられます。

こうやって関係を切るための準備をしながら、その直後のモノローグで「彼女の願いを一つひとつ叶えながら日々を繋いでいくことができたなら……」と言っているわけですから、彼がどれだけ葛藤しているのか、よくわかりますよね。二つの感情の間で迷っている比企谷の姿に、ちょっと胸が苦しくなりますね。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察のまとめ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」エンディング映像

結衣って、いろはすよりもある意味、戦略的なところがありますよね。いろはすは、〝あざとかわいい〟と言われるくらいわかりやすく誘惑してきますけど、結衣の誘い方って、特にあざとい印象はないですよね。でも、絶対に断れない誘い方をするというか……。

例えば、比企谷を家に招くときも、「小町ちゃんのために~」という比企谷が断れない理由をちゃんと付けて誘うじゃないですか。そういえば、前にショッピングモールに出かけたときも、同じような方法を使っていましたよね。「戦略的服従」のような見事な誘い方。あざとく見えないあたりが、いろはすとは違う、結衣のすごさですよねぇ。

はい、では最後に『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第9話の感想&考察をまとめておこうと思います。

  • やはり俺ガイルは三層構造で成り立っている
  • ①と②をフリ(又はミスリード)にして、③で驚かすという基本プロットを物語全体に使うことで、コントローラブルに観客を驚かすことができる
  • 雪乃にコーヒーを渡し、結衣に紅茶花伝を渡すところに、比企谷の二人に対する想いの違いが読み取れる
  • 雪乃に対して比企谷は徹底して対等な振る舞いをするものの、結衣に対してはお兄ちゃんであろうとしていることが分かる
  • 時間が解決できない事柄もあるのだと、『俺ガイル』は教えてくれている
  • 1話の中で2つのシーンに分けて、比企谷の「この関係を切るべき」という感情と、「まだ切りたくない」という感情の相克を描いている

はい、ということで、今回は短めにまとめました。

第10話もすぐに観ますので、ブログの更新お待ちくださいませ。 

それでは、次回またお会いしましょう。

さようなら~。

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