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【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の感想&考察!人間関係とプロム企画による二重のサスペンス構造

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の画像
©渡 航、小学館/やはりこの製作委員会はまちがっている。完

「待て、しかして希望せよ」 

さて、ついにあの材木座先生の登場です。『俺ガイル』のキャラのなかで、ほぼ唯一といっていいほどの生粋のギャグキャラである材木座先生。もちろん、比企谷や由比ヶ浜も笑える場面はいっぱいあるのですが、彼らの場合は掛け合いで笑わせるところがメインで、単独で「俺はお前らを笑わせるぜ」と胸を張って存在するのは材木座先生くらいではないかと、少々持ち上げ気味に思うわけです。

中二病全開の大げさな身振り手振りや物言い。にもかかわらず、かなりの人見知りという、ぼっちやオタクの性質をまさに体現した材木座の立ち振る舞いが最高なんですよね。サイゼリアに呼ばれたはいいものの、比企谷たちの場所が分からず、肩をすくめてオドオドしながらキョロキョロする様子は最高でしたねぇ。

他人の前ではオドオドするのに、比企谷たちの前ではうって変わって、偉そうに喋るちょっとした内弁慶的なところもいい感じです。

そんな材木座先生の登場が印象的だった第6話。今回は比企谷が考えるプロム企画の概要が見えてきた回でしたね。ここでは、そのプロム企画が今後どうなるのかについての考察と、これまでのストーリー構造について少し振り返って考えてみようと思います。それでは、ネタバレ全開で感想&考察をしていきます。

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自殺が存在しない国

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 【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話のあらすじ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」オープニング映像

雪ノ下雪乃(ゆきのしたゆきの)の自立を妨げずに、雪乃を助けるために、比企谷八幡(ひきがやはちまん)は、雪乃と対立するというとてつもない奇策に出る。

どちらが先にプロム企画を成立できるか?という勝負を行うことで、対立しながら、プロムを実現し、雪乃を助けようとする比企谷。

由比ヶ浜結衣(ゆいがはまゆい)は、そんな比企谷の奇策を手伝いたいと申し出る。結衣と比企谷の2人は、ファミレスで作戦会議を始める。比企谷の考えた作戦は、当て馬企画を作り、保護者側に比企谷の企画と雪乃の企画を比較させて、結果的に雪乃の企画を選ばせるというものだった。

それは「選択肢を提示されると選びたくなる」という人間の性質を利用した見事なプランだったが、比企谷たちには当て馬企画を作り、そして、それを本格的に見せるために必要な人員が足りなかった。

助けを借りるため、比企谷は材木座義輝(ざいもくざよしてる)戸塚彩加(とつかさいか)川崎沙希(かわさきさき)を呼び出す。集まった面々に、人員が必要との話を告げると、意外にも、材木座が「人を用意する」と言って立ち上がるのであった……。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の感想&考察① 人間関係とプロム企画による二重のサスペンス構造

「次どうなるか分からない」「ハラハラドキドキする」と感じる現象を、サスペンス効果と言ったりしますが、『俺ガイル』はこのサスペンス効果を巧みに利用している印象があります。

サスペンスと言えば、例えば、追いかける殺人鬼と、追われる主人公をカットバックさせて、主人公は助かるのか?とドキドキさせるようなものが一般的かもしれませんね。ここから分かるとおり、サスペンスの利点は、今後の展開に対する「ヒキ」を作るところにあります。「次どうなるの?」と思わせる効果ですね。

巧みに組まれた二重のサスペンス構造

『俺ガイル完』の場合は、「次どうなるの?」と感じさせる要素が1つではなく、2つで構成されています。

1つが比企谷たち奉仕部の人間関係に関するサスペンス。三角関係的なサスペンスと言ってもいいかもしれません。もう1つが、プロム企画に関するサスペンスです。

比企谷たちの三角関係にしても、「これからどうなるの?」と常にヒキを作っており、プロム企画についても、「ちゃんと開催されるの?」とか「比企谷と雪乃のどっちの企画が勝つんだろう?」みたいなヒキを作っています。ハラハラドキドキさせる要素が、二重に組まれているわけです。

しかも、巧みなのは、三角関係→プロム企画→三角関係→プロム企画→三角関係といった具合に、交互にシーンを展開させている点です。

これにより、三角関係について何かのヒキを作った後に、プロム企画のシーンに移り、プロム企画でのヒキを作った後に、三角関係に移るという形で、常にヒキを持たせた状態で、次のシーンへ移ることができます。どうなるの?で次のシーン、どうなるの?で次のシーン……このヒキのループに閉じ込める二重のサスペンス構造により、観客は次のシーンを見ずにはいられなくなるわけです。三角関係とプロム企画のサンドウィッチ構造と言ってもいいでしょう。

例えば、「プロムが中止になるらしい」という話を聞いた比企谷が、雪乃を助けるために走り出す場面。「プロム中止」のヒキを作りつつ、比企谷の前で結衣が涙を流す様子を描き、「プロムのヒキ」と「三角関係のヒキ」を成立させていることが分かると思います。

雪乃のもとへ向かった比企谷が対立を宣言する場面では、比企谷のモノローグで何か秘策があるかのような呟きがあり、その後に雪乃との対立を宣言します。このシーンも「プロムのヒキ」と「三角関係のヒキ」がサンドウィッチ構造で展開しているのです。

プロム企画がやたらと緊張感を持つ理由

プロム企画を物語の中に持ち込むタイミングも見事だったと思います。第1話でまず奉仕部の関係性について、陽乃からの指摘があり、奉仕部の面々は問題点を自覚します。その後、第2話以降に、プロム企画が持ち込まれ、第1話で自覚した問題点と絡む形で比企谷たちはプロム企画へ参加することになります。

プロムの成功するしないに、彼らの関係性がどうなるのかが関係してくるため、これまでの依頼とは違い、他人事ではなく自分事としてかかわる必要が出てきました。

そのため、プロム企画の展開が、ハラハラドキドキして見えるのです。企画の成功に、彼らの関係性とパーソナリティーが乗っかっているわけですからね。

そして、それは第1話と第2話にかけての陽乃からの指摘があったからこそ、成立したものだと思います。彼らが問題点を把握しないままだったら、あくまでも他人事として手伝っていた可能性が高いでしょう。しかし、問題を認識したおかげで自分事として取り組む緊張感が生まれたのだと考えられます。

内的動機のズレによって生まれる文学性

二重のサスペンス構造という面でも優れているのですが、内的動機を対立させるという変わった手法を用いている点にも注目です。

これは、よくできた物語に共通している要素ですが、物語において人物は主に以下の4つの要素に影響を受けて行動しています。

  • 外的動機:人物の具体的な目的(プロム企画の成功)
  • 外的支障:人物の具体的な目的を阻害する要素(雪乃母によるプロム中止の提案)
  • 内的動機:人物の内面における目的(自立したい・好きと伝えたい)
  • 内的支障:人物の内面における目的を阻害する要素(頼りたい・譲りたい)

今回は雪乃を例に、4つの要素を抜き出してみました。

人物それぞれが、これら4つの要素を持っており、これらが対立することで、物語はドラマチックな展開になります。

雪乃は外的動機であるプロム企画の成功に、自立したいという内的動機を乗っけています。けれども、比企谷は同じくプロム企画の成功という外的動機を持っているものの、内的動機が異なります。

比企谷の内的動機は「雪乃を助けたい」です。しかし、雪乃の内的動機は「自立したい」なので、比企谷の内的動機と相反することになります。この内的動機のズレにより、彼らの関係は複雑になり、簡単には解決できないドラマチックな展開となるわけです。

内的動機を対立させる。これが、『俺ガイル』のある種の文学性を生んでいる原因かもしれません。

分かりやすい話の場合、外的動機を対立させるケースがほとんどです。例えば、世界征服という外的動機を果たしたい悪者と、世界を守りたいという外的動機を持つヒーローのように。

けれども、『俺ガイル』のように、内的動機のズレにフォーカスすれば、分かりやすい展開にはなりませんが、その一方で、それぞれの内面(心)の揺れを中心に描くことができ、通常よりも文学性の高い作品として成立させることができます。

おそらく作り手は、外的動機の対立よりも、内的動機の対立のほうが、人物の内面を丁寧に描くことができ、同時に対立構造によるドラマ性が確保できることを理解しているのではないかと、私なんかは思うわけです。

第6話までの流れや構造を振り返ってみると、やはり『俺ガイル』は、かなりコントロールのきいた作品だということが分かりますね。というか、「わかりやすい話を作る気はありません。人間を描きたいんです」といった感じの気概すら感じます。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の感想&考察② 比企谷の企画は本当に負けるのか?

第6話で比企谷は、「当て馬企画を作って、最終的に雪乃の企画を成立させる」という奇策について説明していましたが、私がちょっと疑問に思うのは、比企谷の企画は本当に負けるのだろうか?という点です。

比企谷はそれっぽい企画を作りながら、最終的に雪乃へ勝利を譲るつもりでいるみたいですが、果たして本当にそういう展開になるのでしょうか?

というのも、これまでの『俺ガイル』のストーリー構造から考えて、比企谷が負けるという展開は考えづらいと思うのです。

普通に考えれば、今後の展開は「比企谷の企画が成立する」か「雪乃の企画が成立する」という2つしか基本的にはあり得ないでしょう。

ただし、これまでのストーリー構造を考えてみると、この単純な二者択一で終わるようにはどうしても思えないところがあります。これまで比企谷は何かの問題に直面したとき、AかBのどちらしかないという二者択一の選択肢を前にして、誰も予想しないようなCプランをぶつけて、問題の解決を図ってきました。

今回も「雪乃を助けるか」「雪乃を助けないか」の二者択一に対して、比企谷は「雪乃と対立する」という第三の選択肢を見出していました。

なぜ『俺ガイル』は展開が読めないのかといえば、二者択一のどちらしか解決策はないと思わせて(ミスリードして)、第三の選択肢を隠しているからです。そして、その第三の選択肢を比企谷が見つけるからこそ、比企谷が魅力的に見えるわけです。

この「二者択一から第三の選択肢の発見」というストーリー構造が基本の『俺ガイル』が、このまま「勝つか負けるか」という単純な展開になるとは思えないのです。

では、どうなるのか?という話なのですが、これは私の妄想ですけど、おそらく「比企谷の企画が成立する」のではないかと思います。しかも、それは雪乃のおかげで成立するような気がします。つまり、比企谷がやろうとしていることを雪乃が予想し、先回りして比企谷の企画が成立する方向へ導く可能性があります。要は、雪乃の企画が当て馬企画になるということです。

雪乃は「自立したい」と考えているわけで、比企谷の当て馬企画で、自分の企画が成立しても、それは本来的な意味において、自分で達成したことにはなりません。

対立という形式をとったとしても、あくまでも比企谷の助けを得て成立したものになってしまうでしょう。これまでの比企谷の自己犠牲的なやり方をよく知っている雪乃なら、比企谷が当て馬企画で自分の企画を犠牲にするやり方で、自分を助けようとしていることは、何となく想像がつくのではないでしょうか。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。12 (ガガガ文庫)
 

比企谷の戦略に乗ってしまうと、これまでと同じく、比企谷に頼る展開になってしまうので、この一方的に頼る関係をひっくり返す必要があります。そこで、雪乃はむしろ「比企谷の企画を助ける」という行動に出るのではないかと予想されます。

比企谷のおかげで助かる状態から、雪乃のおかげで比企谷が助かる状態へ関係性をひっくり返すことで、本来的な意味で雪乃は自立できる(対等になる)ような気がします。

そうすれば、勝負には負けますが、ヒーローに助けられるヒロインではなくなります。前の記事でも解説しましたが、『俺ガイル』にはアンチヒロイズムの考え方があるので、ヒーローとヒロインの関係が逆転する可能性もあるかなと思うのです。

これなら、単純な勝負の勝ち負けに終わらず、第三の答えとして「自立する」という結果が表れるはずです。

細かい展開は分かりませんが、いずれにしても、ストーリー構造から考えて単純な勝敗で終わるとは思えませんし、比企谷の思惑がそのまま成立するとも考えづらいですね。

むしろ、比企谷が第三の選択肢で周りを驚かせたように、雪乃が新たな答えを出して比企谷を驚かせるという反転が起こるのではないかと考えられます。

そこまでして初めて、雪乃は比企谷から真に自立することができ、共依存から抜け出し、おあいこの立場で、対等な立場で、比企谷と向き合い、自身の気持ちをぶつけることができるのではないでしょうか。まぁ、私の考えすぎかもしれませんがね。

比企谷のプランを超える何かが出てくる可能性も想定しつつ、第7話以降を見ていくと面白いかもしれません。

【俺ガイル 完】『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の感想&考察のまとめ


「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」エンディング映像

第6話を観て少し気になったのは、小町と比企谷が会話する場面。比企谷は小町に卒業のイベントについて質問し、小町の発言を携帯にメモしています。

私の読みですが、あれはおそらく、伏線として後で機能するものと推察されます。少なくとも、私が書き手ならそうします。というのも、基本的に全く物語と無関係の場面を描くことは考えづらく、書き手は常に何らかの意図を持ってシーンを描いているはずですから。

しかも、テレビアニメという尺が限られている媒体の場合、余計なシーンを描く余裕はないはずです。さらに言えば、小町との食事ですき焼きか何かをよそってもらうシーンがあったと思います。小町は2つの器を差し出して、「どっちがいい?」と聞いてきます。この場面は、後ほどの結衣とファミレスで当て馬企画について話すときの伏線になっています。「二者択一を迫られると選んでしまう」という人間の性質を使った比企谷のプランを、食事のシーンでさりげなく提示しているわけです。

小町とのシーンですでに、こうした伏線が使われているため、メモする場面も同様に、伏線として機能する可能性が考えられます。

はい。では、こんなところにして、最後に『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』第6話の感想&考察のまとめをしておこうと思います。

  • 人間関係とプロム企画による二重のサスペンス構造が組まれている
  • プロム企画の成功に、奉仕部の面々の関係性やパーソナリティーの問題がかかわっているため、他人事ではなく自分事としての緊張感がある
  • 「自立したい」という雪乃の内的動機と、「雪乃を助けたい」という比企谷の内的動機が対立している
  • 内的動機のズレを設定することで、内面(心)の揺れを中心に描くことができ、通常よりも文学性の高い作品として成立している
  • 『俺ガイル』は外的動機よりも内的動機を重視している
  • なぜ『俺ガイル』は展開が読めないのかといえば、事前に提示した二者択一でミスリードを誘い、第三の選択肢の存在を隠しているから
  • 「二者択一から第三の選択肢の発見」というストーリー構造が基本の『俺ガイル』が、このまま「勝つか負けるか」という単純な展開になるとは思えない
  • 比企谷が負けるのではなく、雪乃の助けにより比企谷が勝つのではないか?
  • 比企谷のおかげで助かる状態から、雪乃のおかげで比企谷が助かる状態へ関係性をひっくり返すことで、本来的な意味で雪乃は自立する

はい、長くなりましたが、第6話の感想&考察はこんなところです。

更新が遅れていて、すみません。。

第7話の記事も近日公開予定ですので、そちらもご覧いただければ幸いです。

それでは、次回またお会いしましょう。

さようなら~~。

↓幻冬舎より私の小説『自殺が存在しない国』が発売されました!ぜひご覧ください!

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