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『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の感想(ネタバレ)!宜野座と霜月が潜在犯の楽園<サンクチュアリ>の闇を暴く!

先日、1月25日(金)の公開初日に『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』を観てきました。仕事帰りだったので、レイトショーを観てきたのですが、あまりの盛況ぶりに驚きましたよ。

 20時という遅い時間にもかかわらず、劇場はほぼ満員御礼状態。これは私にとって完全なる誤算で、上映10分前くらいにチケットを購入しようとしたら、もう前席2列しか空いていないという、少し残念な状況に陥ってしまいましたよ。

まぁ、私の大好きな『サイコパス』がこれだけ人気というのは、それだけで十二分すぎるほどに嬉しいんですけどね……とはいえ、もう少しよいコンディションで観たかったという願望もないことはないですね。。

しかも、続けざまに驚いたのが、お客さんがほとんど女性だったこと。劇場の8割は若い女性で、あとは私のようにオタク丸出しの1人客か、オジサンでした。なぜそんなに女性客が多いのだろうか?と不思議だったのですが、映画が終わった後、お客さんのこぼれ話を聞いていると、「ギノくんがカッコよかった!」のように、「ギノくん」という単語がたくさん出てきて、なるほど、そういうことかと妙に納得した次第です。

要するに、第2期以降すっかりイケメンになった宜野座執行官を愛でるために、皆さん来ていた模様です。上映後、大きなタペストリーの前ではギノくんを撮ろうと女性ファンが押しかけており、かなりの人気ぶりで、私もなかなか写真を撮れずに苦労しました。。

【チラシ付き 映画パンフレット】PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」の画像
(C)サイコパス製作委員会

さて、そんな人気絶頂のサイコパス。2012年に第1期テレビシリーズがスタートしてから、2014年の第2期、そして2015年の狡噛慎也が登場する劇場版と続いて、今回はなんと劇場版3部作の3ヶ月連続公開!

攻殻機動隊やガンダムシリーズのように、続編がどんどん作られるだろうなとは思っていましたが、まさか、3部作とは……驚きましたよ。期待値や人気の高さを窺い知ることができますね。

とくに前作の劇場版はすさまじい出来で、私も久々に「映画観たぜ!」という気分になったことを覚えています。サイコパス独特の悪役における思想や、 哲学性がぶつかるバトルシーンなどなど……。これはこれで、改めて観返そうかなという気になっています。

今作はシャンバラフロート事件の1年後が描かれています。私はてっきりマルチバース的な感じかなと思っていたのですが、今回の映画はしっかり、これまでのサイコパスシリーズの時間軸で展開されていました。よく同じ世界線で新しい話が作れたなぁとは思ったのですが、やはり、前作で海外へ話の舞台を動かしたことにより、サイコパスシリーズのお話としての幅が一気に広範囲へ展開した印象があります。

上映時間は60分と短めでしたが、かなりテーマをギュッと詰め込んだ感じがしました。今回はその点も含めて、私の感想をいろいろ書いていこうと思います。いつもは、ポジティブなレビューだけなのですが、すみません……。サイコパスシリーズに関しては、かなり思い入れがあるので、若干批判的な内容が入ります。批判的な見出しに関しては、「問題点」というような形で記載しています。もし、そういった内容を見たくないという場合は、「魅力」の部分まで読んでみてくださいね。


『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』 予告編

では、ネタバレ全開で今回も感想書いていきます!

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の基本情報

☆スタッフ

  • ストーリー原案・監督:塩谷直義
  • 脚本:吉上亮
  • 総作画監督:中村悟
  • 作画監督:新里量太、諸貫哲朗、中村悟、古川良太、鈴木俊二、森田史
  • 演出:黒川智之、下司泰弘
  • 撮影監督:荒井栄児
  • 3D:サブリメイション
  • 色彩設計:上野詠美子
  • 美術監督:草森秀一
  • 音響監督:岩浪美和
  • 音楽:菅野祐悟
  • キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部恒
  • シリーズ原案:虚淵玄
  • キャラクター原案:天野明
  • アニメーション制作:Production I.G

☆キャスト

  • 宜野座伸元:野島健児
  • 霜月美佳:佐倉綾音
  • 夜坂泉:弓場沙織
  • 久々利武弥:平井祥恵
  • 辻飼羌香:岡寛恵
  • 松来ロジオン:小山力也
  • 玄沢愛子:斉藤貴美子
  • 能登耕二:多田野曜平
  • 烏間明:中川慶一
  • 常守朱:花澤香菜
  • 須郷徹平:東地宏樹
  • 雛河翔:櫻井孝宏
  • 六合塚弥生:伊藤静
  • 唐之杜志恩:沢城みゆき

(C)サイコパス製作委員会

(HPより抜粋:公式サイトhttps://psycho-pass.com/staffcast/case1.php

☆配給

  • 東宝映像事業部

(引用元:https://www.toho.co.jp/movie/ods/ppss02.html

☆あらすじ

2117年冬、公安局ビルに一台の暴走車両が突入する事件が発生。その運転手は青森にある潜在犯隔離施設 〈サンクチュアリ〉の心理カウンセラー・夜坂泉だった。しかし取調べ直前に夜坂の即時送還が決定する。監視官の霜月美佳は、執行官・宜野座伸元らとともに夜坂送還のため青森へ向かう。そこで待っていたのは、〈偽りの楽園〉だった。(HPより抜粋:公式サイトhttps://psycho-pass.com/story/

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の魅力① 吉上亮と塩谷直義による緻密な脚本

PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』を観終わって私が感じたのは、構成のレベルの高さです。今作『Case.1 罪と罰』の脚本を担当したのは、サイコパスシリーズのスピンオフ小説を担当されている吉上亮さん。日本SF作家クラブや日本推理作家協会に所属している小説家であり、脚本家としては今作がデビュー作。

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

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吉上さんが小説に近い形式で書き上げた脚本を、塩谷直義監督が絵コンテ用に改稿する形で最終稿を完成させたようです。脚本家と密に話し合って制作されたことが、物語の構成におけるレベルの高さからひしひしと感じられました。

『Case.1 罪と罰』についてまず念頭に置いて頂きたいのが、60分という上映時間の制約です。私も脚本を書いたりしているので、なんとなく肌感覚で分かるのですが、60分で複数の謎を提示して、感情移入させながら、謎を回収していき、同時にアクションシーンで盛り上げるというのは、なかなか大変です。

2時間くらい尺があれば、のびのびと書けたりするものですが、その点今作はかなりタイト。しかし、鑑賞された方々はお分かりのように、「複数の謎の提示」、「キャラクターへの感情移入」、「謎の回収」、そして「アクションシーン」これらのすべてが過不足なく詰まっていました。

物語の冒頭、八坂泉の乗った車が公安局ビルに突入する事件が発生。現場に出ていた霜月、宜野座、六合塚の3人は、車外から出てきた八坂泉の行動に困惑する。八坂はボロボロになったメモリーキューブを掲げて、3人に助けを求める。霜月は「わけがわからない」と当惑する。

アクションシーンから始まり、なおかつ、そこには「謎」が含まれているわけです。この時点で、観客は興味を持たざるを得ない状況になる。これは「張り手型」と呼ばれる物語の形式であり、観客を惹きつける上での効果的な手法でもあります。『子連れ狼』で有名な小池一夫先生も「冒頭は裸の女が銀座の街を走っている」ような強烈なシーンを描くべきと語っています。

『Case1.罪と罰』では、さすがに裸の女は走っていませんが、暴走する車が登場し、観客の目はくぎ付けにされ、しかも、謎のメモリーキューブまで飛び出すことで、物語のひきを作ることに成功している見事な冒頭です。

まぁ、何かが走っているというのはそれだけで気になるものなのですよ。ほら、よく恋愛映画とかのCMで、主題歌が流れるのと同時に主人公かヒロインが走り出すシーンをよく観ますよね。疾走はそれだけ、人を惹きつける効果的な演出方法なのですよ。

さて、物語は進み、禾生局長から霜月と常守が呼び出されるシーン。唐突な八坂泉の即時送還命令。戸惑う2人が局長室を出ていくのと入れ替わりで入ってくる烏間明。「誰?」と思った方も少なくないはず。ここでもまた「謎」を提示しているわけですね。

しかし、どういうわけか観客として見ていた私は、黒幕である烏間について、このシーンでは全く関心を払うことができませんでした。なぜなら、霜月も常守もエレベーターに乗った途端、事件の話を始めていたからです。

そのため、観客の私たちは、烏間への関心を逸らされてしまったわけです。いわゆるミスリードというやつですね。犯人を登場させながらも、犯人であると思わせないための仕掛けがされていたということです。いやはや、お見事!

霜月、宜野座、六合塚の3人が、八坂を送還するためにサンクチュアリへヘリで移動するシーンも見事でした。特別行政区サンクチュアリが、どういう施設なのか、どういう更生プログラムがおこなわれているのか、こうした物語を理解する上で最低限知っておくべき基本情報を六合塚が説明している。説明台詞のシーン。

こういう説明台詞って、長々してしまい、観客の飽きがくるポイントでもあるのですが、サンクチュアリの墓地の映像を見た八坂が錯乱し始めるという描写を盛り込むことで、単なる説明台詞のシーンではなく新たな「謎(あるいは伏線)」を提示するシーンにもなっていました。

説明台詞に謎を混入させることによって、観客の飽きを回避することができますし、何より、60分という短時間の中に効率よく説明と謎を盛り込むことが可能となります。「説明台詞×謎」このメソッドは、私も真似させて頂こうかなと思います(笑)

サンクチュアリに到着した霜月たちは、レアメタルの採掘場に向かう潜在犯を目撃する。「同行したい」と申し出る霜月の提案は却下され、何かが地下に隠されていることが暗示される。ここでは「秘密」が提示されています。謎や秘密は、物語の求心力になってくれます。実際、この秘密は最後のほうで、辻飼を追い詰める材料になるわけですからね。

そして、物語が佳境をむかえ、八坂と久々利武弥を助け出すシーン。宜野座&久々利、霜月&八坂というペアで別々に行動を始める。宜野座は久々利と対話する中で、久々利の不安定な心を安心させ、サイコパスが安定したところで、メモリーキューブの鍵が解除され、八坂の告発メッセージを聞くことになる。

八坂が公安局ビルに突っ込んだ理由や、精神障害になってしまった理由、さらには、サンクチュアリの恐ろしさが暴かれることになる。このシーンの面白いところは、冒頭で提示された「謎」を回収しながらも、「サンクチュアリには何か秘密がある」という新たなる秘密や謎の提示も同時におこなっている点です。謎を回収しただけではないので、このシーンがしっかり、次の行動の動機として成立しています。無駄のない優れた仕掛けだなと改めて思いました。

あらゆる謎が明らかになっていくなか、ロジオンと宜野座のアクションシーンが始まる。さらに、霜月がサンクチュアリの秘密を暴露したあと、暴走した潜在犯たちが追いかけてくるアクションシーンも用意されている。アクションにつぐアクションで、お話はどんどん盛り上がっていく。

潜在犯に追い詰められて、もうどうしようもないというタイミングで現れる、常守たち。これは、前の劇場版と逆の構図ですよね。2015年の劇場版では最後のほうでドヤ顔で霜月が常守を助けに来ていたと思いますが、今回は霜月を常守が助けにくるという構図にチェンジしていました。逆にしている点は、なかなか面白かったです。

 

劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス Blu-ray Standard Edition

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また、全体としては、視点を分割するのが、今作『Case.1 罪と罰』の特徴だったかなと思います。サンクチュアリで捜査する霜月たちの視点。そして、東京で捜査する常守たちの視点。さらには、霜月と八坂の視点、宜野座と久々利の視点。といった感じで、キャラを別行動させることで、シーンが頻繁に変わり、飽きない工夫がされていましたし、事件の複雑さを演出することにも成功していました。もっと言えば、この構成によって、すべてのキャラクターが活躍することもできました。

このように『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』は、様々な技法を使って綿密に組み上げられた脚本になっているのです。

まとめると、

  1. アクションシーン×謎
  2. 説明台詞×謎
  3. 謎が解けることによって新たな謎を発生させる
  4. キャラの視点変化によってテンポを良くする

以上のような点が『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』における構成上の優れた点だと考えられます。いやはや、創作活動している人間としては、学びが多くてうれしい作品ですよ。今回見つけたメソッドを、作品を書く際に有効活用しようと思います!

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の魅力② 潜在犯を嫌悪した2人の成長物語

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の来場者特典の画像

※来場者特典(宜野座&霜月)

いや、ついつい構成について語りすぎてしまいました。「なげーよ」と思ったそこのあなた、そうその通り!本当に申し訳ございません。長いですよね、すみません。ちなみに、上記の見出しで語り切れていなかったのが「キャラクターへの感情移入」についてです。60分という短い時間で、きちんとこの点も描かれていました。ここでは、こうした感情移入のポイントについてお話しようと思います。

感情移入できた点としては、やはり、宜野座と霜月の成長でしょう。塩谷監督も語られていますが、今作は「潜在犯を嫌悪してきた2人が潜在犯を助ける」というところが、重要なポイントとなっています。

宜野座は、自分の父が潜在犯だったという経験から潜在犯に嫌悪感を持っている。そして、霜月はかつて親友が殺された経験から潜在犯を嫌悪している。潜在犯に対して嫌悪感を持ったこの2人が、八坂泉という潜在犯を助ける構図になっているのが今作でした。

シビュラシステムに従いながらも、シビュラシステムの奴隷になることを否定した霜月の成長! 

 

PSYCHO-PASS サイコパス 2 霜月美佳 つままれストラップ

PSYCHO-PASS サイコパス 2 霜月美佳 つままれストラップ

 

 物語の冒頭、八坂が車で公安局に突入するシーンで、霜月は「潜在犯に容赦する必要はない」と言い切っています。「潜在犯は全員裁かれるべき」という強迫観念を感じる部分でした。しかし、八坂泉と久々利武弥の関係性を知り、八坂の久々利を守りたい気持ちに感化された霜月は、物語の後半、2人を助けようと決意する。「潜在犯は例外なく裁かれるべき」という態度だった冒頭のシーンとは、違う結論を導き出しているわけです。

そして、ここにはシステムによる意志が介在していません。これまでの霜月は「正義」を主張する割に、システムに隷属している節がありました。システムが言うことは正しいという考えが根底にあったんです。けれども、今回の霜月は少し違います。霜月はサンクチュアリのシステムに対し反旗を翻し、八坂を自分の意志で救おうとしています。ここが彼女の大きな成長だと思います。

「システムが言っているから」ではなく、「自分が助けたいから」という自分の気持ちを軸にして行動しているのです。サイコパスシリーズでは、人間の意志をテーマにしていることがよくあります。槙島が問いかけていたのもまさにその部分でした。自分で判断することの重要性がサイコパスでは語られているのです。霜月は、自分の意志を獲得し、人として成長したのです。

ただ、水を差すようであれなんですけど。霜月の面白いのは、あくまでもシビュラシステムには従う点なんですよ。後半、逃げ惑う辻飼を霜月がドミネーターで粉々にするシーン。ここでは「正しいかどうかは、シビュラが決めること」みたいなセリフを言いながら、躊躇なく引き金を引いています。

結局、霜月はシビュラシステムには抗わないんですよね。完全なる意志を獲得したわけではない点が面白かった、というか、リアルでした。実に彼女らしい判断だったと思います。これが狡噛だったら、ドミネーター(=シビュラシステム)を捨てて、拳銃を手にしたと思いますが、霜月はあくまでもシビュラシステムを切り捨てるほどの強固な意志はないわけですね。

PROPLICA ドミネーター

PROPLICA ドミネーター

 

ただし、単にシビュラシステムに隷属して終わってない点が、今作の面白い部分でした。烏間が黒幕であることが判明し、最後の最後、霜月は烏間をひっぱたきます。烏間=シビュラシステムですから、これはつまり、霜月はシビュラシステムをビンタしたことになるわけです。

霜月はこれまで単にシビュラシステムを信奉するだけの存在だったのですが、このビンタのシーンによって、一皮むけた印象があります。シビュラシステムをビンタしたのは、紛れもなく霜月の意志だったわけですしね。「シビュラシステムは必要だから利用するけれども、完全に支配されるわけではない」という霜月の新たな考え方が垣間見えたように思いました。単純な「シビュラシステム=正義」という倫理観を1つ乗り越えて、自分なりの正義を獲得したような印象があります。

また、もう1つ面白かったのは、霜月がサンクチュアリのシステムをシビュラシステムで否定したという点です。システムをシステムで裁くという非常に興味深い構図となっていました。人が人を裁くのではなく、システムがシステムを裁くという機械仕掛けの捕物帳といった感じで、今まであまり見たことのないタイプの展開になっていたなぁとひどく感心しました。

イケメン×肉体派×包容力を獲得した宜野座の執行官としての成長!

劇場版PSYCHO-PASS サイコパス デカキーホルダー 宜野座伸元

劇場版PSYCHO-PASS サイコパス デカキーホルダー 宜野座伸元

 

 さて、今度は宜野座の成長についてですが、これはこれで面白いものがありました。私としては、宜野座の父親的な姿が印象に残っています。霜月を支える先輩でありながら、年上の余裕みたいなものも感じられました。霜月は暴走しがちだから、俺が支えてやらないと……みたいな、第1期からは考えられないほど、落ち着いた宜野座の大人な姿に女性ファンの皆さんは虜になったのではないでしょうか。

年上のイメージは霜月との関係だけでなく、久々利との関係にも表れていましたよね。久々利と宜野座がサンクチュアリの追っ手から逃げいているシーン。「自分は何もできない」と悲嘆する久々利を、宜野座は優しく励ます。

久々利を背負っている描写や、宜野座を見上げるような構図など、そこかしこに、父と子の象徴が散りばめられていました。父の 征陸と同じようなコートを着ているなど、今作には宜野座の父親に対する憧れが描かれていたように思います。もう、ただでさえ、第2期以降イケメンになり、バトルができる肉体派にもなった宜野座執行官が、今度は父親としての包容力みたいなものまで獲得しつつあるわけです。これは、人気が出るわけだ……。

それ以外にも、「執行官としてどうあるべきか?」という悩みを抱えながら闘っている点も面白かったです。サンクチュアリのロジオンという元執行官との対立に、こうしたテーマが描かれていました。

霜月に従っている宜野座の姿を見て、ロジオンは「まるで可愛い飼い犬だな」とか揶揄していました。ロジオンは「人間はもっと自分に正直に生きるべき」と考えているため、宜野座のような生き方が理解できない。ロジオンから見ると、宜野座は自分の意志で動いていないように見えるわけですね。

たしかに、宜野座はシビュラシステムや霜月の下で行動しているわけですから、支配されているようにも見えます。しかし、宜野座は自分の意志で執行官になることを認めたわけですし、霜月や常守の下につくことを不自由なことだとは考えていません。

映画の終盤、宜野座はぼそっと「俺はお前たちの猟犬でよかった」みたいなことを言ってましたよね。つまり、宜野座は、自分の意志で霜月や常守の猟犬となって仕事をしているわけです。潜在犯(悪)と執行官(善)との間、自由と不自由との間に立たされながらも、宜野座は自分の明確な意志を持つことができた、この点が宜野座の成長として印象深かったです。

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の魅力③ 潜在犯の楽園<サンクチュアリ>の設定が面白い

厚生省と経済省の合弁事業として創設された特別行政区サンクチュアリ。雪に覆われた真白なドーム、そこに集められた潜在犯たちは、独自の更生プログラムによってサイコパスをクリアに保っていた……。

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』で、興味深かった1つが、このサンクチュアリの設定です。サイコパスと言えば、「システム」ですが、サンクチュアリのシステムもなかなか興味深いものでした。

更生プログラムを受けることで、潜在犯はサイコパスをクリアにしているというのは建前。実際は、辻飼たち管理者が催眠療法と薬物治療によって潜在犯を洗脳し、集団思考に陥らせることで、サイコパスを強制的にクリアにしていた。

この「集団思考がサイコパスの安定につながる」という発想が示唆に富んでいました。集団思考に陥るということは、すなわち思考停止することでもあります。私たちも日常生活のなかでやってしまいがちですが、考えるのが面倒だと、つい「みんなが言ってるから」といった具合に、自分で判断することを放棄し、どこにいる誰なのかも分からない「みんな」という漠然とした存在に判断を委ねてしまっていることがあります。

みんなと同じ考えになることで安心することは可能なのですが、集団思考に陥ると自分で物事の良い悪いを判断できなくなってしまうのです。

哲学者のパスカルは『パンセ』の中で「人間は考える葦である」と語っています。「葦」とはイネ科の植物のこと。「人間は葦のようにか弱い存在だけれども、人間には考えるという特性がある。考えることこそ、人間を人間たらしめる重要な要素のはずだ」とパスカルは述べているわけです。サイコパスでもこの考え方は採用されていますよね。槙島が社会に問いかけているのは、まさにこの部分。考えるのを放棄したら、それって人間じゃないでしょ?というメッセージがあるのです。

とはいえ、考えることによる苦悩や苦痛はあります。人間は根源的にこうした「考えることの苦しみから解放されたい」という欲求を持っています。サンクチュアリのシステムは、そうした人間の弱い部分を利用して成立しているのです。考えることを放棄したサンクチュアリの潜在犯たちは、「人間」ではなく、単なる「葦」に成り下がってしまったのです。

パンセ (中公文庫)

パンセ (中公文庫)

 

先ほども述べました通り、サイコパスでは「人間の意志(=自分で考えること)」が大きなテーマになっています。テレビシリーズの劇中にやたらとパスカルの引用が出てくるのが、その証拠。こうした点から考えても、やはり今作でも「人間の意志」というテーマは引き継がれていたわけです。「思考するからこそ人間である」というメッセージがサイコパスという作品にはあるわけですが、サンクチュアリは思考しない側に振り切っており、思考停止の恐ろしさや愚かさがそこに表現されていました。

集団思考に浸り何も考えないことが本当に幸福なのか?こうした問いかけが設定上に見事に組み込まれていました。「みんな教」だとか揶揄される日本人にとって、この「人間の意志」や「思考」というテーマはかなり刺さるはずです。

ちなみに、サンクチュアリのデザイン自体も魅力的でした。3DCGで造形された真白なドーム。しかし、その地下には、放射性廃棄物という真黒な秘密が隠されているという、嘘と真実を白と黒で対比して表現しており、このコントラストのあるデザインが素晴らしかったと思います。 

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の問題点① 辻飼には悪役としての魅力が足りない気がする

さて、ここからは少しだけ、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』 の問題点というか、物足りなかった部分について書いていこうかなと思います。

見出しにもある通り、辻飼には悪役としての大事な何かが決定的に欠けている気がするのです。サイコパスと言えば、悪役の独特な思想が見所の1つになっていたと思います。槙島聖護しかり、鹿矛囲桐斗しかり、そのほかの犯罪者たちも、みんな独自の哲学を持っていました。そして、彼らの発言には一定の説得力や真実味がありました。要するに、サイコパスに出てくる悪役は知能指数の高い犯罪者たちだったわけです。

PSYCHO-PASS -サイコパス- 槙島聖護つままれストラップ ver.2.0

PSYCHO-PASS -サイコパス- 槙島聖護つままれストラップ ver.2.0

 
PSYCHO-PASS サイコパス 2 鹿矛囲桐斗 つままれキーホルダー

PSYCHO-PASS サイコパス 2 鹿矛囲桐斗 つままれキーホルダー

 

しかし、今作の悪役の思想は空疎なものでした。とくに辻飼は、思想がほとんどない人物で、語っていることに深みがなく、頭の悪さが目立ちます。辻飼はシビュラシステムに操られていた駒に過ぎなかったので、彼女の思想が空疎なのは仕方がないことなのかもしれませんが、それにしてもカラッポすぎる印象があります。

ほかの潜在犯たちと違うことをアピールするために、髪型や髪の色を凝っていたりするところは、キャラクターデザインの妙として楽しむことができましたが、人間としての重層性はあまりなかったかもしれませんね。

操られている人間には、その人間なりの葛藤や欲望があるはず。「人形のように操られることで、私たちは思考の苦しみから解放される、それを社会という大きなレベルで実証したかった」とか、何でもいいんですけど、彼女があの場所に存在する動機付けが描かれていると面白さが増したような気もします。

とはいえ、興味深かった点もあります。霜月が採掘場の放射性廃棄物を発見したシーン。辻飼は「潜在犯なんていくらでも代わりはいるのよ」と語っていました。しかし、そう言っている辻飼もまた代わりのきく、ただのお飾りだったわけです。完全にブーメラン発言になっていて、その滑稽さは楽しむことができました。辻飼の小者ぶりが表現されているいいシーンだと思います。

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1 罪と罰』の問題点② 霜月美佳の罪と罰はどうなったのか?

これはおそらく、私だけではないと思いますが、霜月美佳の性格に違和感を覚えた方は多いのではないでしょうか。今作で霜月はやたらと「正義」を主張します。公安局の人間だから当然な気もしますが、彼女が「正義」を連呼したり、「ここで引いたら公安局のエース霜月美佳の名が廃る」とか自信満々に言っていたりする部分に、どうしても違和感を覚えてしまうのです。

たしかに、霜月はもともと正義感の強い女の子でしたが、第2期の彼女の言動を思い出すと、素直に彼女のことを正義の味方だと思うことは難しいんですよね。覚えている方も多いと思いますけど、第2期では東金に脅されていたとはいえ、霜月が情報を提供したことが原因で、常守の祖母は殺されてしまったわけです。その罪を背負っているはずの彼女が、どうして今作ではあそこまで気持ちを一新しているのだろうかと不思議でならないのです。

あれ?常守の祖母を死なせてしまった罪悪感はもうすっかり消えてしまったのだろうか?霜月の罪と罰はどうなってしまったのだろうか?という疑問が出てきます。私は今作のタイトルが「罪と罰」で、主役が霜月ということで、てっきり霜月が己の罪に向き合う話なのかなと思っていました。

しかし、実際は全くその点には触れられず、霜月がビックリするほどに気持ちを切り替えていて、いったい霜月に何があっただろうかと、今作に至るまでの背景が気になってしまいました。もしかして、これって伏線なんでしょうか?観客に「おいおい」と思わせておいて、3部作のどこかで種明かしをするみたいな……かなり難しそうですが、もしこれが伏線なら、凄まじいことです。まぁ、伏線かどうかについては、いったん脇に置いといて……。

霜月の罪と罰はどうなってしまったのか?という話ですよ。彼女の罪が浄化されていない段階で、他人の罪を罰するというのは一体どういう精神状態なのだろう。

この点に関して、私が思うに、すべてを忘れてしまったかのような彼女の態度は、もしかすると、罪悪感から目を背けようとする心理から生じているのかもしれません。「正義」を主張し続けることで、自分の罪から逃避しようと必死なのかもしれません。

こう考えると、彼女らしさを少し感じることができます。霜月は意志が強いように見えて、実はその場の感情に流されやすいしなにより権威性に弱い。常に考え方がぐらついていて、人格が安定していない。霜月は人間の弱さを象徴する存在なのです。

今作での人格チェンジは、彼女らしさの表れだったのかもしれません。罪悪感から目を背けるという人間の弱さを霜月は表現していたのかもしれません。

ここまで極端な解釈をすれば、彼女の人格変化を理解できないわけでもないです。とはいえ、霜月に「正義」の2文字はあまり似合わないし、その似合わなさ、サイズの合っていない服を着ている感じが彼女の魅力だったのですが、普通に「私は正義の味方です」みたいな態度をとられると、やはり「おいおい」と言いたくなる気持ちは残ってしまいます。

霜月がどのように、罪と向き合い罰を受け入れるのか、その辺りをもう少し深掘りして頂けると、テーマ性の濃い作品になったのかもしれないと、勝手ながら思ってしまいました。

『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』はコミカライズ版もありますから、ちょっとそちらを確認してみようかなと思います。もしかしたら、これを読めば霜月の心情がわかるかもしれませんからね。

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」 (BLADE COMICS)

PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」 (BLADE COMICS)

 

ちなみに、これは余談ですが、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だとか『1984年』みたいな「本」が今作では出てこなかったのも残念ではあります。しかし、私の予想では、Case.3の狡噛が登場する話で、何かしらの著作が紹介されそうな気がします。哲学書なのか、小説なのかはわかりませんけど、狡噛がいま何を読んでいるのか非常に気になるので、その辺りはCase.3まで楽しみにとっておこうと思います。

 

はい、という感じで、今回のレビューはここまで。

問題点も含めていろいろ書きはしましたが、基本的にはかなり楽しみましたよ。サイコパス独特の思想を語りながらの殴り合いとかも最高でしたし、アクションシーンはリファレンスムービーを用いて描かれているだけあってリアルで重厚感のある闘いに仕上がっていました。

天蓋のガラスが割れるシーンも、その美麗さに圧倒されました。ロジオンの潔い死にざまもよかった。「シビュラシステムに撃ち殺されるくらいなら、俺は俺の意志で死ぬ」という考えが表れており、ここにも「人間の意志」というサイコパスのテーマが入っているのだなと、かなり興味深く観ることができました。

 

Case.2、Case.3はテレビシリーズの脚本を担当されていた深見真さんが務めていますから、小難しい理論だとか理屈だとかが出てくるんじゃないかと、今から楽しみで仕方がないですよ。

kirimachannel.hateblo.jp

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『PSYCHO-PASS サイコパス』Next Project  告知映像

2月、3月と連続で公開されますから、皆さんも見逃さないようにしましょうね!2月はほかにも『七つの会議』とか、注目作が上映されていますから、その辺りもチェックしておこうかなと思っています。では、次のレビューでまたお会いしましょう!さようなら~~(*^^*)

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  •   『PSYCHO-PASS サイコパス』の関連記事については、以下をご覧ください。

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