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『PSYCHO-PASS サイコパス 3』第1話の感想&考察!シリーズ構成・冲方丁の構成力に震えた!

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の画像
©サイコパス製作委員会

「携帯型心理診断、鎮圧執行システム、ドミネーター起動しました――」

ドミネーターのアナウンスを聞くと、「サイコパス」が帰ってきたなぁと、私なんかは感慨にふけってしまいます。ドミネーターを握るときの、テンポのよいあのBGMも含めて、サイコパスの世界観を感じるので、個人的にかなり好きな場面なんですよね。

それはともかく、サイコパスシリーズの最新作『PSYCHO-PASS サイコパス 3』が、ついに始まりましたね!とはいえ、第1話の放送が10月23日の深夜でしたから、すでに3週間ほど時間が経過しているという。そして、すでに第3話まで放送済みという……。すみません、何かと忙しくて、観るのが遅れました。

ですが、観てみたら、いやはや思った以上の出来で腰を抜かしましたよ

そもそも、第1話の放送前に1時間の特番がわざわざ組まれるのも異例ですし、本編の放送時間も1時間ですから、これはすごい。深夜のアニメ枠で1時間放送なんてめったにないですよ。これは『Fate/Zero』以来の衝撃です。たしか、『Fate/Zero』は第1話のみ1時間枠の放送でしたよね。

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そういえば、『Fate/Zero』の原作って虚淵玄ですし、『PSYCHO-PASS サイコパス』の原案も虚淵玄……。第3期の脚本には関わっていないようですが、それでも、改めて虚淵玄の凄さを感じますね。

深夜枠で1時間放送するほどの大注目SFアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス3』。そんなフジテレビの本気が垣間見える、新作サイコパス3の見どころは、「常守や狡噛の動向」、「新キャラの能力とバックグラウンド」、そして、「サイコパスSSの伏線回収」、主にこの辺りではないでしょうか。

個人的には、劇場版3部作の『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』で仕込んでおいた伏線を、どのように回収していくのかに注目しています。特に、花城フレデリカのリクルート活動には、どんな意図が隠されていたのかは気になります。サイコパスSS3の時は、ラストシーンで壊れた兵器の型番を調べるみたいなシーンもありましたし、何者かと通信している様子も見られましたので、あのシーンがどんな意味を持ってくるのかは楽しみ。

ちなみに、サイコパスSSについては、当サイトでも記事を書いていますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

www.kirimachannel.com

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この記事を読んでいる人の中で、サイコパスシリーズを全く観たことがない人ってどのくらいいるんでしょうか?もしかしたら、声優さんのファンで、今作から参加した人もいるかもしれませんね。

特番を観たなら大丈夫ですけど、もし「サイコパスシリーズの流れが分からない」という場合は、以下の記事をご覧ください。実はこの度、僭越ながらダ・ヴィンチニュース様でサイコパスシリーズの記事を書かせていただきました!自分の好きな作品の記事を書けるなんて、いやはや、嬉しい限りですね。

ddnavi.com

すでに、いろいろ語りすぎている感じもしますが、ここからが本題です。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』第1話を観て、気づいたことや、感じたことを書いていきます。展開予想というよりは、主に話の構成に関するお話ができればと思っています。

もはや、アニメファンのみならず、小説好きの間でも名の知れた冲方丁の凄まじい構成力に関して、追求していきます。また、あらすじ部分からネタバレ全開で、記述しますので、未見の人は、まずAmazonプライムで鑑賞することをおすすめします。それでは、私の妄想解説をご覧ください!

 

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『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の基本情報


『PSYCHO-PASS サイコパス 3』PV第2弾

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のスタッフ

  • 監督:塩谷直義

  •  シリーズ構成:冲方丁

  •  脚本:深見真、冲方丁、吉上亮

  •  キャラクター原案:天野明

  •  キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之

  •  色彩設計:鈴木麻希子

  •  美術監督:草森秀一

  •  3Dディレクター:大矢和也

  •  撮影監督:村井沙樹子

  •  撮影視覚効果:荒井栄児

  •  編集:村上義典

  •  音楽:菅野祐悟

  •  音響監督:岩浪美和

  •  オープニング・テーマ:Who-ya Extended「Q-vism」(SMEレコーズ)

  •  エンディング・テーマ:Cö shu Nie「bullet」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

  • アニメーション制作:Production I.G

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のキャスト

  • 慎導灼:梶裕貴

  • 炯・ミハイル・イグナトフ:中村悠一

  • 雛河翔:櫻井孝宏

  • 廿六木天馬:大塚明夫

  • 入江一途:諏訪部順一

  • 如月真緒:名塚佳織

  • 唐之杜志恩:沢城みゆき

  • 霜月美佳:佐倉綾音

  • ドミネーター:日髙のり子

 

  •  法斑静火:宮野真守

  • 代銀遙煕:中博史

  • 裁園寺莢子:田中敦子

  • 小宮カリナ:日笠陽子

  • ラウンドロビン:森川智之

  • 梓澤廣一:堀内賢雄

  • 小畑千夜:矢作紗友里

 

  • 狡噛慎也:関智一

  • 宜野座伸元:野島健児

  • 須郷徹平:東地宏樹

  • 六合塚弥生:伊藤静

  • 花城フレデリカ:本田貴子

  • 常守朱:花澤香菜 

©サイコパス製作委員会

(HPより引用:STAFF&CAST|TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』公式サイト)

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』 第1話「ライラプスの召命」のあらすじ

2120年、東京。厚生省公安局刑事課一係の慎導灼(しんどうあらた)監視官、そして、同じく監視官である炯(けい)・ミハイル・イグナトフの2人は着任早々、ハイパー・トランスポート社が起こした大型輸送機の事故調査を命じられる。

灼と炯は、召集された4人の執行官とともに調査を開始。灼は如月真緒(きさらぎまお)執行官と、雛河翔(ひなかわしょう)執行官を連れて墜落した機体の調査へ向かう。一方、炯は廿六木天馬(とどろきてんま)執行官入江一途(いりえかずみち)執行官とともに救助者の監視を始める。

墜落した機体に向かった灼は、ハイパー・トランスポート社の会計士・旭・リック・フェローズが行方不明であることを知る。特A級メンタリストである灼は、高度な共感によって精神的ボーダーを越境する「メンタルトレース」を使い、事故時のリックの行動を追跡。メンタルトレースの結果、リックが何者かに怯えており、同時に機体の外へ放り出され死亡していたことが判明。

機体のハッチが開いたことによる事故死であると認定されるも、現場の状況やリックの上司にあたるハイパー・トランスポート社の与根原巧(よねはらたくみ)の反応から見て、事故の背後に何かあると踏んだ灼と炯は、リックの死亡の真相を探るために捜査に乗り出す。

捜査を進めていくなか、リックがハイパー・トランスポート社の内部告発を準備し、さらに、それを隠していたことが明らかになる。機体の事故は、リックの内部告発を阻止するための口封じを目的に、誰かが意図的に行ったものと推察。そして、同社の与根原と些々河哲也(ささがわてつや)が、今回の事故の裏で舵取りをしていた主犯ではないかという仮説に辿り着く。灼と炯はより真相へ近づくために、メンタルトレースをおこない、正体の見えない相手の追跡を続行。

だが、その裏ではビフロストと名乗る集団、インスペクターと呼称する謎の人物が背後で動き始めていた――。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の感想&考察① シリーズ構成・冲方丁の構成力が凄まじい件について

冲方丁と言えば、『マルドゥック・スクランブル』や『蒼穹のファフナー』、『攻殻機動隊ARISE』などのSF作品や、『天地明察』や『麒麟児』といった時代小説まで実に幅広く作品を執筆している、日本を代表する作家の1人です。

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その作品作りにかける意気込みは他を圧倒するものがあり、いわば戦闘力の高い作家と言えるでしょう。その作家としての前のめりな姿勢は、『[冲方式]アニメ&マンガストーリー創作術』をご覧いただければ分かります。私も物書きの端くれとして、勉強のために読んでみたのだが、これは間違いなく覚せい剤のような本だと言っていい。なにせ、冒頭から熱がすごいのです。

立て、若者よ! メディア業界に夢を抱く未知の戦士よ!

名作に感動していつかは自分もあんな仕事がしたいと志を持つヤングパワーよ。

(引用元:冲方丁(2009年)『[冲方式]アニメ&マンガストーリー創作術』宝島社)

開口一番がこれである。「さて、ちょっくら創作術の勉強でもしようかな~」と1ページ目を開いた瞬間に、「この、戯けもの!」と一発喝を入れられたような衝撃があります。こちらの本には、冲方丁の企画術や脚本術、あるいは心構えが余すことなく書かれているので、興味がある人はぜひ読んでください。覚せい剤取締法違反にはならない、安全だけど強力な覚せい剤ですから、読んだら動かずにはいられなくなりますよ(笑)

冲方式アニメ&マンガ ストーリー創作塾

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さて、そんな戦闘的創作者・冲方丁は、今作『PSYCHO-PASS サイコパス 3』で、シリーズ構成・脚本を務めています。ご存知のように、『PSYCHO-PASS サイコパス 2』でもシリーズ構成を担当しているため、サイコパスシリーズではすでにお馴染みのスタッフの1人と言っていいでしょう。

また、今作の特徴は、複数の脚本家が共同執筆している点です。シリーズ1作目から脚本を担当している深見真、ノベライズ版の執筆やサイコパスSSの脚本を務めた吉上亮、そして冲方丁の3人で脚本が制作されています。サイコパスシリーズに精通している布陣で固めてきたというわけですね。

第1話は、クレジットを見る限り、冲方丁と深見真が脚本を書いているようです。それぞれの特徴が活かされた展開となっていましたが、私としては、冲方丁の構成力に度肝う抜かれました。深見真もインタビューにて、冲方丁の構成の緻密さについて語っています。

冲方さんが組み上げられたシリーズ構成がすごく緻密で。こんな緻密な構成は見たことがない!

(引用元:アニメ!アニメ!「サイコパス3」3人の脚本家が明かす制作秘話とは?「みんなどこか普通じゃない」)

animeanime.jp

SF×刑事もの×群像劇という複雑な構成

では、どこかどう緻密なのかという話ですが、「主要な話の線を複数本走らせている」という点に、冲方丁の緻密さが出ている気がします。

例えば、よく見る刑事ドラマとかだと、主要な話の線は多くて2本くらいだと思います。「死体を発見した刑事が事件の真相を追う」というプロットと、「真相を知られないよう裏で暗躍する犯人(あるいは「組織」)」というプロットの組み合わせで、少しずつ真相に近づいていくというパターンはよくあります。

この場合、物語において大きく作用している目的は2つだけです。「刑事が犯人を捕まえるという目的」と、「犯人が刑事に捕まらないようにするorテロ活動等の当初の計画を実行するといった目的」の2つ。トリックがどれだけ綿密に組まれていても、話の軸としては1本か2本になっていることが多いです。そのほうが観客もわかりやすいですし、作り手の負担もそこまで大きなものにはならないと言えます。

しかし、サイコパス3の第1話を観た人なら分かると思いますが、サイコパス3は明らかに話の軸が2本以上存在します。つまり、話を動かす主要な目的が2つ以上存在するということです。ただでさえ、トリックなどを考えなければならない刑事ものにおいて、話の軸を増やすというのは、作り手に相当な負荷がかかるはずです。

私が観る限り、サイコパス3には、話の軸が少なくとも4本は存在すると思われます。通常の2倍以上とお考え下さい。まず、灼と炯を中心に展開する刑事課一係の活動。次に、海外で活動中の狡噛や花城たち(花城組)。そして、ビフロストとインスペクターたち。これら、4つの組織が異なる目的を持って、活動しているように思われます。

それぞれが、それぞれの目的で動いている場合、あとで整合性を持たせることが難しくなるのですが、その難しいことを敢えてやろうとする辺りに、冲方丁の戦闘的創作者としての魂を感じますね。

サブプロットではなく、メインプロットとして、4本も走らせるのは大変ですが、これはいわゆる群像劇ですね。SFの刑事もので、群像劇をやるなんて言うのは、かなり無茶だと私は思います。現代劇でない分、特殊な設定を組む必要があるし、刑事ものとしての事件やトリックを考える必要もある。そのうえで、4つの組織を別々の目的で動かし、矛盾なく最終的に1本の線にまとめ上げるというのは、やろうと思っても普通は躊躇する作り方だと思います。

しかも、ビフロストの話を聞くと、どうやら株取引をしているようだし、住宅ローンの話が出てきたことから考えると、開国後の移民の増加にともなう住宅ブームとバブル経済、その背後で取引されるサブプライムローンなどの経済的な様相も見えてきます。

そもそも複雑な構造を持っている作品なのに、さらに、ややこしい経済問題を取り入れようとしているわけです。これは、凄まじいですよ。もっと言えば、おそらく海外での狡噛たちの活動において、ロシア情勢についての言及もされるだろうと思います。今回の事件の被害者が、ロシア出身みたいですし、そういえば、主人公の炯もロシアからの移民。現時点ではよく分からないんですが、フレデリカも金髪の白人という見た目で考えれば、ロシア系にも見えます。

ちなみに、これは蛇足ですけど、ロシア人が絡む群像劇と言えば、デュラララ!!が思い出されますね。

デュラララ!! (電撃文庫)

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こうしたロシア情勢が加わったら、4本の線がさらに増える可能性もあります。冲方丁の創作者としての戦闘力の高さに脱帽ですね。いやぁ、すごい!

それと、気づいた人がいるかもしれませんが、シビュラシステムが大人しすぎると思いませんか?

第1話では、シビュラシステムの動向に関する情報が、意図的に排除されており、刑事課一係やビフロスト、インスペクターなどの動向に関心が向くような造りになっています。これは一種のミスリードなのかもしれませんね。

現時点では何とも言えませんが、実はシビュラシステムが裏で糸を引いていたという展開は、これまでにもありましたので、今後、シビュラシステムがどんな動きを見せるのか、注意深くみる必要がありそうですね。

「直近の謎」と「シリーズ全体の謎」の両方を提示して引きを作っている

もう1つだけ、構成の凄さについてお話させてください。サイコパス3の第1話を観て思ったのが、「」の出し方がうまいという点です。

私はシリーズものにおける「謎」には2種類あると考えています。1つが、主人公がいますぐ解かなければならない謎。もう1つが、シリーズ全体の謎です。1つめに該当するのは、リックの死の謎ですよね。これは刑事として、灼と炯が直近で解決すべき謎です。一方のシリーズ全体の謎は、例えば、冒頭で出てきた「常守朱の幽閉の謎」、あるいは「灼の過去や能力に関わる謎」が該当します。すぐに解くべき謎ではないものの、重要な謎であることに変わりはありません。こうした謎は、シリーズ全体の引きを作るために重要です。

刑事ものだと、1時間で1つの事件が解決する話になっていることが多いですよね。これだと、1話ごとに謎が提示され、1話ごとに謎が解決されることになります。しかし、サイコパス3では、1話ごとに解決すべき謎を提示しながらも、同時に、シリーズ全体の引きとなる謎も用意しています。これによって観客は、1話だけでは満足せずに、シリーズ全体を通して鑑賞したくなるわけですね。

最近のアニメは、こうしたシリーズ全体の謎を作るのがうまいですよね。ゲゲゲの鬼太郎も、基本的には1話完結ですが、その背後に謎の巨悪が存在するという、シリーズ全体の謎もきっちり用意している。


【新番組】4月1日放送スタート!アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」特報

サイコパス3の場合は、謎を出すタイミングも絶妙なんですよね。まず、アバンで常守がナレーションをしていると思ったら、まさかの幽閉という流れ。そして、オープニング明け、大型輸送機の墜落事故とそれを映像におさめる男、次に、イヤホンを付けながら車に乗っている灼が父親と謎の会話をする。オープニングを含めても、ここまでで5分しか経ってません。

直近で解決すべき謎として「大型輸送機の墜落事故」を見せながら、シリーズ全体の謎として「常守の幽閉」、「灼と父親の謎の会話」を持ってきています。たったの5分で。直近の謎と、シリーズ全体の謎を過不足なく、コンパクトに提示しているおかげで、観客は謎の真相をが気になって仕方がなくなるわけですね。

「直近の謎」を解いていくうちに、「シリーズ全体の謎」の真相に近づいていくという流れ。海外ドラマでは、こうした2重構造で謎を仕込んでおくという構成はよくあります。まるで海外ドラマのような、緻密なミステリーと複雑なストーリー構造に、第1話から震えました。

冲方丁の戦闘力は、計り知れないですね。スカウターもぶっ壊れますね、きっと。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の感想&考察② オープニングから探る!銃口の意味と、執行官に降格しそうな炯・ミハイル・イグナトフ監視官について

構成について語り過ぎましたね。ちょっと、疲れました。。

私はあまり考察が得意な方ではないので、あくまでも創作者的な立ち位置から作品を紹介する方がやりやすいんですよね。

それはそうと、次の話題に移りましょうか。

サイコパス3の第1話で私が注目したのは「オープニング」です。どのシリーズでも、スタイリッシュでカッコ良い映像と音楽が流れるので、私はサイコパスのオープニングを何度も観てしまうのですが、今回のオープニング映像にはいくつか気になるポイントがあったので、ここで語っておこうと思います。

「サイコパス3」のタイトルが出る前に、主役の灼と炯が互いにドミネーターを向け合っているシーンが映されています。この互いに銃口を向け合うという構図は、実はサイコパスシリーズのオープニングで踏襲されているパターンでもあります。

例えば、第1期の「Nothing's Carved In Stone」の「Out of Control」が流れるオープニングでは、槙島をはさんで狡噛と常守が銃口を向け合っています。

同じように、第2期の「凛として時雨」の「Enigmatic Feeling」が流れるオープニングでは、狡噛と思しき人物をはさんで、常守と霜月が銃口を向け合っています。

このように、銃口を向け合う構図は踏襲されてきているわけですが、それでは、この構図には一体どんな意味があるのでしょうか?

意味合いとしては、「思想の対立」だと思われます。狡噛と常守は仲間ですが、思想的には対立しています。私刑に走る狡噛と、法で裁く常守ですから、その点では思想を異にしていると言えるでしょう。常守と霜月の対立は、分かりやすいですよね。潜在犯でも人間として扱おうとする常守と、潜在犯は例外なく裁かれるべきという霜月。両者のイデオロギー対立は明確なものとして、本編中でも描かれていました。

つまり、狡噛にしろ、常守にしろ、霜月にしろ、銃口を向けるという行為は同じでも、その銃口が持つ意味合いが全く異なるわけですね。違うイデオロギーの付帯した銃口を互いに向け合うという行為は、イデオロギー対立を表現していると考えてよいと思われます。

さて、そこから考えると、オープニングにおける灼と炯の銃口を向け合う構図が何を意味しているのか、少し見えてきそうです。上記にならえば、銃口を向け合う=イデオロギー対立ですから、あの仲良くしている2人は、どこかのタイミングで対立しあう可能性があります。

もともと、冲方丁が塩谷監督からオーダーを受けた際は、「監視官はバディーで」という要請があったようなので、バディー物のお約束を入れてくるかもしれません。古今東西、バディー物のお約束と言えば、物語中盤から終盤にかけての「仲違い」と「仲直り」です。

例えば、刑事ドラマとして有名な『相棒』はその典型例ですし、アニメで言えば『TIGER & BUNNY』もそうですよね。仲違いの後に、共通の目的のために動き出し、「やっぱりお前が必要だ」という形に落とし込むことで、以前よりも強い友情関係(信頼関係)を築くことができるわけです。

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もしかしたら、銃口を向け合っている灼と炯も、途中で仲違いをしてから、仲直りするという展開になるかもしれませんね。

オープニングで気になるポイントは、ほかにもあります。 サビの部分で、炯が自分の分身と格闘しているシーンがあると思います。このカットですが、実は第1期の「凛として時雨」の「abnormalize」が流れるオープニングでも同じ構図が使われています。狡噛が自分の分身と組み合っているカットですね。では、この構図は何を表しているのでしょうか?

おそらくですが、自分の中の「衝動」と「理性」との闘いを表現していると考えられます。狡噛はギリギリまで、刑事として槙島を裁くか、自分の怒りに任せて槙島を個人的に裁くかで揺れていたように思います。復讐したいという衝動と、それを抑制する理性との間で、狡噛は葛藤していたのではないでしょうか。

つまり、オープニングに出てくる自分と格闘する構図は、「自分の中の衝動と理性との格闘(あるいは摩擦)」を表現しているものと推察されます。もしかすると、炯はどこかのタイミングで、狡噛と同じように凄まじい衝動に駆られるのかもしれません。

心配なのは、彼が既婚者だというところ。炯には同じロシア系移民の妻がいます。狡噛は標本事件で仲間を殺されたことをきっかけに、サイコパスを濁らせ、執行官へ降格しました。これを炯に置き換えて考えると、最愛の妻を失うという辛い状況に陥る可能性があります。しかも、公式ホームページのキャラクター紹介欄には「家族のことでは熱くなりやすい一面も」(引用元:CHARACTER|TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』公式サイト)と書かれているので、余計、心配になってくる。

こうして執行官降格のギリギリまでサイコパスを濁らせた炯を、灼が助けるという展開になったら、それはそれで燃えますね。これなら、銃口を向け合うという構図の整合性も取れますし、仲違いから仲直りというバディー物のお約束も成立します。普段は精神的ザイルパートナーとして灼が無茶をしないよう手綱を握っている炯ですが、この関係性が中盤以降に逆転して、無茶な捜査を進めようとする炯の手綱を引く形で灼が助けに現れたら、かなりムネアツな展開になりますよね。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の感想&考察③ ビフロストってどこにあるの?

これ、素朴な疑問なんですが、「ビフロストってどこにあるの?」と、私は不思議に思いました。初めて、法斑静火がビフロストの、あの空間に入った時も、外の景色が全く映されませんでした。機械的な廊下を歩くシーンがあるだけで、外観については全く触れられていませんでした。

普通、ドラマでもアニメでも、シーンが変わった時は、いきなり室内から始めるのではなく、まずは建物の外観を映してから、内観にカットが切り替わります。そのほうが、観客に「いまどこで人物が会話しているのか」が伝わりやすくなるからです。内観から内観に切り替わると、「同じビルの別の部屋なのかな?」と観客に勘違いさせてしまうこともあります。なので、建物が変わった場合は、まず外観から映すか、ナレーションで説明を加えることが多いです。

例えば、サイコパス3の第1話でも、「着任早々なにしてるの!」と霜月に怒鳴られるシーンでは、はじめに厚生省の外観が映されて、その後に激おこの霜月の顔が映されます。これが違う場面に切り替わるときのベーシックなやり方です。

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しかし、ビフロストの外観は映されませんでした。内観から始まり、内観で終わっているのです。映像を観ているだけだと、刑事課一係の活動の次にビフロストが出てくるので、てっきり日本に存在しているものと考えがちですが、これ、もしかしたら日本じゃないかもしれませんよ。

もちろん、断定はできませんが。「シビュラの監視から逃れ~」みたいなセリフもありましたので、国内ではない可能性も十分にあります。あるいは、灯台下暗しというパターンもあるかもしれませんけどね。とにかく、外観が分からないので、場所が特定できないのです。

いずれにせよ、外観を映さないのには、何かしらの理由があるはずです。また、ファースト・インスペクターの梓澤廣一の居場所もよく分かりません。内観は映すけど、外観は映さないパターンですね。捉えどころのなさをうまく表現しているなと思います。ちなみに、ハイパー・トランスポート社の些々河については、ホテルの外観が若干見えたので、もしかすると、早めに捕まるかもしれませんね。

これ、私の勝手な考えなのですが、外観がはっきりしているキャラは割とすぐ捕まります。ですが、外観が分からない、どこにいるかはっきりしないキャラは、捕まりにくいです。これは勝手な私の妄想ですけどね(笑)

それと、ビフロストに関して、もう1つ気になるのが、あの場にいる人物同士があまり面識がなさそうという点です。初めて、法斑静火がビフロストの場に現れた時、裁園寺莢子は「随分若いのね」と言っていました。これは知り合いの言葉ではありませんよね。若いことを知らないのは、初対面だからでしょう。

つまり、あの場に参加する権利を認める別の人間が存在するということです。もし、あの場の人物が法斑を招待したのなら、初対面のような挨拶になるのはおかしいですからね。ビフロストをコントロールしている第3者が存在するのでしょう。そして、法斑はその第3者と何らかの形でつながっているような気がします。

「随分若いのね」という発言から考えると、あの場に来る人間はある程度の年齢を重ねているのが通常なのでしょう。裁園寺は48歳ですし、代銀遙熙に関しては77歳。それに対して、法斑の年齢は32歳。比べてみると、かなり若いことが分かります。これほどの若さで、あの席に着くのは異例のことなのでしょう。

ビフロストの面々の豪華な服装をみると、それなりの社会的成功者であることが分かります。社会的な成功が、ビフロストへの参加条件なのかもしれません。だからこそ、32歳の若さで現れた法斑に対し「随分若いのね」という反応が返ってきたのだと推測できます。

こうして考えると、やはり法斑は異例の存在です。そして、その異例を認めた何者かがいるはずです。その何者かが誰かまで、今のところは分かりません、少なくとも私には。

では、彼はどこと繋がっているのか?現時点での私の想像ですが、法斑はインスペクターとつながりを持っているのかもしれません。ビフロストの人間は、明らかに社会的成功者といった格好をしていますが、法斑の衣装は極めてシンプルなスーツ。インスペクターもこの点は、共通しています。スーツに真っ直ぐなネクタイを締めるスタイルは、些々河も梓澤も同じです。ドレスコードで見たときの共通点があると言えます。これも、私の思い過ごしかもしれませんけどね。

上記に関連して、インスペクターの気になる点に関しても触れておこうと思います。梓澤が「私のダイアグラムを見破れるかな?」と言って、幾何学模様のホログラムを眺めるシーンがあるのですが、このホログラムが何なのか気になりますよね。

実は、これに似た形が、ほかのシーンでも出てくるんですよ。被害者のリック宅の部屋にあった数式パズル。あれも、球体のホログラムでした。はっきりと幾何学模様にはなっていないものの、梓澤が眺めていたホログラムのプロトタイプと言えるかもしれません。ここから推測できるのは、リックがインスペクターの一員だったという可能性。数学の天才として、何かしらのプログラムの開発を命じられていたのかもしれませんね。

ちなみに、ビフロストの中心に出てくるホログラムも球体の幾何学模様でした。上記の3つ、どうにも形状が似ています。リックは、あの球体を作り出した開発者なのかもしれませんね。それが何かまでは分かりませんが。リックがいったいどこまで、事件に関与しているのか、今後の捜査で明らかになるのを楽しみにしておきましょう。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の感想&考察のまとめ

以上、サイコパス3の第1話の感想でした!

ちなみに、第1話のタイトルである「ライラプスの召命」ですが、この「ライラプス」とはギリシャ神話に登場する猟犬のことで、どんな獲物も決して逃がさない犬として知られています。

この猟犬とは、まさしく灼と炯のことですよね。エンディングに入る前、常守がナレーションで「彼らが猟犬となり見えざる敵に辿り着くことを信じている――」と語っており、この「猟犬」が第1話のタイトルの「ライラプス」に対応しているというわけですね。細かいですが、タイトルをしっかりと回収してくれているわけです。第2話以降も、どの場面でタイトルを回収していくのか、その点にも注目してみようと思います。

さて、それでは、サイコパス3の第1話を鑑賞して気づいたこと・感じたことを最後にまとめておこうと思います。

  • サイコパス3は、戦闘的創作者・冲方丁の「SF×刑事もの×群像劇」という複雑な構造の作品になっている。
  • メインプロットを4本以上用意し、それぞれが少しずつ事件に関与する仕組みを採用している。
  • シビュラシステムの動向を意図的に描かず、周りの動向を中心に描くことで、ミスリードしているのではないか?
  • 1話ごとに解決すべき謎を提示しながらも、同時にシリーズ全体の引きとなる謎も用意している。「直近の謎」と「シリーズ全体の謎」の2重構造を採用している。
  • 「オープニング」の灼と炯の銃口を向け合う構図から考えて、2人の間で「思想の対立」が起こるのではないか?
  • 「オープニング」の自分と闘う炯の姿から、狡噛と同じように、今後、炯は自分の中の「衝動」と「理性」の狭間で葛藤することになるのではないか?
  • 「ビフロスト」の外観が映されておらず場所が特定されていないため、ビフロストの場所が国外という可能性も考えられる。
  • 「ビフロスト」を管理している第3者が存在するのではないか?
  • 「随分若いのね」という発言から考えると、「ビフロスト」の人間は互いに面識がないようだ。
  • 法斑はインスペクターとつながっているのではないか?
  • 梓澤が眺めていた幾何学模様のホログラムと、ビフロストのホログラム、そしてリック宅の数式パズルは、どれも形状が似ていることから、被害者のリックはインスペクターとビフロスト、両方の重要なシステム開発に関わっていた可能性がある。

ほかにも気になるところは、いろいろあります。例えば、炯が移民に対して寛容な態度を示している点です。おそらく、自分自身が昔、ロシア系移民として大変な経験をしたか、あるいは、移民として日本に来る段階で、助けられた経験があるから、あれだけ寛容になれるのでしょう。炯の過去は、気になるポイントですね。

「オープニング」で、常守が手を伸ばした先に、移民らしき人々の姿があることを考えると、サイコパス3では間違いなく「移民」や「難民」がテーマの1つになってくるだろうし、常守が幽閉された原因も移民政策や開国と何らかの関係性がある気もします。

また、灼の父親と現在起きている事象との関係性も気になるポイント。おそらく、時系列的に見ると、「灼の父親の事件」→「何かの事件とそれに伴う常守の幽閉」→「大型輸送機の墜落事故」の順番だと思うんですよね。真相を辿るということは、すなわち、過去の事象を掘り返していき、徐々に最深部の「発端」を掘り当てることだと言えます。

したがって、常守の幽閉に関してはシリーズの中盤で解決され、終盤にかけて「灼の父親の事件」に関する追求が始まっていくのではないか、と推察されます。事件の背後にある原因を1つずつさかのぼっていき、最終的に発端として「灼の父親の事件」が浮上するのではないかと推測できます。

まだ、見えていない伏線もたくさんあると思うので、何とも言えませんけどね。

第2話・第3話もすでに放送・配信されているので、早めに鑑賞して、またブログを更新しようと思います!

それでは、今回はこのくらいでお開きにしましょう。

次回のレビューまで、さようなら~~(^^)/

 

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自殺が存在しない国

自殺が存在しない国

  • 作者:木島 祥尭
  • 発売日: 2020/09/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
  • 『PSYCHO-PASS サイコパス』の関連記事については、以下をご覧ください。

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