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映画『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の感想&考察!「与えられる選択肢」と「見い出す選択肢」について

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の画像
©サイコパス製作委員会

3月27日(金)から劇場公開及び、Amazon Prime Videoでの配信がスタートした『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』。昨今の新型肺炎の影響もあって、私は映画館ではなく、Amazon Primeで視聴したのですが、これが思いのほか面白かったですね。

前回のブログでも紹介した通り、TV版『PSYCHO-PASS サイコパス 3』の評判があまりよくなかったこともあって、少し心配していたのですが、今回の劇場版については「面白かった」という感想の方が意外と多いようです。

実際、Amazon Primeのレビューを見ると、TV版『PSYCHO-PASS サイコパス 3』が☆2.5なのに対し、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は☆3.4と、劇場版のほうがやはり評価されています。

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さて、ではどうして『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は評価を受けているのでしょうか?

理由の1つは、「旧刑事課一係の出番が多かったから」でしょう。サイコパスシリーズを長いこと視聴している古参のファンからすると、やはり狡噛や宜野座の活躍が見たいところですからね。

第1シーズンの刑事課一係(現在の外務省行動課)の活躍が、今回はしっかり描かれていましたので、TV版『PSYCHO-PASS サイコパス 3』で少し消化不良を起こしていた視聴者を満足させることができたのでしょう。正直な話、この部分が成功要因の大部分を占めていると考えていいと思います。

ほかの成功要因としては、タイムリミット方式が使われていた点も重要です。30分以内に小宮カリナに辞任宣言をさせる、3分以内にシステムを復旧させないと毒ガスが出るなど……。時間制限を設けることで、観客をハラハラドキドキさせる「サスペンス効果」を生むことができています。つまり、物語に緊張感を持たせることに成功しているわけです。

Twitterで話題になった『100日後に死ぬワニ』も基本的には、このタイムリミット方式を採用しています。やはり時間制限は、作劇上効果的であるということが分かります。

ぱっと思いつく、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の成功要因はこのあたりですが、上記以外にもいくつか、作劇上の興味深い点がありましたので、それらについて以下(ネタバレあり)で紹介しようと思います。作品を面白くした要素について、気になる方はぜひご覧ください。

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自殺が存在しない国

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  • 作者:木島 祥尭
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『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』のあらすじ


『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』PV第1弾

2120年、東京。シビュラシステムによって管理された社会で、刑事課一係を率いて事件を解決してきた二人の監視官、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフは、事件を捜査していく渦中で真実と正義を巡り決裂してしまう。それらの事件の裏で暗躍する梓澤廣一は、ついに刑事課そのものを標的に定め、公安局ビルを襲撃する。かつてない窮地に立たされた公安局刑事課一係。灼と炯の信義を問う、最後の事件が起きる――

(HPより抜粋:公式サイトhttps://psycho-pass.com/story/story.php

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の考察① 6分~7分に1回の頻度で描かれるアクションシーン

今作『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は、危機的状況とそれに伴うアクションシーンの多さが特徴的な作品です。では、おおよそ130分のなかで、いくつのアクションシーンが描かれていたのかを数えましたので、まずは以下をご覧ください。

  1. 廿六木と雛河が脱走犯と交戦
  2. 炯と須郷が射撃ドローンと交戦
  3. 梓澤に拘束される慎導灼
  4. 唐之杜と小畑がドローンを使って交戦
  5. 狡噛&宜野座&炯&入江&如月が共同して、屋上のドローンと交戦
  6. サーバーフロアへ行く途中、向かいのビルから襲撃を受ける灼&唐之杜&小宮
  7. パスファインダー&ロボットと交戦する狡噛&炯&入江&如月
  8. ロボットと交戦する入江と如月
  9. ドミネーターSG型プロトタイプを手に入れ、襲撃者と交戦する廿六木&雛河&霜月
  10. 射撃ドローンを破壊するため、ロボットと交戦する宜野座
  11. サーバーの回復を図ろうとする唐之杜
  12. 襲撃者と交戦を続ける廿六木&雛河&霜月
  13. オアニーの救出へ向かった灼がロボットと交戦
  14. 炯が梓澤へのメンタルトレースをおこなう
  15. 狡噛とパスファインダーの交戦
  16. 炯&小宮とパスファインダーの交戦
  17. 廿六木と霜月がロボットと交戦
  18. 狡噛と交戦する炯
  19. シビュラシステムの前で交戦する梓澤と灼

大雑把ではありますが、今作には上記のようにおおよそ19個のアクションシーンがありました。単純計算で、6分~7分に1回はアクションシーンが描かれていることになります。

このように、アクションシーンの頻度が高いわけですが、では、ここまでアクションシーンを増やすメリットは何なのでしょうか?

これについて、私が思うメリットは2つです。1つが「観客の飽きを回避できる」、もうひとつが「主要登場人物すべての見せ場が作れる」です。

まず、「観客の飽きを回避できる」について見ていきましょう。単純なことですが、アクションシーンが増えることにより、観客は息をつく暇がなくなりますから、同時に飽きにくくなります。アクションシーンの重要性については、アメリカのベストセラー作家・ディーン・R・クーンツの書いた『ベストセラー小説の書き方』をご覧ください。

作品になるべく多くの動きをつけたまえ。登場人物がなにも行動しないでただしゃべっているだけの静的な場面が少なければ少ないほど、作品の売れゆきは確実にふえる。

(ディーン・R・クーンツ(1996年)『ベストセラー小説の書き方』朝日新聞出版)

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)
 

さて、今回の劇場版では、同時進行的にアクションが進んでいましたので、「一方が大変なとき、もう一方ではもっと大変なことに」のような形式で、アクションとアクションの間を行ったり来たりさせ、観客を常にハラハラドキドキさせることに成功しています。頻繁にシーンが変わるため、その点も飽きを回避するのに一役買っています。

次に、もう1つの「主要登場人物すべての見せ場を作る」についても見ていきましょう。この点が今作の面白さを考えるうえで、最も重要なポイントだと思われます。

サイコパスシリーズ以外にも、TV版が成功して劇場版が製作されるパターンは結構ありますよね。ジャンプでい言えば、『BLEACH』や、『ナルト』はその典型例だと思うのですが、これらの劇場版に共通するのが、主要登場人物すべての見せ場が必ず描かれているという点です。ファンを納得させるためにも、なんとかして全員に見せ場を用意しようと考えるわけです。

しかしながら、あまりに人気キャラが多いと、全員を活躍させるために、ラスボス戦で全員集合というパターンに陥りがちです。最後に全員集合して、一人ずつ必殺技を叫ぶやつですね。

しかし、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は、ラストに全員集合という形態をとらずに、主要登場人物すべての見せ場を作り出すことに成功しています。では、どのようなやり方で、それが可能になっているのか、簡単に説明します。

今作で、梓澤が公安局ビルを占拠した際に、主要登場人物の各々が孤立した状態になりました。「廿六木と雛河、小宮と唐之杜、入江と如月、霜月、灼」といった具合に、別々の場所から行動を開始することになります。炯も情報提供者に会いに行くことになり、このように、物語のスタート地点でキャラクターの配置がバラバラに展開されていることが分かると思います。

バラバラに配置することで、各々が梓澤を止めるために動き出し、その各々の活躍をシーンを変えながらテンポよく見せることができます。

これがもし、全員が集まった会議中に起こった事件となると、各々の活躍を個別に紹介することが難しくなります。しかし、上記のように人物をバラバラに配置すれば、シーンを頻繁に変えてメリハリを付けながら、同時にキャラクターそれぞれの活躍を個別に描くことができるため、よりキャラクターそれぞれの魅力を際立たせることが可能です。

しかも、バラバラにすれば、これまであまり描かれなかった唐之杜の活躍にフォーカスしたり、唐之杜と小宮カリナのように、意外なカップリングを使って既視感を回避することも可能になります。

また、離散→合流→離散→合流を繰り返している点も重要です。人物が合流してしまうと、シーンが分割できなくなり、画面を持たせるのが難しくなります。

そのため、合流した瞬間に再び別々に行動する理由を発生させて、情報共有や状況の整理をおこなった後、離散させています。再び離散させることにより、もう一度、キャラそれぞれの活躍に焦点を当てることが可能です。

ちなみに、スタート地点で集合している場合は、何かのイベントによって強制的に離散させられているはずです。例えば、最初に集まっていた外務省行動課のメンバーは、屋上からの侵入を阻まれた結果、狡噛と宜野座は別々に行動することになりました。

孤立させて、キャラの活躍を描き、アクションシーンを増やして観客の飽きを回避する。この点が、今作『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』では、特に優れていたように思います。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の考察② ドローン同士の戦いを描くことで、ハッキング対決を可視化している

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』では、唐之杜分析官の活躍がかなり目立っていましたよね。

個人的に、「これはすごい!」と思ったのが、唐之杜と小畑のハッキング対決です。ハッキングって、古今東西あらゆるSF作品で描かれていますが、正直、一般人には何がどうなっているのか、よく分かりませんよね。

コードとか見せられても、さっぱりだと思います。私もそうです。しかし、映像作品ですから、ハッキングも1つの盛り上がる要素として、描く必要があります。つまり、ハッキングのすごさを映像的に可視化することが求められるわけです。

そこで、今回とられた方法が、ハッキング対決をドローン同士の対決で表現するというものでした。キーボードを叩いているだけだと、どっちが優勢でどっちが劣勢なのかすら、分かりにくいですよね。

ですが、ハッキング対決をドローン同士の対決という形で可視化すれば、どっちが優勢でどっちが劣勢なのか、はっきり分かりますし、純粋にバトルシーンとして楽しむこともできます。

そう言えば、『BLOODY MONDAY』でも、ハッキングの可視化は行われていましたが、それと同じくらい、今作での可視化も見事でしたね。

ハッキングとかに関して全く知識がない人でも、ドローン同士の戦いを見ることで、普通にバトルを楽しむことができましたからね。いやぁ、うまい。まさに映像ならではの表現ですよ。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の考察③ 選択肢は与えられるものではなく、作るものである

ここまでは、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の魅力について語ってきましたが、ここからは『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のテーマに関して、私なりに感じたことをお伝えしようと思います。『PSYCHO-PASS サイコパス 3』は、梓澤のセリフからも分かるとおり、「何を選択するか?」という「選択」が1つのテーマとして設定されているように思います。

そして、この『PSYCHO-PASS サイコパス 3』で描かれている「選択」は、2種類に分けることができます。

  • 与えられた選択肢を選択する
  • 与えられた選択肢以外を選択する

梓澤の策略に引っかかってしまう人物の多くは「与えられた選択肢」を選んでいます。今作で言えば、公安局の囚人たちがそうです。彼らは自分の頭で考えずに、梓澤が提示する選択肢を鵜呑みにし、結果的に暴動を起こすことになります。

ですが、灼たちは、「都知事が死ぬか?公安局の人間が死ぬか?」という2択を与えられながら、結局どちらの選択肢も選んでいません。状況を冷静に分析し、第3、第4の選択肢を自分で導きだし、結果的に都知事と公安局員の両方を生かすことができました。灼たちは、与えられた選択肢ではなく、自分たちで選択肢を見出したからこそ、事態を打開することができたといえます。

このように、「与えられた選択肢を選択する」のか、「与えられた選択肢以外を選択する」のかが、テーマ的に重要な部分だと考えられます。


『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』本予告

多くの人は、「A or B」で問われたときに、与えられた選択肢に対して疑問を持たずに、「A」か「B」で答えてしまいがちです。しかし、梓澤が提示した選択肢を灼たちが覆したように、そもそも与えられた選択肢自体に欠陥があることも多い。

「A」か「B」だけでなく、「C」や「D」を見つけ出す力が、実はかなり重要なのではないか?こうした「選択肢は与えられるものではなく、自ら作り出すものである」というメッセージが、作品全体からにじみ出ているように私は感じました。

日常生活でも、極端な二者択一を迫られることってありますよね。「モテたいですか?モテたくないですか?」みたいな極端な二者択一の言葉から始まって、いつの間にかよくわからない恋愛指南書を買わされていたり、必要のない育毛剤を買わされていたりすることって、結構あると思います。

人は二者択一を迫られたとき、どちらかを選ばなければならない、あるいは、どちらかが正解であるはず、というように「○×判定」を下して、どちらかを選んでしまいがちです。けれど、実際には提示された選択肢の両方が間違っていて、全く異なる選択肢が存在することも多いです。

二股の道のどちらかを選ぶよりも、道ではないところに道を作り出す、あるいは新たな道を見い出す能力のほうが、人として自立して生きるためには、重要なのかもしれません。

与えられた選択肢を選ぶ能力ではなく、選択肢を新たに作り出す(あるいは、見い出す)能力を鍛えるべき」というのが、今作から私が勝手に感じ取ったメッセージです。

みなさんは、二者択一を迫られたとき、新たな選択肢の可能性を考えていますか?私も二者択一に縛られがちなところがあるので、これを機に新たな選択肢を考える癖をつけようかなと思っています。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の感想&考察のまとめ


Cö shu Nie – red strand (Short Edit / PSYCHO-PASS ver.) / "PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR” ED

今回は『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』について、私なりに感じたこと・考えたことを紹介しました。

すでに触れましたが、「選ぶ」という行為の大切さをしみじみと感じましたね。マーケティング的な手法にハマって、必要ではないものを、なんか買っちゃってるみたいなこともありますし。なんか選ばされていることって、多いと思います。

なんというか………マーケティングって詰め将棋みたいな感じがしますよね。あらかじめ用意された駒の配置の中で、ある程度の制限があるところから駒を進める。もちろん、駒を動かすのは自分ですが、相手を詰めるには決められた形で動かさないといけない。自由なようで、不自由。選んでいるようで、選ばされているわけです。

まぁ、詰め将棋の場合は、ルールに則って進めなければいけないけれど、現実で何かを選ぶときに、相手の作った詰め将棋にわざわざ付き合う必要はないわけで、相手が提示した選択肢以外の選択肢を見出していくことが、大切なのかもしれませんね。

特に、モノや情報が溢れかえっている現代には、「選択肢作成力・発見力」みたいな力は磨いておくべきかもしれません。

それでは、最後に、『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の感想&考察について、まとめておきましょう。

  • 『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の成功要因の1つは、旧刑事課一係の出番が多かったこと
  • タイムリミット方式を頻繁に使い、サスペンス効果を出すことに成功している
  • 6分~7分に1回のアクションシーンで、観客の飽きを回避している
  • キャラをバラバラに配置することで、主要登場人物すべての見せ場を作ることに成功している
  • ドローン同士の対決で、ハッキング対決を可視化している
  • 『PSYCHO-PASS サイコパス 3』で描かれている「選択」には、「与えられた選択肢を選択する」と、「与えられた選択肢以外を選択する」の2種類が描かれている
  • 「与えられた選択肢を選ぶ能力ではなく、選択肢を新たに作り出す(あるいは、見い出す)能力を鍛えるべき」というのが、『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のテーマなのではないか?

今作『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』を見た感じだと、まだまだ続編はありそうですね。

ようやく常守が解放されたばかりですし、まだ分かっていないことだらけです。

常守が幽閉されていた理由や外務省行動課の具体的な目的、フレデリカの過去、梓澤の過去、慎導篤志の過去、炯の兄など、とにかく謎がまだまだ盛沢山。どのようにこれらの謎が解き明かされるのか、今後の展開を楽しみにしておきましょう。

 

はい。それでは、今回はここまで。次回のレビューで、またお会いしましょう!

さようなら~~(^^)/

 

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  • 作者:木島 祥尭
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  • 『PSYCHO-PASS サイコパス』の関連記事については、以下をご覧ください。

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