「俺は一稀が好きだ」
冒頭から燕太の想いが、さく裂する『さらざんまい』第3話。
第1話の尻子玉を抜くシーンからBLのにおいがプンプンしていましたが、第2話のラストから第3話にかけて『さらざんまい』というアニメがBLだということがはっきりした印象があります。とはいえ、『さらざんまい』は、極めて破壊的なBLですけどね。こんな奇妙奇天烈な設定のBLなんて、なかなかないでしょう(笑)

それにしても、『さらざんまい』はアバンの使い方がうまい。
例えば、第3話ではアバンで上記のような燕太の「欲望」が提示されています。そして、第2話では「僕は春河のために希望の皿を手に入れたい」という一稀の「欲望」が冒頭で明らかにされています。
各回の主人公がどんな欲望や目的を持っているのかが、わずか数分で分かるようになっているのです。人物が行動する目的や動機が分からないと、視聴者は安心して物語を追うことができませんが、『さらざんまい』では、それがはっきり提示されるので、非常に観やすくなっています。
ちなみに、アバンに関してもう1つ気になったのが、毎回出てくる「ア」のマーク。
「ア」を囲むようにして、周りにはローマ字で「TUNAGARITAI」と書かれています。
第2話では、一稀の春河に対する「つながりたい」という気持ちがアバンで明らかになりました。第3話では、燕太の一稀に対する「つながりたい」という気持ちがアバンで示されています。
第2話と第3話を観る限り、アバンでは、キャラそれぞれの「つながりたい」という欲望が提示されているように思います。キャラの目的を明確にしながら、「つながり」というテーマを表現することにも成功しているわけです。さすが、イクニ監督です!冒頭の数分間に、様々な仕掛けがされており、圧倒されましたよ。
さて、アバンの話はこれくらいにして、『さらざんまい』第3話の考察をしていこうと思います。燕太の想いに注目しがちな第3話でしたが、実はその背後では、重要な情報がいくつか提示されていました。燕太の想いについてはもちろん、カワウソや一稀の動向についても、1つずつ追っていこうと思います。
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- 『さらざんまい』第3話「つながりたいけど、報われない」のあらすじ
- 『さらざんまい』第3話の考察① 壁パスを続ける燕太の想い
- 『さらざんまい』第3話の考察② 「処分保留」から「釈放」され「欲望搾取」されてカパゾンビになる
- 『さらざんまい』第3話の考察③ 車いすに乗る春河と、笑わない一稀
- 『さらざんまい』第3話の感想・ネタバレ考察のまとめ
『さらざんまい』第3話「つながりたいけど、報われない」のあらすじ
いつの間にか一稀に恋心を抱いていた燕太。一稀に渡そう渡そうと思いながらも、なかなか渡せないミサンガを持って燕太は思い悩む。そして、なぜだかそのミサンガを姉の音寧の足首につけることに――。最近、付き合い始めたキース・モットクレーという彼氏とデートに行くために、音寧はミサンガを巻いたまま走り去ってしまう。

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そのころ、警察は変死体としてキース・モットクレーを発見する。音寧の彼氏でもあるキースは、実は結婚詐欺目的で付き合った女性を自殺に追い込むような男だったことが判明。新星玲央と阿久津真武によってキースは殺されたことも明らかとなる。
と同時に、欲望フィールドに、キスゾンビが出現。街中で女性が飛んでいくという奇妙な事態が発生する。音寧もまた、飛んでいった女性の1人。燕太は音寧が巻いて行ってしまったミサンガを回収するためにも、キスゾンビと闘うことになる。キスゾンビから尻子玉を抜き取り、さらざんまいを完了させ、キスゾンビを成仏させることに成功。
しかし、燕太の恥ずかしい記憶が一稀と久慈に漏洩してしまう。さらに、渡そうと思っていたミサンガも、ネズミに持っていかれ、まさに「つながりたいけど、報われない」燕太であった。
その後、燕太は、いつものように一稀の弟の春河に会いに行く。春河は実は足が悪く、車いすで移動しなければならなかった事実が明らかになる――。
『さらざんまい』第3話の考察① 壁パスを続ける燕太の想い
第3話は完全に燕太回でしたね。燕太の妄想が、劇中の大半を占めていたとすら思うくらいですよ。やたらとイケメンに描かれた一稀が何度も出てきましたからね。
ユニフォームをクンカクンカしたり、リコーダーをくわえたり、燕太がとにかくテンプレート的な変態になってました。とはいえ、男が男のリコーダーをくわえるっていうのは、ある意味斬新だったのかもしれないですね(笑)
ちなみに、私としては、燕太の切ない想いが壁パスに表れているような気がしました。そもそも相手がいれば、壁パスなんてする必要がないわけです。いつも一緒にパス練してくれる一稀がいなくなってしまったから、壁パスをするしかない。
しかも、壁には半円のアーチみたいなブロックがあります。「半円」というのが重要ですね。円が半分欠けている。まるで燕太の心を表現しているかのようですよね。ゴールデンコンビだった己の半身のような一稀がいなくなり、燕太の心は半分欠けた状態になっているわけです。
それと、ふと映り込む鳥の数も気になりました。
度々、街灯の上にウミネコみたいな鳥がとまっているのですが、第3話の久慈と燕太が話しているシーンでは2羽だけしか描かれていませんでした。しかし、エンディングのなかでは、同じ街頭に3羽の鳥がとまっています。
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そういえば、欲望搾取のときの太鼓にもカワウソが3匹描かれていましたし、カッパになれるのは、一稀・久慈・燕太の3人です。
どうやら「3」が重要な意味を持っているようですね。ちょっと現時点ではわからないのですが、「3」と街頭の鳥には、今後注意を向けてみようと思います。
『さらざんまい』第3話の考察② 「処分保留」から「釈放」され「欲望搾取」されてカパゾンビになる
第3話で、カパゾンビの共通点がいくつか分かってきました。その共通点とはズバリ以下の3点です。
- 「半年前」に何かしらの容疑で逮捕されている
- 処分保留となり釈放されている
- 新星玲央と阿久津真武に欲望を搾取されている
第2話で登場した猫山毛吉は、半年前に、浅草ズルムケ事件の容疑者として逮捕されています。第3話のキース・モットクレーも半年前に、結婚詐欺目的で付き合った女性を自殺に追い込んだ疑いで逮捕されています。なぜか2人とも「半年前」なんです。半年前にいったい何が起こったのか?「半年前」が今後重要になってきそうですね。
それと、ポイントになるのは2人とも一度「処分保留」になってから「釈放」されているところ。明らかに疑わしいのに、なぜか裁かれなかったわけです。そして後日、釈放された容疑者から、新星玲央と阿久津真武が欲望搾取をおこない、事実上の裁きを下しています。
つまり、何らかの理由で野放しになっている犯罪者を、新星玲央と阿久津真武が成敗しているわけです。法で裁けない悪を、自ら裁くみたいなことでしょうかね。
やはり前回の記事でもお話したように、新星玲央と阿久津真武の2人の目的は、犯罪者を減らすことなのかもしれません。現実社会でも、本来は裁かれるべき人が裁かれないということはありますよね。そういう人間を片っ端から裁いていくのが、あのカワウソコンビの目的の1つだと考えることができます。なんか、デスノートぽくなってきました。
それと、今回はカワウソの親玉みたいなのが出てきましたよね。出てきたと言っても、声だけですけど。黒田崇矢さんが声を担当しているみたいですけど、エンディングのクレジットを見たら「帝国の声」と書いてあって、謎すぎますね(笑)
どうやらあのスカイツリーのなかで喋っていた親玉の名前は「帝国」らしい。欲望の帝国でも作ろうとしているのでしょうか?
あるいは、欲望を搾取し、欲望を1つにつなげることで、帝国が形を持つのかもしれません。今は声だけの存在ですが、もしかすると、まだ体を持っていないという可能性も考えられます。体を得るためには、人々の欲望が必要で、その欲望が集まると、最後にはオープニングに出てくる巨大な怪獣が登場するのかもしれないですね。
「帝国」の活躍が楽しみです(笑)
『さらざんまい』第3話の考察③ 車いすに乗る春河と、笑わない一稀
まさか春河が車いすに乗っているとは思ってもみませんでした。あんなに快活な男の子の足が不自由だったなんて……。意外な展開でしたよ。しかし、そのおかげで、一稀がどうして希望の皿を求めているのか、その理由がはっきりしてきました。
それはズバリ「春河の足を治すため」だと推測されます。
一稀は常に春河のために行動していますよね。 第2話の冒頭でも「僕は春河のために希望の皿を手に入れたい」と語っていました。そして、一番春河のためになることと言えば、現時点では、足を治すこと意外には考えられません。
一稀がサッカーをやめてしまった原因も、一稀が笑わなくなってしまった原因も、春河の足が不自由になったことと関係しそうです。

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もしかしたら、春河の足が不自由になったことに、一稀がかかわっているのかもしれません。こう考えると、一稀がサッカーをやめた理由もわかってきます。弟が走れなくなってしまったのに、自分だけ楽しそうにグラウンドで走り回ることなんて普通はできないでしょう。まして「僕のせいで春河は足を悪くしてしまった……」と考えていた場合、春河への罪悪感から、余計にサッカーなんてできないはずです。一稀は自分を罰するような形で、サッカーをやめてしまったのでしょう。
一稀が笑わなくなったのも、春河と何か関係がありそうです。第2話を観る限り、一稀は春河の前でも、親の前でも、感情を殺しているように見えます。そうしなければならない理由があるのでしょう。
一稀は過去に「感情を表に出して悪い結果(春河の足にかかわるような)を招いた経験」があるのかもしれません。感情をあらわにすることによるトラウマがあるのでしょう。それを回避しようとしているように見えます。あるいは、笑うことを制限することによって、自分を罰しているのかもしれません。
ここで思い出していただきたのが、第1話の一稀のセリフ。
「この世界はつながりに溢れている。血のつながり、街のつながり、想いのつながり。みんながつながっている世界。でも、そのつながりは簡単に消えてしまう。僕はそのことを誰より知っている。僕は今度こそ、このつながりを守らなきゃいけない。」
(引用:『さらざんまい』第1話より)
ポイントになるのは、「でも、そのつながりは簡単に消えてしまう。僕はそのことを誰よりも知っている。」というセリフ。ここから読み取れるのは、一稀が過去に「つながりを失った経験」を持っているということ。なにしろ「誰よりも知っている」わけですからね。ここには、過去に対する後悔の念が滲み出ています。
春河に対して悪いことをしてしまったという後悔の念が、今の一稀を動かしているように思えてなりません。なんとしてでも希望の皿を手に入れて、春河の足を治し、過去の罪悪感から逃れたいと思っているのかもしれません。
その過去が一体何なのかは、今後の見所ですが、いずれにしても、春河の足と、サッカーをやめた理由・笑わなくなった理由は関係していると言っていいでしょう。
まとめると、自分の感情を表に出したことが原因で、春河の足が不自由になってしまったため、一稀は感情を殺し、春河の足のことに配慮してサッカーもしなくなってしまった。そして春河への罪滅ぼしのために、希望の皿を手に入れて、春河の足を治そうとしている。少々強引ですが、こういった事実関係になっているのではないかと考えられます。
『さらざんまい』第3話の感想・ネタバレ考察のまとめ
いやはや、第3話はいろいろと発見が多かったですね。最後に、『さらざんまい』第3話での気づきをまとめておこうと思います。
- 街灯の鳥の数、太鼓に描かれるカワウソの数、カッパの数、いずれも「3匹」となっており、今後は「3」という数が重要になってきそう。
- カパゾンビの共通点は「半年前に逮捕されていること」、「処分保留になり釈放されていること」、「欲望を搾取されていること」の3点。
- 新星玲央と阿久津真武は、裁かれるべきなのに裁かれていない犯罪者を捕まえて、自ら裁きを下している。やはり2人の目的は治安維持なのか?
- 一稀は希望の皿を手に入れて、春河の足を治してあげたいと思っているのではないか?
- 春河の足を気にして、一稀はサッカーをやめてしまったのではないか?
- 一稀が笑わなくなったことと、春河の足が関係しているのではないか?
だいたいこんな感じですかね。
一稀回と燕太回が終わったから、次回は久慈の話になるのかな?久慈と兄貴の関係がかなり気になりますね。第3話でも、一稀と燕太の関係を「兄弟みたいだな」と表現してましたし、久慈は兄弟に対して何かしら執着していそうです。
ブログをアップするのが遅れてしまい、オンエアのほうは随分進んでしまったようなので、大急ぎで第4話、第5話とどんどん観ていこうと思います。
では、今回はこの辺りでお開きにしましょうか。
次回のレビューまで、さようなら~(^^)/
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『さらざんまい』の各話の考察記事については、以下からご覧いただけます。